別居中の子どもとの面会交流はどうなるの? 拒否された場合の手続きも解説

2021年05月27日
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別居中の子どもとの面会交流はどうなるの? 拒否された場合の手続きも解説

水戸市の統計によると、平成31年(令和元年)の水戸市内の離婚件数は497件でした。

離婚や別居に至った場合、配偶者とは別れてしまっても、子どもと交流できるかは気になるところでしょう。

別居している親が子どもと面会したり交流したりすることは、親ではなく子どもの権利です。しかし、配偶者(元配偶者)が子どもとの面会を拒むことも少なくありません。

そこで本コラムでは、面会交流の交渉のポイントや拒否された場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説します。

1、面会交流とは?

離婚や別居によって、子どもと一緒に暮らしていない側の親が子どもと面会したり交流したりすることを面会交流といいます。まずは、面会交流とは何かについて解説していきます。

  1. (1)面会交流は誰のために行う?

    面会交流とは、離婚の成立後または別居中において、子どもを養育・監護していない側の親(非監護親)が、子どもと面会したり交流したりすることです。具体的には、子どもと一緒に暮らしていない親が、毎月回数を決めて子どもに会ったり、電話や手紙などで交流したりするケースが一般的です。

    なお、面会交流ができる法的な権利を「面会交流権」といいます。面会交流は親にとっても大事なことですが、特に子どもにとって重要な権利であることを理解する必要があります。

    親の離婚や別居は、子どもの成長に大きな影響があります。子どもが健やかに成長し、かつ両親の存在や愛情を実感するために、面会交流は重要な役割を果たすのです。したがって、たとえば、養育費の有無や金額などを理由に面会交流権を拒むことは適切ではないと考えられます

  2. (2)別居中の面会交流について

    離婚する夫婦に未成熟の子どもがいる場合、離婚届を提出する際にどちらが子どもの親権者になるかを決める必要があります。

    親権者とは、未成熟の子どもの身分上・財産上の権利を、親として代理で行使する権利・義務を持っている人のことです。

    親権を行使する場面としては、

    • 子どもが住む場所を決める
    • 子どもの教育を行う
    • 子どもの法定代理人として法律行為をする(子どもを被保険者とする保険契約を締結するなど)


    といった場面が挙げられます。

    たとえば、離婚をして妻が子どもの親権者として暮らし、夫が子どもと離れて暮らす場合、夫は親権者ではありませんが、子どもと面会交流をする権利が基本的に認められます。離れて暮らす親との面会交流は、一般に子どもの健やかな成長に望ましいと考えられるからです。

    一方、まだ離婚が成立しておらず、配偶者が子どもを連れて別居している場合は、共同親権として夫と妻の両方が親権を有しています。この場合にも、離れて暮らす親に面会交流を認めることは子どもの福祉にかなうと言えます。

    これらの理由から、離婚前の別居している親についても面会交流が認められます。

2、面会交流が認められない場合とは

面会交流は、子どものためという側面がもっとも重視される権利である点には、注意が必要です。

したがって、子どもの福祉の観点から非監護親と面会することが望ましくない事由がある場合は、面会交流が認められなかったり、制限されたりする可能性があります。

具体的には、以下のような場合です。

  • 非監護親が子どもに暴力や虐待をしていた場合
  • 子どもが本心から非監護親との面会交流を拒否している場合
  • 非監護親が子どもと暮らす親を不当に非難するなど、仲たがいや引き離しを図る場合
  • 非監護親が子どもを連れ去ろうとする場合


なお、上記のような事情がある場合に、必ず面会交流が制限されるとは限りません。具体的な事情を考慮した結果、子どもにとって悪影響が大きいと判断された場合に制限されるものです

したがって、たとえ別居中であっても、原則的には面会交流は子どものために行う必要があると考えられます。

3、面会交流の交渉のポイント

離婚は成立していないものの、妻が子どもを連れて家出をしてしまい別居となった場合、法的には夫に子どもと面会交流をする権利が認められます。

とはいえ、子どもを連れて別居をしている妻が拒否している場合、夫と子どもが交流するのは難しいところです。

別居している妻が子どもとの面会などを拒否する場合、裁判所の手続きを利用する方法もありますが、まずは夫婦で話し合って解決を探りましょう。話し合いの結果として適切な面会交流のルールについて決めることができれば、面会交流を公的に認められるために手続きをする手間や負担がかかりません。

下記より、子どもを連れて別居している配偶者と面会交流の交渉をするためのポイントを解説します。

  1. (1)まずは相手の言い分を聞いてみる

    別居した妻と話し合って面会交流を認めてもらうには、夫としての権利を主張するだけでなく、妻の側の言い分にも耳を傾けるなどの工夫が必要です。

    これまでの生活を一転させて、子どもを連れて家を出ていくにはそれなりの理由があるものです。相手の言い分が必ずしも正しいとは限りませんが、まずは相手の言うことに耳を傾けてみるのが、解決の道を探る第一歩になるでしょう。

    別居の理由はさまざまですが、夫からの冷たい態度に耐えられなくなったなど、自分である程度改善が可能な理由であれば、改善に向けて努力する姿勢を見せることも大切です。

  2. (2)面会交流が認められるためのポイント

    話し合いの結果、大きな争いがなく子どもとの面会交流がスムーズに認められるには、相手に協力的な姿勢を見せることが大切です。

    具体的には、以下のような点を押さえておくべきでしょう。

    • 別居中の妻や子どもの生活費を負担する(婚姻費用の分担や、子どもの扶養者としての役割を果たす)
    • 暴力や暴言など、夫の側に別居に至った理由がある場合は改善に向けた努力をする
    • 親権や養育費など、離婚に関する取り決めについて相手と誠実に話し合う


    注意点として、相手の言い分や要求にすべて応じなければならないわけではありません。

    自分の言い分や望みはきちんと主張しつつ、子どものためにできることはやり、改められる点は改めるという姿勢が大切です。

  3. (3)面会交流について決めておくべき事柄

    面会交流について妻と話し合いができる場合、子どもと面会をする場所や時間など、面会交流に関する事柄の取り決めをしておきましょう

    子どもと面会交流すること自体については同意を得られたとしても、面会交流の方法や頻度などを話し合って決めておかないと、後日になって結局面会交流を拒否されてしまう可能性があるからです。

    面会交流について一般に決めておくべき事柄は、以下の通りです。

    • 面会交流をする場所と移動方法
    • 面会交流の開始時刻と終了時刻
    • 面会交流をする頻度
    • 面会交流のための連絡手段
    • 面会交流ができなくなる条件(病気など)
    • 面会交流の費用の負担


    面会交流について取り決めをした事柄は、後でトラブルにならないように、書面にして残しておくことをおすすめします。

4、面会交流を拒否されてしまったら

話し合いがまとまらず面会交流を拒否されてしまった場合、家庭裁判所に申し立てをして面会交流調停をすることになるケースが一般的です。

以下では、面会交流調停の流れについて解説します。

  1. (1)面会交流調停を申し立てる

    面会交流について話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停手続きを利用して夫婦間で話し合いをすることができます

    調停は当事者である夫婦双方のほか、裁判官と有識者の調停委員で構成される調停委員会を交えて話し合いが行われます。夫婦が離婚する場合、離婚調停を併せて申し立てることも可能です。

    面会交流調停の申立人は、面会交流の対象となる子どもの父母です。面会交流調停を申し立てるにあたって、相手の同意を得る必要はありません。

    なお、面会交流調停は離婚が成立しておらず、単に夫婦が別居している段階でも利用可能です

    面会交流調停では、

    • 子どもの健全な成長を助けること
    • 精神的な負担をかけないこと
    • 子どもの意思を尊重すること


    などを考慮しつつ、面会交流の内容について話し合いを進めます。

    調停で考慮される主な事項は、子どもの年齢・性別・性格・就学しているか・毎日の生活のリズム・これまでの生活環境などです。

    また、面会交流を実施する場合は、回数・日時・場所、さらには、理由なく守らないときのペナルティなどの具体的な内容も話し合っておきましょう。

  2. (2)調停が成立した場合と不成立になった場合

    夫婦の双方が納得して調停が成立すると、調停で合意された内容をまとめた調停成立調書が作成されます。

    調書には面会交流の回数・日時・場所・方法・注意事項などが記載され、夫婦はその内容に沿って面会交流を実施することになります。

    調停が成立するには、当事者の双方が納得して同意する必要があります。

    同意せずに調停が不成立になった場合は、自動的に審判の手続きに移行し、裁判官が一切の事情を考慮して面会交流の可否やその内容を判断します。

    なお、調停が成立した場合、調停成立調書は裁判の確定判決と同一の効力があります。たとえば調停で、面会交流についてのルールとともに養育費の取り決めをした場合、調書に基づいて強制執行をすることも可能です。

    また、面会交流について調停が成立し、相手がその内容を守らない場合は、間接強制金を支払わせることができる場合もあり得ます。

5、まとめ

離婚をした場合だけでなく、妻が子どもを連れて家出をするなど、夫婦が別居している場合にも子どもとの面会交流が認められます。

子どもと一緒に暮らしていない親が子どもと面会交流をすることは、健やかな成長を促進するなど、子どものための権利としての側面が強いのが特徴です。

子どもの健全な成長の妨げとなる場合は、面会交流が制限される場合もありますが、正当な理由なく面会交流を拒否する場合は、調停を申し立て面会交流について相手と話し合う方法があります。

別居中の配偶者に面会交流を拒否されるなど、面会交流についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスにご相談ください。離婚問題の取り扱い経験が豊富な弁護士が、適切な面会交流の実現に向けてサポートします。

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