離婚届には証人が必要? 離婚届の要件や、離婚の注意点を解説

2021年04月08日
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離婚届には証人が必要? 離婚届の要件や、離婚の注意点を解説

水戸市が公表する資料によると、令和元年に市の窓口で受け付けた離婚の件数は497件でした。

離婚をするときには、さまざまな手続きが必要になります。

その主たる手続きが「離婚届」の提出ですが、離婚届には証人欄が設けられていることをご存じでしょうか。

離婚を検討している場合には、証人についても理解しておき、証人をお願いする方のめどをつけておくなどの対応が必要です。

本コラムでは、離婚届の証人についてご説明し、要件や証人がみつからないときの対処法について、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説していきます。

1、離婚届の証人とは

法律上の夫婦になるために、証人ふたりに署名などをもらって「婚姻届」を提出したことは、はっきりと覚えている方も多いことでしょう。

しかし「婚姻届」だけでなく、離婚するときに提出する「離婚届」についても、基本的に証人ふたりの署名などが必要になります。

証人になるための要件は、「成年者であること」のみです。
そのため成年者であれば、だれでも証人になることができます。

たとえば夫婦の子どもが成年に達していれば、子どもが証人になることも可能です。
しかし離婚の場面では、「なんとなく頼みにくい」「周囲に離婚を知られたくない」といった理由から、証人探しが難航するケースもあるようです。

2、どんなときに証人が必要?証人がみつからないときの対処法

離婚届は、どのような方法で離婚するにしても、役所に提出しなければならないものです。
基本的に離婚届に証人の署名などが必要なことはご説明したとおりですが、離婚の方法によっては証人が不要になることもあります。

  1. (1)協議離婚では証人が必要

    協議離婚をするときには、証人が必要になります。

    協議離婚とは、夫婦双方が離婚や離婚条件について合意してから離婚届を提出するという離婚の方法です。

    他の方法と違って、離婚の成立までに夫婦以外の第三者が関わる可能性が少ない方法といえます。そのため夫婦以外の第三者を証人として関与させることで、夫婦双方に「真に離婚の意思があること」を確認する、と考えると分かりやすいものでしょう。

    なお「証人が必要なのに、頼める人が周囲にいない」という方は、証人を代行する会社もあるので、そういったサービスを利用することもひとつの対処法ではあります。

    しかし離婚時には、財産分与などのお金の問題や親権などの子どもの問題も解決しておく必要があります。そのため、証人には困らないという場合であっても、離婚届を提出する前に、弁護士にご相談されることをおすすめします。

  2. (2)調停離婚・裁判離婚では不要

    調停離婚・裁判離婚をしたときには、離婚届に証人の署名などは必要ありません

    夫婦の離婚協議がうまくいかないときや話し合いすらできないときなどには、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。

    離婚調停では、1人の裁判官と2人以上の家事調停委員から構成される調停委員会が、離婚についての話し合いを進めます。

    なお、家事調停委員は、最高裁判所が、弁護士の資格を有する者、紛争の解決に有益な専門的知識・経験を有する者、社会生活の上で豊富な知識・経験を有する者で、人格・識見の高いものから、非常勤の裁判所職員として選任・任命されます。
    調停で、離婚や離婚条件について合意できたときには、「調停離婚」が成立します。

    一方合意できなかったとしても、裁判を起こして「裁判離婚」が成立することがあります。

    このような離婚の方法では、離婚届を提出する際に、裁判所が作成する調停調書・和解調書・判決謄本のいずれかの提出が必要になります。

    その場合は、裁判所の作成する公的な書面で離婚の意思や成立が担保されているといえるので、離婚届に証人の署名などは必要となりません

3、離婚が成立してもすぐ再婚できるとは限らない

証人をみつけて協議離婚届を提出しても、すべての方がすぐに再婚できるとは限らないことは覚えておく必要があります。

  1. (1)女性には再婚禁止期間が定められている

    男性には、離婚が成立してから再婚するまでの期間について、制限する法律の適用はありません。離婚が成立したら、すぐに別の女性との婚姻届を提出して再婚ということも可能です。
    しかし女性には、法律上、離婚後に再婚が禁止される期間が設けられています

    具体的には、「前婚の解消または取り消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚できない」と規定されています。

    つまり離婚した女性は、離婚成立日から起算して100日以内は再婚できないことが原則となります。

  2. (2)再婚禁止期間中でも再婚できるケースもある

    女性だけ再婚禁止期間があることに、違和感を持たれる方も少なくないでしょう。

    この制度は、女性のみが子どもを出産することができることから設けられたものです。

    簡単にいえば、離婚から100日以内に再婚できてしまえば、もしこの期間に妊娠が発覚した場合「前婚と後婚の夫の両方が、父親と推定されてしまう」という問題が出てきてしまうからです。

    そのためこのような問題が出てこないといえる次のようなケースでは、再婚禁止期間中でも再婚できることが明文化されています。

    • 女性が前婚の解消もしくは取り消しのときに懐胎(妊娠)していなかった場合
    • 女性が前婚の解消もしくは取り消しの後に出産した場合


    ただし戸籍実務では、再婚禁止期間内に婚姻届を提出するときには、これらの事実を証明する、医師の診断書の添付を必要としています。

    また、前婚と後婚の夫が同一人物であるときにも、子どもの父親が二重に推定されるおそれはないので、再婚禁止期間であっても再婚の届け出は受理される取り扱いがなされています。

4、離婚前に確認し決めておくべきこととは

離婚が成立すると、相手と連絡が取りにくくなったり、相手がすんなりと話し合いに応じなかったりする可能性が高くなります。

したがって離婚届を提出する前に、次のような事柄を夫婦で取り決めておき、合意内容について「離婚協議書」などの文書にしておくことが大切です。

ただし離婚原因や子どもの有無など、それぞれのケースで取り決めの内容などは異なるので、詳しくは弁護士にご相談ください。

  1. (1)子どもの親権

    離婚後は単独親権となる制度を採用する日本では、未成年の子どもがいるときには、父母のいずれか一方を親権者と定めて、離婚届に記載しなければなりません

    そのため離婚するまでに、子どもの親権を父母のどちらが持つ方が、子どもの福祉にかなうのかという観点から、親権者を取り決めておく必要があります。

  2. (2)養育費

    離婚後、一緒に暮らしていなくても、子どもの父または母であることには変わりがありません。子どもとの親子関係がある以上、親には未成年の子どもを監護する義務があります。

    そのため離婚後、収入の少ない親が子どもと暮らす場合、収入の多い側の親が、「養育費」として取り決めた金額を支払う必要があります

  3. (3)面会交流

    離婚後の面会交流についても取り決めることが大切です。

    面会交流とは、子どもが健全に成長するために、離れて暮らす親と子どもが離婚後も交流する機会です。個々のケースで異なってきますが、面会交流の頻度や面会の時間などの基本的な内容を取り決めておいた方が良いでしょう。

    取り決めをせずに離婚すると、いざ面会交流を実施したいと思っても、もう一方の親と話し合いができないことから、なかなか実現しないということがあるからです。

  4. (4)離婚に伴う慰謝料

    離婚に伴う慰謝料は、たとえば、相手の不貞行為が原因で夫婦関係が破綻し、離婚することになったような場合などに請求できるお金です。

    不貞行為やモラハラ、暴力など相手方の不法行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由として、慰謝料を請求することがあります。

    もっとも、不法行為を立証するための証拠がなければ慰謝料は認められません
    日頃からできる限り証拠収集しておく必要があります。たとえば、暴力を受け、怪我をした場合は、当該箇所の写真を撮っておく、病院を受診し診断書を作成してもらう等、証拠を保存しておくことが大切です。

  5. (5)財産分与

    財産分与には、三つの側面があります。

    1. ① 夫婦が結婚期間に築き上げた財産の清算として
    2. ② 離婚後の経済的弱者に対する扶養料として
    3. ③ 相手方の有責な行為により離婚を余儀なくされたことについての慰謝料として


    という三つの要素があります。この中で、①が中心的要素になります。

    ①は、婚姻期間中、夫婦で協力して築き上げた財産を清算することです。基本的には、妻が専業主婦であったとしても、夫婦それぞれ2分の1ずつの割合で清算することを認める裁判例が増えてきています。

    財産分与を決めるためには、まずは夫婦の全財産を把握した上で「家はどうするか」「車はどうするか」など具体的に考えていく必要があります

    離婚後も2年間は、財産分与請求をすることができますが、離婚届を提出する前に、取り決めておいた方が良いでしょう。

  6. (6)年金分割

    年金分割は、夫婦の結婚期間中の、それぞれの厚生・共済年金の保険料納付記録の合計額を当事者間で分割する制度です。

    年金分割をすると、分割を受けた側は、分割された分の保険料を納付したものと扱われ、それに基づき算定された年金額を将来受給することになるというものです。

    年金分割についても離婚後2年で請求できる権利がなくなるので、離婚前に取り決めておくことが大切です。

5、まとめ

本コラムでは、離婚届の証人についてご説明し、要件や証人がみつからないときの対処法についても解説していきました。

証人は協議離婚の際に必要になりますが、協議離婚ではさまざまな事柄を当事者が取り決めなければなりません。しかし当事者だけで取り決めたときには、内容にもれがあったり、履行されなかったときに泣き寝入りせざるをえなかったり、といった事態になる可能性もあります。

したがって証人の依頼も含めて早期に弁護士にご相談されることをおすすめします。離婚した後でもトラブルが発生し悩まされる、ということを極力避けられるよう備えておくことは大切です。

ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスでは、離婚問題をご相談者にとって最善の内容で解決できるよう全力でサポートしています。

おひとりで悩むことなく、ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています