子どもの親権を得たい父親が離婚する前に必ずやるべきこと5つ

2019年06月27日
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子どもの親権を得たい父親が離婚する前に必ずやるべきこと5つ

厚生労働省が発表した「平成30年我が国の人口動態」によると、水戸市がある茨城県の平成28年における人口1000対離婚率は1.68で、全国平均1.73よりも低い水準にあります。それでも親権についての相談は水戸オフィスでも多くいただきます。

なお、夫婦が離婚した場合、子どもの親権は母親が持つケースが圧倒的多数を占めます。人口動態を再度確認すると、離婚件数21万6798組のうち、未成年の子どもがいる離婚は12万5946組(全体の58.1%)です。親権を行う者別で未成年の子どものいる離婚件数に占める割合をみると、平成28年は「妻が全児の親権を行う」は84.4%、「夫が全児の親権を行う」が11.9%、「夫妻が分け合って親権を行う」で3.7%でした。なんと、妻が親権を取るケースは昭和40年代以降増加傾向にあることがわかっています。

しかしながら、父親が親権を持つことが不可能なわけではありません。この記事では父親が親権を獲得しにくい理由や、父親が親権者となるためにやるべきことを水戸オフィスの弁護士が解説します。

1、離婚と親権

離婚届には、子どもの親権を記入する欄があります。子どもがいる夫婦が離婚する際は、この欄を記入していないと、離婚届は受理されません。親権をどちらが持つかという問題は避けて通ることのできないものです。

  1. (1)親権とは

    そもそも親権というものは、大きくふたつに分けられます。ひとつは、「財産管理権」で、もうひとつは「身上監護権」で、監護権とも呼ばれるものです。いずれも民法上に規定があります。

    民法第824条
    親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

    民法第820条
    親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

    状況によっては財産管理権と監護権を別々の親が持つケースもありえます。子どもと同居するのは監護権を持つ親となるケースがほとんどです。

  2. (2)協議離婚の場合

    双方の合意があれば、どちらが親権を持つかは自由に決められます。もちろん、父親が親権を持つことも可能です。

  3. (3)裁判所が親権を決定する際の判断基準

    離婚に際して、子どもの親権をどちらが持つかで双方が譲らない場合、家庭裁判所において調停を試みることとなります。それも不調に終わった場合は裁判となります。裁判所は「どちらが親権者になることが子どもの福祉に資するか」という観点で検討し、裁判官が親権者を決定します。

    主に、以下の判断基準によって判断されることとなります。

    ●継続性の原則
    親権者の決定にあたって重要視されるのが、この継続性の原則です。

    子どもにとって、養育環境の変化は大きな精神的負担となります。そのため、これまでの養育環境をできるだけ維持することを優先して判断が下されます。したがって、母親が育児を中心的に担ってきた家庭では、父親が親権を希望しても認められにくいのが現状です。

    ●父母の事情
    父親、母親それぞれの年齢や経済力、健康状態、生活環境、子どもを監護する意思や愛情の強さなどを双方から聞き取り判断します。

    親のどちらかが病気で子どもの監護が十分にできない、または虐待や育児放棄の事実があれば、もう片方の親に親権が認められやすくなるでしょう。

    ●子どもの事情
    子どもの健康状態や年齢も、子どもにとってより良い養育環境を判断する上で重要です。

    特に乳幼児など年齢が低ければ低いほど、授乳など母性的な関わりが重要な時期となるため、母親が親権を持つべきと判断される傾向があります。

    ●子どもの意思
    15歳以上の子どもの場合は、どちらの親についていきたいか本人の意思が尊重されます。また、おおむね10歳以降の子どもであれば、本人の意思も表明可能として考慮されます。

    ●兄弟姉妹不分離の原則
    子どもに兄弟姉妹がいる場合については、原則として一緒に暮らすことが望ましいとされます。そのため、兄弟姉妹はすべて父親か母親のどちらかが親権を持つことが一般的です。

2、父親が親権者となるときに覚えておきたいこと

同じ年齢でも、男性の年収は女性より高いというデータがあります。習い事や高等教育には少なからず資金が必要です。父親が親権者となる場合、収入が安定していることで、子どもにより多くの選択肢を提供することができるでしょう。

ただし、男性の経済力は、仕事に集中できる環境によって担保されているとも言えます。子育てや家事を担うにあたり、勤務時間を減らす必要もあるでしょう。働き方を見直すことは避けられないものと考え、収入を維持するための対策が必要となるかもしれません。

しかし、仕事で期待される成果を上げつつ、家事育児を担うことは簡単なことではありません。仕事に追われ、子どものケアにかけられる時間が少なくなりがちです。子どもの様子に気づかない、行事に参加できない、遊んであげられないなどが続くと子どもがストレスから心身に不調をきたすこともありえます。

また、もしも娘を父親が監護するのであれば、思春期や第二次性徴期に特有の問題は避けて通ることのできないものでしょう。服や下着を買う、生理用品を買う、性教育などデリケートな関わり合いが必要となります。

時には、外部の手を借りて話し合うなどの対応が求められるケースも考えられます。子どものより良い生育環境のためにも、柔軟な対応は非常に重要な要素となりえるでしょう。抱え込まずに積極的に相談するようにしてください。

3、父親が親権を獲得するためにやるべきこと

父親が親権者になるためには、妻を説得し、協議離婚で親権を得ることが一番の近道です。そのための話し合いがこじれないために、第三者である弁護士に交渉を依頼するのも一案です。

裁判離婚となるのであれば、以下のような手だてをひとつでも多く実行に移すことが重要です。

  1. (1)子どもの監護時間を増やし記録する

    第一に、子どもと一緒に過ごす時間を確保するようにしましょう。

    父親が親権者となるためには、適切に子どもの監護を行うことができなければなりません。普段から母親へ任せきりにすることなく、育児家事を積極的に担っていたかどうかが非常に重視されます。

    また親権者の決定には子ども本人の意思も尊重されます。子どもの世話をすることは、子どもが父親と暮らしたいと思う関係性の構築にもつながるでしょう。また、監護の事実を客観的に主張するため、家事や育児の分担の記録を日記などに残したり、子どもと過ごしている写真や動画を撮影したりしておくと良いでしょう。

  2. (2)離婚後の監護体制を整える

    離婚後、母親がいなくても監護の問題がないような環境を整えましょう。時短勤務を選択する、職住近接となるようにする、ベビーシッターを継続的に依頼できる環境にするなどの対策が考えられます。

    自分の親と同居する場合は、子どもとの関係性が良好であるように配慮する必要があるでしょう。

  3. (3)別居する場合、子どもと同居する

    離婚に先立ち、別居する夫婦も少なくありません。その場合、子どもと同居している親が子どもの監護をほぼすべて担うこととなります。したがって親権は、子どもとより長く同居している親に認められやすくなります。

    夫婦別居する際に、子どもと同居することは、親権者決定の上で極めて重要な要素であるといえるでしょう。しかし無理やり子どもを連れて別居することは悪手となりえます。事前に弁護士に相談することをおすすめします。

  4. (4)母親との面会交流を積極的に認める

    離婚しても、子どもにとって、母親は一生母親であることに変わりはありません。

    父親が親権を持つためには、離婚後も母親と子どもの関わり合いを十分に確保することが重要です。また、面会交流しやすいように近所に住むなどの生活環境面の配慮があれば、父親の親権にプラスに考慮されやすいものと考えられます。

  5. (5)虐待や育児放棄があれば証拠を押さえる

    妻に虐待や育児放棄の事実があれば、証拠を押さえておきましょう。傷の写真、罵倒している様子の録音、治療を受けた診断書ももらうようにしましょう。

    母親が子どもに望ましくない養育者であると証明できれば、父親に親権が認められる可能性が高くなるでしょう。

4、まとめ

離婚にあたっては、子どもの幸せを最優先にして考えなければなりません。母親が育児の中心を担うことが圧倒的多数である今の日本社会では、母親に親権が認められやすいのが現状です。

父親が親権を持ちたいと考えるのであれば、離婚後の子どもの生活が大きく変化しないよう、普段から子どもの世話や家事を積極的に担うことが非常に重要です。今からでも勤務調整をしたり、養育体制を十分に準備できることなどをアピールしたりすることで、母親と別居しても子どもの成育に問題がないと判断される可能性を高めることができます。

親権問題でお悩みであれば、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士にご相談ください。家族全員のよりよい未来のために尽力いたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています