離婚するときの借金は財産分与でどうなる?
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令和元年の茨城県の離婚件数は4664組で、人口1000人に対する離婚率は1.66%でした。ここ10年ほどは離婚件数も離婚率も減少傾向が続いているようですが、依然として離婚はなくなりません。
離婚の際は、どのように資産を分けるかの「財産分与」が争点になることがあります。
昭和61年6月、夫の収入が十分であるにもかかわらず妻が借金を重ねたケースにおいて、東京家庭裁判所は、妻が債務の形成に7割の責任負担を認めました。
離婚時に住宅や車のローンなどの借金がある場合、財産分与はどうなるのではないでしょうか。
今回は、借金がある場合の財産分与の対象や、手続きについてベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説していきます。
目次
- 1、財産分与とは
- 2、財産分与の対象となる借金と対象外の借金
- 3、財産分与の方法
- (1)借金の財産分与の方法
①財産が債務よりも多い場合
②財産が債務よりも少ない場合 - (2)財産分与の進め方
- (3)調停の申し立てに必要な書類とは
- (4)調停の申し立ては家庭裁判所に行う
- (5)調停で決着しなかったら離婚裁判へ
- (6)調停で決着しなかったら離婚裁判へ
①証拠となり得るものとは
- (1)借金の財産分与の方法
- 4、証拠となり得るものとは
- 5、まとめ
1、財産分与とは
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(1)財産分与とは
財産分与とは、結婚から離婚するまでの間にふたりで築き上げてきた共有の財産を離婚するとき、または離婚後に分けることです。民法768条に「離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と定められています。
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(2)財産分与は原則2分の1
法律上、夫婦の財産分与は2分の1であることは明記されていません。しかし、平成8年の法制審議会による民法改正案要綱では、原則として平等な割合による分与を規定しています。そのため事実上、裁判では原則夫婦の財産は半分ずつに分けるという2分の1ルールが存在します。
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(3)財産分与の種類
財産分与には、大きく分けて3つの種類があります。
共有財産を分け合って清算する清算的財産分与、離婚後の生活費の一部援助する意味で財産が分与される扶養的財産分与、そして、慰謝料についての話し合いが不十分であったり十分な慰謝料が得られなかったりした場合に、慰謝料分を財産分与に含めて支払う慰謝料的財産分与です。
2、財産分与の対象となる借金と対象外の借金
夫婦が築いてきた共有の財産は財産分与の対象になります。たとえば預貯金や不動産、株や社債といった有価証券などが対象となります。
それでは、借金はどうなるのでしょうか。
実は、結婚している間に夫婦の共同生活のために借り入れた借金は、財産分与の対象となります。しかし、夫婦の一方が結婚前に借り入れた借金や、個人的な用途としての借金は財産分与の対象とはなりません。
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(1)財産分与の対象となる借金の例
財産分与の対象となる借金の具体例は以下の通りです。
●家族の生活費のため借金
衣食住や医療費、子どもの教育費など、家族の生活費のための借金は財産分与の対象になります。
●家族で使用する車のローン
家族と使用するために購入した車のローンは財産分与の対象になります。
●家族で居住するための住宅ローン
家族と一緒に住むために購入した住宅のローンは財産分与の対象になります。 -
(2)財産分与の対象とならない借金の例
財産分与の対象とならない借金の具体例は以下の通りです。
●浪費のための借金
夫婦の生活水準に見合わない高級品や嗜好(しこう)品を買うための借金は財産分与の対象にはなりません。
●ギャンブルのための借金
パチンコや競馬など、個人的趣味のギャンブルでの借金は財産分与の対象にはなりません。
●結婚前の借金
基本的に、結婚前に借り入れた借金については財産分与の対象にはなりません。
3、財産分与の方法
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(1)借金の財産分与の方法
次に、借金の財産分与の方法について、財産が債務よりも多い場合と財産が債務よりも少ない場合に分けて説明します。
① 財産が債務よりも多い場合
財産が債務よりも多い場合は、財産額から負債額を差し引いた額を夫婦で折半します。たとえば、貯金が1000万円、ローンで400万円の負債がある場合は、差額の600万円が財産分与の対象となります。
② 財産が債務よりも少ない場合
財産が債務よりも少ない、いわゆる債務超過の場合に超過分は財産分与しません。配偶者が債務超過を返済する能力がない場合に、もう一方の配偶者は債務を引き継ぐ必要はありません。しかし、借り入れをした配偶者は、プラスの分の財産分与もない赤字の状態であるため、一方の配偶者は財産分与を受け取れないことになります。 -
(2)財産分与の進め方
次に、借金の財産分与の進め方について説明します。
●話し合い
基本的には、借金の財産分与についても夫婦間の話し合いで決定していきます。まず、財産分与の対象となる財産のリスト作成をします。リストに基づいて、資産と債務の合算を行っていきます。
●相手が話し合いに応じない場合
別居などの理由で相手が話し合いに応じない場合は、内容証明郵便を使用して財産分与のリストや請求内容を送付します。内容証明郵便は、後々の証拠となります。
●調停
借金の財産分与に関する話し合いが夫婦間で行えない場合や、話し合いでは決着がつかない場合は調停を行います。
夫婦関係調整調停または財産分与請求調停で話し合いを行っていきます。
夫婦関係調整調停は、夫婦関係で生じたもめ事に関する調停です。夫婦関係調整調停では、離婚を進める上での、財産分与の話し合いを行います。
財産分与請求調停は、離婚後に財産分与について話し合う調停です。 -
(3)調停の申し立てに必要な書類とは
調停の申し立てに必要な書類は以下の通りです。
- 調停の申立書
- 離婚時の夫婦の戸籍謄本
- 財産目録
- 退職金の明細や給与明細、預金通帳写し
- 不動産登記事項証明書
- 固定資産評価証明書
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(4)調停の申し立ては家庭裁判所に行う
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に必要書類と、申し立ての費用を支払います。申し立てに必要な費用は、おおむね収入印紙1200円と郵送用の郵便切手800円程度です。費用については、裁判所によって異なるため事前に確認しておきましょう。
調停期日が決定すると家庭裁判所から書類が郵送されてきます。1回目の調停が行い、調停が成立しなければ2回目以降の調停で話し合いをすすめていきます。 -
(5)調停で決着しなかったら離婚裁判へ
調停にて話し合いがまとまらなかった場合は、離婚訴訟を起こします。離婚裁判にて、財産分与についての解決を目指していきます。
ただし、すべてのケースで離婚裁判が行えるわけではありません。裁判によって離婚をするためには、法律が定める離婚の原因が必要とされています。離婚原因とは、不貞行為や暴行などの婚姻を継続しがたい重大な事由のことです。 -
(6)離婚裁判の流れや証拠の重要性
離婚裁判は、訴状を作成し提出した後に相手方へ訴状が送られます。その後、第1回口頭弁論期日が決定し、数回の口頭弁論を繰り返して判決に至ります。
なお、離婚裁判では、調停の場合と比較して証拠が重要となります。預貯金などを客観的に証明できる証拠をそろえた上で財産分与を請求しましょう。
① 証拠となり得るものとは
離婚裁判で証拠となり得るものは次の通りです。- 配偶者の預貯金通帳
- 給与明細や確定申告書類などの所得を証明できる書類
- 不動産登記簿
- 生命保険に関する書類
- 証券口座の明細書類
4、相手の借金額が大きく返済できない場合
離婚の際に借金がある場合、共有財産で借金を返済し、残った財産を夫婦で分与します。しかし、相手の借金額が大きく返済できない場合はどうすればよいのでしょうか。
基本的に借金は、借り入れのときの債務者や保証人になった人に返済の義務があります。もし、借金を支払っていくことがどうしてもできない場合、自己破産を申し立て、免責許可決定を得るという最終手段もあります。
免責許可決定を得られれば、借金の残高はゼロになります。しかし、夫婦の一方が借金の保証人の場合に自己破産すると、保証人に請求がいくことになります。自己破産の手続きを検討する際は、弁護士に相談してメリットやデメリットを理解してからすすめましょう。
5、まとめ
本コラムでは借金が財産分与の対象になるのか、夫婦間で話がまとまらないときはどのように話を進めていけば良いのかを解説してきました。離婚時の借金の財産分与について、夫婦の話し合いでまとまらない際は、離婚調停・財産分与請求調停や審判、離婚裁判といった手続きにより、財産分与を決めていきます。手続きには、資産と債務の合算や、証拠・書類の提出が必須になり、調停や裁判は不慣れで不安なことも多いことでしょう。
離婚時の借金の財産分与についてお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士にご相談ください。弁護士があなたに代わって必要な書類の作成や手続きをすすめていきます。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています