共働きの夫婦が離婚する時に知っておきたい財産分与について

2019年03月12日
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共働きの夫婦が離婚する時に知っておきたい財産分与について

厚生労働省によると、平成29年度は21万2千件の離婚があり、人口千人あたりの離婚率は、1.7であったという統計が出ています。
平成6年5月、別々に収入を得ていた夫婦の離婚時の財産分与について、東京家庭裁判所は、不公平を調整するために妻の分与割合を2分の1よりも上げる判決を出しました。
共働きの夫婦で、財布を別々に管理している場合、離婚時の財産分与はどうなるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、財布を別々で管理している夫婦の財産分与についてベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説していきます。

1、そもそも財産分与とは

  1. (1)財産分与とは

    財産分与とは、結婚から離婚するまでの間において、2人で築き上げてきた共有の財産をそれぞれの貢献度に応じて分配することです。民法768条に「離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と定められています。

  2. (2)財産分与の種類

    財産分与には、大きく分けて3つの種類があります。

    (2)-1清算的財産分与
    清算的財産分与とは、結婚している間に夫婦で築いてきた財産を分け合って清算することです。財産の名義の違いや、離婚原因があるか否かについては、清算的財産分与に関係はありません。

    (2)-2扶養的財産分与
    扶養的財産分与とは、離婚後に夫婦のどちらかが生活が困窮するのを防ぐため、生活費の一部援助する意味で財産が分与されることです。例えば、夫婦のうちどちらかが病気や経済的自立が難しい場合に分与されるケースがあります。

    (2)-3慰謝料的財産分与
    基本的には、慰謝料と財産分与は異なるため別々に清算することがほとんどです。しかし、慰謝料について話し合いが不十分であったり、十分な慰謝料が得られなかったりした場合に、慰謝料も含めて財産分与を請求することがあります。その場合は、慰謝料も含む財産分与となるため、慰謝料的財産分与と呼ばれます。

2、共働き夫婦の場合の財産分与の割合は?

共働き夫婦の場合、財産分与の相場はどのくらいなのでしょうか。
条文には、夫婦の財産分与は2分の1であることは明記されていません。しかし、平成8年の法制審議会による民法改正案要綱では、原則として平等な割合による分与を規定しています。専業主婦が行う家事労働も、夫婦の財産の形成に役立っていると考えられるためです。そのため事実上、裁判では原則夫婦の財産は半分ずつに分けるという2分の1ルールが存在します。

3、共働き夫婦が財布を別々に管理していたら?

前述の通り、夫婦の財産分与の原則は2分の1です。しかし、すべてのケースで2分の1ルールが適応されるわけではなく、例外もあります。例えば、夫婦どちらか一方の特別な能力や専門知識・努力によって財産形成されていたと判断された場合などです。

4、財産分与の対象になるものについて

  1. (1)財産分与の対象は共有財産

    財産分与の対象は共有財産と判断される財産です。結婚している間に夫婦でともに築き、維持されてきた財産はすべて共有財産となります。
    では、共有財産はどのようなものがあるのでしょうか。
    具体的には、次にあげる財産が財産分与の対象となります。

    •現金
    銀行の預貯金などの現金です。銀行口座の名義が一方の配偶者(妻の場合は夫名義)となっている場合であっても、共有財産となります。

    •不動産
    土地や建物の不動産です。不動産の契約者の名義が一方の配偶者の場合であっても、共有財産です。

    •有価証券
    株券や社債などの有価証券も共有財産です。

    •家具や家電
    結婚している間に購入したテレビやベッドなどの家具や家電も共有財産です。

    •退職金
    一定の場合、退職金も共有財産です。

    •負債
    夫婦の共同生活のために負った負債は、財産分与の対象であると考えることが可能です。

  2. (2)財産分与の対象とならない特有財産

    特有財産とは、財産分与の対象にはならない財産のことです。特有財産とは、「婚姻前から片方が有していた財産」と「婚姻中であっても夫婦の協力とは無関係に取得した財産」のことです。

    •結婚前のお金
    独身時代に一人で貯めた預貯金は、原則として財産分与の対象にはなりません。

    •結婚前に購入した財産
    独身時代に一人で買った不動産や車、家具家電などについても、原則として財産分与の対象にはなりません。

    •相続した財産
    親や親族から贈与された土地や家などの財産についても、原則として財産分与の対象にはなりません。

5、財産分与の方法は?

  1. (1)財産分与の方法

    財産分与は、夫婦の一方から他方に対する金銭の支払いをもって行われることが一般的です。一方で、金銭以外の財産、たとえば不動産などによる現物給付によって行うことも可能です。

  2. (2)財産分与の手順

    次に、実際に財産分与を行っていく手順を解説します。

    •話し合い
    基本的には、財産分与は夫婦間の話し合いで決定していきます。まず、財産分与の対象となる財産のリスト作成をします。そして、リストをもとにどの財産をどちらが所有するかを話し合っていきます。

    •話し合いに応じない場合
    別居などの理由で相手が話し合いに応じない場合は、内容証明郵便を使用して財産分与のリストや請求内容を送付します。内容証明郵便は、後々の証拠となります。

    •調停
    財産分与に関する話し合いが夫婦間で行えない場合や、話し合いでは決着がつかない場合は調停を行います。夫婦関係調整調停または財産分与請求調停で話し合いを行っていきます。夫婦関係調整調停は、夫婦関係で生じた揉め事に関する調停です。夫婦関係調整調停では、離婚を進める上で、財産分与の話し合いを行います。財産分与請求調停は、離婚後に財産分与について話し合う調停です。

    •必要な書類を集める
    調停の申立てに必要な書類は以下の通りです。

    調停の申立書
    離婚時の夫婦の戸籍謄本
    財産目録
    退職金の明細や給与明細、預金通帳写し
    不動産登記事項証明書
    固定資産評価証明書

    •家庭裁判所に申立てを行う
    相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に必要書類と、申立ての費用を支払います。申立てに必要な費用は、おおむね収入印紙1200円と郵送用の郵便切手800円程度です。費用についいては、裁判所によって異なるため事前に確認しておきましょう。

    •調停を行う
    調停期日が決定すると家庭裁判所から書類が郵送されてきます。1回目の調停を行い、
    調停が成立しなければ2回目以降の調停で話し合いをすすめていきます。

    •離婚裁判
    調停にて話し合いがまとまらなかった場合、必要であれば離婚訴訟を起こします。離婚裁判にて、財産分与についての解決を目指します。

    •離婚原因が必要
    すべてのケースで離婚裁判が行えるわけではありません。裁判によって離婚をするためには、法律が定める離婚の原因が必要とされています。離婚原因とは、不貞行為や悪意の遺棄、暴行などの婚姻を継続し難い重大な事由のことです。

    •離婚裁判の流れ
    離婚裁判は、訴状の作成し提出した後に相手方へ訴状が送られます。その後、第一回口頭弁論期日の決定し、数回の口頭弁論を繰り返して判決に至ります。

    •裁判での証拠の重要性
    離婚裁判では、調停の場合と比較して証拠が重要となります。所得などを客観的に証明できる証拠を揃えた上で財産分与を請求しましょう。

    •証拠
    離婚裁判で証拠となり得るものは次の通りです。

    配偶者の預貯金通帳
    給与明細や確定申告書類などの所得を証明できる書類
    不動産登記簿
    生命保険に関する書類
    証券口座の明細書類

6、まとめ

離婚時の財産分与は原則2分の1ですが、例外もあります。
今回は、共働きで財布を別々に管理していた夫婦が財産分与する時に知っておきたい内容について解説しました。
財産分与についての話し合いや調停は、当事者だけでも行なうことはできます。しかし、離婚をしようとしている状態で必要な証拠を集めたり、手続きをすすめたりしていくことは想像以上に大変です。
離婚時の財産分与についてお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士にご相談ください。弁護士が離婚時の財産分与の手続きを代わりに行っていきます。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています