認知なし・養育費一括払いで関係を終わらせたい! 法的な問題はある?

2021年02月01日
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認知なし・養育費一括払いで関係を終わらせたい! 法的な問題はある?

「あなたの子どもを身ごもった。産みたい」。
と、不倫相手から突然告げられたら、どうしますか?

離婚して不倫相手と再婚する方法もありますが、現在の家庭や相手との関係性からそうもいかず、認知もできないという方もいらっしゃるでしょう。その場合、子どもの養育費が問題になります。

養育費をめぐって争いになるケースは多く、令和元年度の司法統計によると水戸家庭裁判所では養育費をめぐって377件の調停が申し立てられました。

離婚も認知もできない場合、「養育費を一括で払って今後の連絡はしたくない」という方もいるでしょう。では認知しないことや養育費を一括払いにすることに法的問題はあるのでしょうか?

1、認知なしで養育費一括払いすることに法律的な問題はある?

子どもがいる夫婦が離婚する場合、子どもの親権や養育費について考えなければいけません。では、そもそも結婚していない男女の場合、子どもの認知をせず、養育費を一括払いにすることはできるのでしょうか?

  1. (1)認知していない子どもの養育費支払い義務はない

    親には子どもを扶養する義務があります(民法第877条)。

    一緒に住んでいれば扶養できますが、離婚し子どもと離れて住むことになるとそうはいきません。そこで一般的には離婚に際し、子どもと生活していない親(非監護者)は、子どもと生活し親権を持つ親(監護者)に養育費を支払うことで扶養義務を果たします。

    ただしこれは、法律上の親子関係がある場合の話です。

    結婚していない男女の間に子どもが生まれた場合、母親との関係は出産で証明されますが、父親は認知しなければ親子関係は生じません(民法第779条)。戸籍でも父親の欄は空欄です。

    つまり結婚せず認知もしていない場合、血のつながりはあっても法律上は父親ではないため養育費を支払う義務はないのです。

    ただ認知していない場合でも、愛情や責任感から養育費を支払う方は少なくありません。
    一方でまったく養育費を支払わないと、親権者と子どもが生活に困って養育費の支払いを求めて調停を起こす可能性があります

  2. (2)養育費は原則毎月払いだが、合意があれば一括払いも可能

    養育費は生活のためのお金という性質上、原則として月払いです。
    ただしこれは法律で定められたルールではないため、一括払いでも問題はありません。

    なお一括払いが選択できるのは、あくまで当事者同士の合意があった場合のみです。一方的に一括払いにはできません。特別の事情がない限り、養育費をめぐる調停でも月払いが指定されます。

    一括払いは支払い負担が大きいため減額の余地があり、毎月支払い続ける手間が省け、支払いが滞って給与差し押さえなどの強制執行になることがないなどのメリットがありますが、デメリットもあります。メリットデメリットについては3章で解説します。

2、認知を拒めないケース

結婚していない男女の間の子どもは、認知により父子関係が認められます。では諸事情により認知しないと決めた場合、意に反して認知しなければいけなくなるケースはあるのでしょうか?

  1. (1)婚外子の認知の方法

    男性が婚外子の子どもを認知する方法は次の三つです。

    • 任意認知
    • 調停認知
    • 裁判認知


    ●任意認知
    「任意認知」とは、男性が「認知届」という書類を書き、自ら役所に提出して行う認知のことです(民法第781条)。

    DNA鑑定などは不要で、「生まれてきた子が自分の子どもだ」と自身で判断した場合に手続きします。胎児であっても、母親の承諾があれば認知可能です。遺言書で認知する方法もあります。

    ●調停認知
    「調停認知」とは、家庭裁判所の調停を利用した認知のことです。

    男性が認知を拒否したり、話し合いに応じなかったりした場合に利用され、調停委員を介した話し合いを進めて、合意を目指します。調停の途中で男性の考えが変わった場合は、調停成立前に認知届の提出も可能です。

    子どもが胎児の場合は利用できないため、生まれてから行われます。

    ●裁判認知
    「裁判認知」とは調停が不成立となった場合に裁判を行い、認知する方法です。
    なお、父親が亡くなっている場合でも死亡から3年の間は、認知を求める訴訟をすることも認められています。

  2. (2)裁判認知は拒否できない

    通常、調停や裁判では双方からの聞き取りのほか、子どもとの間でDNA鑑定が行われます。

    ご自分が関係を否定してもDNA鑑定で親子関係が立証されれば、裁判所はまず父子関係を認める判断を下すでしょう。

    調停では男性側が同意しなければ、勝手に認知されることはありませんが、裁判では同意の有無にかかわらず、裁判所が認めれば強制的に認知されます。これを拒むことはできません。

    認知されれば、親として養育費の支払い義務が生じるほか、子どもには財産の相続権も認められます

3、養育費を一括払いするデメリット

毎月養育費を払うことは手間がかかり、精神的な負担にもなるでしょう。一括で支払ってしまえば、原則としてその後支払う必要はないため、一括払いの方が良い、と思われるになる方もいらっしゃるかもしれません。ただし、以下のようなデメリットもあります。

  1. (1)多額の出費になる

    養育費は原則として子どもが成人するまで支払わなければいけません。

    成人になる前でも結婚や就職をすれば支払う必要はなくなりますが、それでも子どもが胎児や乳幼児の場合、20年程度の支払期間が生じます。

    養育費は一緒に暮らさない方の親(非監護者)と同程度の生活ができる金額が基準で、自分や相手の収入・資産により変動します。

    収入が高ければ20年分はかなりの金額になるため、一括払いをしても自分が生活していけるだけの資金がなければ、一括払いは難しいでしょう。

  2. (2)事情が変わっても返還してもらえない

    毎月払いの場合、ご自分の転職や失職、結婚といった事情変更があれば養育費を減額できる可能性があります。

    また相手が結婚して子どもが再婚相手と養子縁組した場合も、再婚相手に子どもの扶養義務が生じるため、養育費が減額されることが少なくありません。

    ところが一括払いの場合、そういった将来の不確かな環境変化は考慮されません。仕事を失いお金に困ったとしても、一括払いで支払ってしまった養育費は原則として返還されないのです。

    また、取り決めた内容に従わず、養育費を払わなかった場合には、相手から裁判所に訴えを起こされれば強制執行になり、給料が差し押さえられる可能性もあります。

  3. (3)相手が適切に管理するかわからない

    養育費は通常、子どもが直接受け取るのではなく親権者の口座に入ります。

    もし、その親権者に浪費癖があった場合には私的支出に使われてしまう可能性があります。

    そうなるとお金が子どものために使われないおそれがでてきます

  4. (4)追加請求の可能性もある

    子どもが大きなケガをしたり親権者が病気で働けなくなったりするなど、親権者側に予期せぬ変化があった場合、一括払いで受け取った養育費だけでは、生活できなくなるかもしれません。

    その場合、追加で養育費の支払いを求められる可能性があります。

    親権者の浪費で養育費が足らなくなった場合には、追加請求が認められる可能性は低いですが、やむを得ぬ事情があれば、支払いが認められるかもしれません。また、親権者が浪費したとしても、子ども自身には責任はありませんから、改めて子どもから養育費の請求があれば、別途養育費の支払いが認められる可能性もあります。「一括払いでおしまい」とは言い切れないのです。

  5. (5)贈与税が課されるおそれがある

    子どもの養育のためという性質上、税法上、月払いの養育費には税金は課されないことになっています。

    ところが一括払いの場合には、将来分も含まれるなどの事情から、贈与税が課されるおそれがあります。

    贈与税は受け取った側が支払うため、父親が負担する必要はありませんが、税金を支払えば、結果的に子どもが受け取る金額が減ってしまうというデメリットにつながります。

4、トラブルになったときは弁護士に相談を

子どもを認知せず養育費を一括払いとしたいと希望を伝えても、相手は簡単には受け入れてくれないでしょう。

相手から、調停の申し立てや慰謝料請求を受ける可能性もあります。できるだけ穏便に解決するためには、弁護士への相談がベストです。弁護士へ相談すると、次のようなメリットが期待できます。

  1. (1)適切な養育費の計算が可能

    養育費は、一般的には父親と母親の収入などをもとに、裁判所の作成した養育費算定表を使って計算します。

    ただし、これは月払いの場合の算定表です。一括払いの場合は子どもの教育費用など、何をどれだけ考慮するかによって金額が大きく変わってきます。

    一括払いの算出方法には基準がないため、養育費に詳しくない方が適切な金額を決めるのは難しいでしょう。しかし、弁護士であれば、裁判例などをもとに適切な金額を算出できます

  2. (2)合意内容をしっかり残せる

    子どもの認知をしない場合、養育費の支払いは義務ではなく任意です。また養育費の一括払いも、通常の支払い方法からは外れています。

    そのため、後で「そんな約束していない」などと争いにならないように、合意内容はきちんと書面にして残しておきましょう。

    弁護士は依頼者に代わって文面を考え、書類を作成できます。より証拠能力の高い、公正証書の作成もサポート可能です。

  3. (3)交渉や調停、裁判を任せることができる

    認知なし・養育費一括払いに相手が同意しない場合、子どもの認知や養育費を求めて調停・裁判を起こされる可能性があります。

    家族や職場に内緒で話し合いを進めようとしていたとしても、解決までに時間がかかれば途中で知られてしまうこともあるでしょう。
    また裁判で認知が認められれば、拒否できず養育費の支払いは義務となります。

    トラブルが大きくなるのを避けたい場合には、相手との交渉で解決することが大切です。しかし当事者だけで話し合いを始めても解決しない場合が多いため、交渉を最初から弁護士に任せることをおすすめします

    弁護士が交渉に立てば、相手も冷静になって話し合いに応じてくれる可能性が高まります。交渉が決裂して調停や裁判になった場合でも、そのままサポート可能なため、安心です。

5、まとめ

不倫相手が想定外の妊娠や出産をしたと聞くと、対応方法がわからず慌ててしまうでしょう。

認知をせず養育費一括払いを目指す場合は、まずは誠意ある対応が必要です。ひとりで対処するのは簡単ではありません。

ぜひベリーベスト法律事務所 水戸オフィスにご相談ください。弁護士がお客さまのご事情を丁寧にお聞きし、できるだけ穏便に解決できるように手を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています