相続人と連絡が取れないときの対処法を水戸の弁護士が解説!
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相続問題と聞くと、「たいした財産がないから、うちには無関係」だと思っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、いざ親族が亡くなり相続手続きがスタートしたら、一部の相続人(亡くなった方から財産を受け継ぐ可能性がある人)と連絡が取れず相続問題を抱えてしまったというケースもあります。実は、相続の手続きを進めるにあたっては、さまざまな場面で相続人全員の同意が必要になるため、連絡が取れない相続人がいると手続きが進まないという困ったことになるのです。
連絡が取れないことを理由に一部の相続人を除外し、相続の話し合いを進めてもよいものでしょうか。疎遠になっている相手と連絡を取る方法はあるのでしょうか。
この記事では、連絡が取れない相続人がいるケースを想定し、相続人を見つける必要性と方法について、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説します。
1、相続人を探す必要性
亡くなった方の遺産をどうするかは、相続人(亡くなった方の財産を受け取る可能性のある人)全員で遺産分割協議を開き、決めていく必要があります。このとき、一部の相続人と連絡が取れないとしたら、どのような不都合があるのでしょうか。
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(1)相続税には申告期限がある
相続財産があっても、特に今すぐ相続する必要性がないことなどを理由に、「相続人全員と連絡がつくまでのんびり待とう」と思う方がいるかもしれません。しかし、相続税の申告には期限があり「被相続人の死亡を知った翌日から10か月以内」と定められています。期限までに申告しないと無申告加算税や延滞税などのペナルティーを課されます。
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(2)相続税の特例が受けられない
相続税は、遺産分割協議がまとまっていないことを理由に、いったん法定相続分で相続したものとして申告することが考えられます。
しかしこの方法では、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の評価減などの、税法上の優遇措置が受けられなくなるなどのデメリットが発生する可能性があります。結果的に、本来の金額よりも多く納税しなければならないかもしれません。
2、連絡の取れない相続人を除いて遺産分割協議をするとどうなる?
電話やメールなど、思いつく限りの方法を試みたけれど、連絡が取れないこともあるでしょう。「これだけ力を尽くしても見つからないのだから、仕方がない」と、連絡が取れる相続人たちだけで遺産分割協議を行うとどうなるのでしょうか。
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(1)遺産分割協議が無効になる
遺産分割協議は、相続人のうち誰かひとりでも欠けていると無効となります。仮に無理やり協議をまとめてしまったとしても、後から相続人が出てきて権利を主張すれば、最初からやり直さなくてはなりません。遺産分割を請求する権利には時効の概念がないからです。
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(2)「連絡が取れない=相続の放棄」ではない
連絡が取れないことをもって、「相続を放棄したのだろう」と考えることも早計です。確かに、亡くなった被相続人やその親族と折り合いが悪く、相続を含めて関わり合いを持ちたくないという理由で連絡を無視する方もいるでしょう。
しかし、相続放棄をするためには口頭による宣言や心の中で思っているだけでは足りず、家庭裁判所へ必要な書類をそろえて申し立て、受理される必要があります。
ちなみに連絡が取れない相続人が相続放棄をしたか否かは、相続人であれば家庭裁判所へ照会して調べることができます。
3、連絡が取れない相続人がいるときの対処法
ここからは、連絡が取れない相続人がいるときの対処法を、順を追って解説していきます。
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(1)戸籍謄本を取得し本籍地を調べる
まずは、被相続人の本籍地がある役場に行き、戸籍謄本を取得します。戸籍謄本には、被相続人の戸籍に入っている全員の情報が記載されています。古い戸籍があれば、その本籍地の市区町村へ申請し、出生の戸籍までたどっていきます。
相続人の本籍地が分かったら、次は戸籍の附票を取得します。戸籍の附票は本籍地を定めてからの住所履歴が確認できる書類です。本籍地に住んでいるとは限らないため、具体的な住所を知るには戸籍の附票が必要です。
なお、これらの書類は郵送による申請、取得も可能です。本籍地が遠方でも諦める必要はありません。 -
(2)相続人の住所が分かれば連絡する
相続人の住所が分かれば、手紙を送ったり、直接会いに行ったりして接触を試みることができます。
ただし、注意点もあります。相続人であるにもかかわらず、一切の連絡を絶っていたということは、何か事情があることが多いでしょう。中には被相続人や親族に嫌悪感を持っている方もいますので、丁寧に事情を説明し、遺産分割協議に加わってもらうよう促すことが大切です。
少なくとも、説明もなしに遺産分割協議書への押印を一方的に求めるようなことは避けるべきでしょう。 -
(3)不在者財産管理人を立てる
何年も家に帰ってこず連絡がつかなかったりすることもあります。この場合、不在者財産管理人を立て、連絡が取れない相続人に代わって財産を管理してもらう必要がでてきます。連絡が取れない相続人の住居地を管轄する家庭裁判所へ申し立てを行うことで、裁判所が選出します。
不在者財産管理人は、不在者の財産を管理、保存することが基本的な役割です。ただし、家庭裁判所の権限外行為許可を得ることで、遺産分割協議に加わったり、不動産の売却などを行ったりすることができます。
なお、不在者財産管理人は、遺産分割協議を行う相続人がなることはできません。
適格性の判断にあたり、不在者との関係や利害関係を考慮して選ばれますので、弁護士などの専門家が指定されることも多くなります。 -
(4)失踪宣告を行う
ここまでの方法は、相続人とは連絡が取れないものの、生きていることを前提とした手続きです。もう何年も音信不通になっている場合や、災害などで亡くなっているかもしれない場合には、失踪宣告という方法を選択する場合もあります。
失踪宣告には、生死が不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果があります。相続手続きにおいては、その相続人が亡くなったものとして遺産分割協議を進めることができます。
失踪宣告は、連絡が取れない相続人の住居地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。ただし、調査官による調査や官報への掲載、公示催告などを経て宣告されますので、申し立てから半年以上はかかることが通常です。
この方法を選んだ場合相続税の申告期限には間に合わない可能性が高いので、あくまでも最終手段という位置づけになります。 -
(5)専門家に相談する
このように、連絡が取れない相続人を探し出す方法や、手を尽くしても連絡が取れない場合の対策はいくつかありますが、一般の方が行うには非常に骨の折れる作業となります。
すぐに連絡が取れたとしても、疎遠になった親族から相続の合意を得るのは難しいときがあるでしょうし、時間的な余裕もありません。被相続人が亡くなると、相続手続き以外にもやるべきことが多数あり、あっという間に時間が経過していくものです。
連絡が取れない相続人がいるなら、なるべく早いタイミングで弁護士などの専門家に相談するほうがよいでしょう。相続人の調査のほか、相続人への説明もしてくれます。
また、弁護士であれば、連絡を無視していたような相続人でも話し合いに応じやすくなる可能性があります。
4、まとめ
今回は、遺産相続にあたり連絡が取れない相続人がいる場合の対処法をお伝えしました。何らかの事情で疎遠になっている親族でも、相続権を持っている以上、放置しておくことはできません。勝手に遺産分割協議を進めても無効になってしまいますので、しかるべき方法で探し出し、相続の問題を解決していきましょう。
相続人を探す時間が取れない、何から始めてよいのか分からないといった方は、弁護士などの専門家を頼ることも検討しましょう。
ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスでは、相続問題の経験豊富な弁護士が、お悩みに対して尽力いたします。相続人の行方が分からずお困りの方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています