交通事故でケガを負った場合、治療費として請求できるものと注意点
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ここ茨城県は車社会です。自動車は生活に不可欠だという方も少なくないでしょう。
一般財団法人自動車検査登録情報協会の統計情報によると、令和2年3月末現在で茨城県の世帯当たりの自動車の普及台数は、群馬県、栃木県に次ぐ全国第6位だそうです。群馬県や栃木県に負けたというべきか、勝ったというべきか、複雑な気持ちになるデータです。
そんな車社会であるということは、それだけ交通事故に遭うリスクも大きいといえるでしょう。
今回は、交通事故に遭ってケガをしたときに、知っておきたい知識をベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士がご紹介します。
1、交通事故でケガをしてしまったときは、まずは病院へ
交通事故でケガをしたとき、まずは病院へ行って診察を受けることが非常に重要です。ケガを治すために治療を受けるべきであることは当然なのですが、それだけが理由ではありません。
交通事故によってケガをした場合、被害者は、加害者に対し、ケガによる損害の補償をしてもらうことができます。いわゆる損害賠償をしてもらう地位にあるわけです。
しかし、この損害賠償は、ケガをした被害者ならばどんなときでも請求できるというわけではないのです。
損害賠償を請求することは、被害者に認められた法律上の権利です。この法律上の権利が認められるためには、被害者が、自ら法律上の権利があることを証明する必要があります。つまり、“事故によってケガを負ったこと”を証明する必要があるのです。
では、“事故によってケガを負ったこと”を証明するためには何が必要なのでしょう。まず、“ケガを負った”ということについては、被害者本人が、「ケガをしました」と言っているだけでは証明されたことにはなりません。ケガがあるということを証明するためには、医師によって、ケガがあることの診断をしてもらわなければいけないのです。より具体的には、医師によって、ケガの診断名がついた診断書を作成してもらい、その診断書を証拠とすることで、ケガがあることの証明が可能になるのです。
次に、被害者は、そのケガが“事故によって”生じたものであることも証明する必要があります。いわゆる因果関係の問題です。では、その因果関係の証明はどのようにするのでしょう。それは、“事故によってケガを負った”ということを医師に認めてもらうことも重要ですが、実務上は、事故が起きた日と、医師の診断日が近接していることがもっとも重視されています。
すなわち、事故が起きた日と医師の診断の日に期間のへだたりがあれば、そのケガが事故とは関係なく生じた可能性あるとみられてしまい、“事故によって”生じたケガであることの証明がされていないと判断されてしまう可能性が出てきてしまうのです。
それでは、その期間はどれくらいが目安なのでしょうか。自賠責保険は、事故から初診までの期間が2週間を過ぎると、ほぼ因果関係を否定する運用がされているようです。実際は、1週間期間が空いただけで因果関係が否定されてしまうケースもあります。
自賠責保険が因果関係を否定すると、任意保険会社も因果関係を否定することが通常ですし、裁判所も因果関係を否定する可能性が高くなってしまいます。
そうならないため、事故から5日以内に医師の診察を受けるべきと言えるでしょう。可能であれば、事故当日か、翌日には医師の診察を受けることが望ましいといえます。
ところで、事故に遭ってまず行くべきところは、病院ではなく、接骨院や整骨院などでもいいのでしょうか。もちろん、ケガの治療のためには、接骨院や整骨院も有効でしょう。ですが、先に述べた、“事故によってケガを負った”ことの証明をするという観点からは、接骨院や整骨院ではなく、病院に行く必要があります。それは、ケガの診断という医療行為ができるのは、法律上、医師に限られていますので、診断書という証拠を作成できるのも医師だけだからです。
なお、接骨院や整骨院の柔道整復師の証明書はケガがあることの証拠にならないのかということについては、昔から議論のあるところで、完全に否定されているわけではありません。しかし、実務上、医師が作成する診断書が非常に重要視されていますので、やはり医師による診断を受けるべきであるといえるでしょう。
2、ケガの種類や症状
交通事故によって生じるケガでもっとも多いのは、打撲や捻挫でしょう。
他には、皮膚や皮下組織が破壊される、裂傷、挫創、切創といったケガもあります。骨折をしたり、じん帯や腱(けん)に損傷を負うこともありますし、内臓の損傷、脳の組織やせき髄の損傷にまで至る重傷を負うこともあります。
打撲や捻挫の症状としては、患部に痛みが生じたり、患部が腫れたりするのが通常ですが、神経にも影響が出て、その神経の先にある部位にシビレが生じることもあります。
皮膚などの裂傷(れっしょう)、挫創(ざそう)、切創(せっそう)は、患部に痛みが生じることに加え、患部に醜状(しゅうじょう)という傷あとが残ることや、患部やそこにある神経の先にある部位へのシビレが生じることもあります。
骨折の場合は、患部の痛みだけでなく、骨折した部位を固定し、その固定した部位が関節だったときには、関節が固まってしまう「拘縮(こうしゅく)」という症状が生じることもあります。他にも、骨折に伴って付近の神経が傷つけられ、その先の部位へのシビレが生じたりします。
じん帯や腱(けん)が損傷すると、患部の痛みだけでなく、じん帯や腱(けん)が支えている関節がゆるくなってしまい、関節が異常な方向に動いてしまうこともあります。これを関節に動揺性が生じたといったりします。
その逆に、関節の周囲には関節包(かんせつほう)や滑膜(かつまく)といって、関節の動きにおける潤滑剤の役割をする関節液を蓄える組織がありますが、この関節包や滑膜が損傷されると、関節液がうまく関節内をめぐらず、潤滑剤としての機能が働かなくなり、関節がつっかえて曲げ伸ばしができなくなってしまうこともあります。
また、内臓の損傷の場合、内臓の機能低下が起きることがあります。脳やせき髄が損傷すれば、損傷した箇所からの指令がうまく送れず、思うように体を動かすことができない障害が生じたり、損傷した箇所の脳がつかさどる機能に応じて、記憶障害、発語障害、感情障害などが生じたりすることもあります。
このように、ケガの症状はさまざまですが、症状が後遺障害となって残らないように、治療とリハビリをしっかりすることが肝心です。
3、治療費はだれが負担するの?
治療を受けたとき、検査代、診察代、投薬代、リハビリ代などの治療費を医療機関に支払う必要があります。
このような治療費を支払うのはだれでしょうか?
原則的なことをいえば、医療機関の治療を受けたのは被害者本人ですので、医療機関に治療費を支払うべきは被害者本人です。しかし、その原因を作ったのは加害者ですので、最終的には、加害者や加害者が加入する保険会社がこれを負担する必要があります。そこで、加害者が保険に加入していれば、被害者が医療機関の窓口で治療費を負担することのないよう、保険会社が病院に直接支払ってくれることが通常です。
ですので、交通事故でケガを負った被害者は、加害者の加入する保険会社に対して、治療を受けた医療機関の名称と連絡先を伝え、治療費を直接医療機関に払ってもらうようにしてください。
ただし、保険会社が医療機関に直接払ってくれるのは、被害者側に事故の責任がほとんどない場合に限られています。被害者側に事故の責任が一定程度、具体的には3~4割以上の責任があるような場合には、保険会社が医療機関に直接払うのではなく、まずはいったん被害者が医療機関に治療費を支払います。そして、事後的に被害者が保険会社にその費用を支払うよう求めれば、保険会社から被害者に対し、加害者の過失割合に応じて支払われるという運用がされています。
4、治療費をもらうまでの流れ
加害者加入の任意保険会社が窓口となって、医療機関に直接治療費を払ってくれる場合は、被害者が治療費をもらう場面は出てきませんので、特にその流れを説明する必要はないでしょう。
そうでない場合、被害者は、治療にかかった費用を請求するとき、加害者加入の任意保険会社に対して治療費の領収書を郵送する必要があります。
また、加害者加入の任意保険会社ではなく、加害者加入の自賠責保険会社に対して被害者本人が直接請求するという方法もあります。
その場合にも、治療費の領収書を自賠責保険会社に郵送することで、治療費を払ってもらうことができます。
ですので、病院などの医療機関で治療を受け、その費用を支払ったときには、必ず受け取った領収書を保管するようにしてください。
任意保険会社やその連絡先は、加害者に聞いて教えてもらいましょう。自賠責保険会社は、自動車安全運転センターの各都道府県事務所が発行する交通事故証明書にも記載されていますので、加害者に聞けないときには、交通事故証明書を見るといいでしょう。
過失割合が争いになっているようなときには、加害者加入の保険会社が速やかに治療費を払ってくれない場合があります。また、加害者が保険に入っていないときには加害者に対して直接請求することもありますが、加害者に直接請求する場合には、素直に払ってくれないことも多いでしょう。そのような場合は、被害者が加入している自動車保険に、人身傷害補償保険が付帯されているかを確認するようにしましょう。人身傷害補償保険が付帯されていれば、加害者側からの支払いを受けられないときでも、自身の加入する保険会社が治療費を支払ってくれます。
また、医療機関で一時的にでも被害者が支払いをしなければならない状況になったとき、被害者は負担を感じることになるでしょう。そのようなときは、健康保険を使うようにしてください。健康保険を使うと、使わない場合に比べて医療機関が受け取ることのできる診療報酬の額が少なくなります(要するに、治療費の総額を低く抑えることができます)。さらに、健康保険を使うことで、被害者の窓口負担は原則として診療報酬の3割になり、7割を健康保険組合が負担することになります。そうなれば、被害者の負担はぐっと抑えることができるでしょう。
5、交通事故の被害に遭ったら弁護士に相談すべき理由
交通事故に遭ってケガをした場合、その先どのように物事が進んで行くのかについては、さまざまなパターンがあります。あるとき突如交通事故の被害者になったとき、先のことを見通し、どのような行動をとればいいかを判断することは大変難しいでしょう。
そんなとき、頼ってほしいのは弁護士です。交通事故案件の経験が豊富な弁護士であれば、事故後に被害者が直面する場面ごとにどのような選択をすることが適切か、いろいろなアドバイスをすることができます。
また、最終的な示談をするときにはケガを負わされたことに対する慰謝料を受け取ることができますが、弁護士が交渉にあたれば、慰謝料の増額交渉をすることもできます。
6、まとめ
事故に遭ってケガをしたときは、まずは治療に専念してください。そうはいっても、ケガは治るんだろうかとか、仕事はどうなるんだろうとか、ケガの補償はきちんと受けられるのだろうかとか、心配ごとがたくさん出てきてしまい、治療への専念どころではなくなってしまうこともあります。そんなとき、親身なサポートを受けることができれば、きっと心強い気持ちになり、前向きになれるはずです。
ベリーベスト法律事務所・水戸オフィスでは、被害者に寄り添ったサポートを心がけています。事故に遭って不安を感じたときには、ぜひ一度ご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています