「夫源病」を理由に離婚できる? 離婚したい場合にとるべき対応とは
- 離婚
- 夫源病
- 離婚
茨城県の発表によると、平成31年1月1日から令和元年12月31日の間に離婚した夫婦は、4664組でした。この数字を人口1000人当たりの離婚率にすると、1.66で全国平均の1.69より低い率です。
しかし実際に離婚には至っていなくても、夫と離婚したいと考えている妻も少なくありません。近年は、妻が離婚したいと考える理由として「夫源病」が挙げられることがあります。「夫源病」とはどのような病気なのでしょうか。また、果たして「夫源病」を理由とした離婚は認められるのでしょうか。
本コラムでは、夫源病が理由で離婚したい場合の対応について、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説します。
1、「夫源病」とは?
医学的な病名ではありませんが、近年「夫源病(ふげんびょう)」という言葉が一般的に使われるようになりました。
「夫源病」とは、夫がストレスの原因となって妻に生じる身体的・精神的な症状を言います。
具体的には、めまいや耳鳴りや動悸(どうき)などの身体的な症状が出る、強い不安感や憂鬱(ゆううつ)感に襲われるなどの精神的な症状が出ることもあります。更年期障害と似ている症状が出ることもありますが、「夫源病」はホルモンの変化ではなく夫がストレスになることが原因となって発症します。
「夫源病」は、夫が定年退職して長時間家にいるようになったなど生活環境が大きく変化する熟年層の妻に生じることが多いと言われています。しかし熟年層の妻に限らず、夫の帰宅や休暇で夫がいることをストレスに感じ、夫源病を発症する妻たちも見受けられます。
2、「夫源病」を理由に離婚はできる?
「夫源病」を夫婦の話し合いや別居などで解消・克服していけることが理想的ではあります。
しかし「夫源病」が深刻で、夫との関係が改善する見込みもない場合などには、離婚を考えることもあるでしょう。
「夫源病」を理由とした離婚は、夫が合意すれば可能です。
しかし夫が離婚に合意せず裁判で離婚の可否を判断してもらう場合には、「夫源病」だけを直接の理由とした場合には離婚が認められない可能性があります。
3、離婚が成立するまでの流れ
離婚したい場合は、話し合いによる「協議離婚」からスタートし、双方の離婚の同意が得られなければ最終的に「裁判離婚」で、相手に離婚を求めていくことになります。
-
(1)協議離婚
離婚は、夫婦が話し合いで合意し、離婚届を役所に提出できれば成立します。話し合いによって離婚に至ることを「協議離婚」と言います。
つまり夫婦が合意できれば、どのような理由であっても離婚できることになります。
そのため「夫源病」を理由に妻が離婚を切り出し、それに夫が応じれば離婚は成立します。
しかし、夫が離婚の話し合いに応じようとしない、離婚を拒否しているといった場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。 -
(2)調停離婚
離婚調停では、家庭裁判所で夫婦が調停委員を交えて話し合いを行います。離婚や離婚条件について合意できた場合には、強制力のある調停調書が作成されます。
一方、調停においても夫が離婚に合意しない場合には、家庭裁判所の審判が行われます。しかし、審判は当事者から異議申し立てがあれば、その効力は消滅し、裁判を提起して判決で離婚の可否を判断してもらうことになります。 -
(3)裁判離婚
離婚裁判では、離婚事由が法定離婚事由に該当すると裁判所が判断した場合にのみ、離婚が認められます。離婚裁判で離婚が認められれば、相手の同意がなくても離婚は成立します。
では、法定離婚事由とは、どのような理由が該当するのでしょうか。
次の章で、法定離婚事由について詳しく解説します。
4、裁判離婚が認められるための法定離婚事由とは
-
(1)法定離婚事由
裁判離婚が認められる法定離婚事由は、次の5つです。
●配偶者に不貞行為があったとき
夫が他の女性と不貞行為(不倫)をしていた場合です。
●配偶者から悪意で遺棄されたとき
「夫が勝手に家を出ていった」「夫から無理やり家を追い出された」「夫が生活費を渡さない」などのケースで該当する可能性があります。
●配偶者が3年以上生死不明のとき
夫が3年以上生存すらも分からず生死不明になっている場合です。
●配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき
●婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
夫がDV(ドメスティックバイオレンス)やモラハラを行う場合などが該当します。
なお、性格の不一致などその理由だけでは離婚事由にはなりにくくても、程度が極端で結婚生活に支障をきたしている場合や、他の理由と合わせて総合的に考慮した場合に「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」に該当すると判断されることもあります。 -
(2)「夫源病」で離婚したい場合の法定離婚事由とは
「夫源病」は、直接の法定離婚事由にはなりません。
該当する可能性があるのは「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」ですが、「重大な事由」を具体的に立証する必要があります。
夫源病の影には、モラハラやDVが隠れていることも少なくありません。夫源病を発症した原因を探ることで、立証できる可能性はあるでしょう。
5、「夫源病」が理由で離婚したい場合の対処法
-
(1)弁護士に相談する
離婚に際しては、離婚後のお金の問題が解決すべき問題となることが多いものです。
熟年層であれば、離婚した後に新たに仕事を探すのは難しいことが予想されます。年金分割や退職金なども含めて、どれくらいの金額をもらえるのかを算出しておくことが大切です。
弁護士は、離婚に際して請求できる金額の見込みを算出することができます。
また離婚を決断した場合には、代理人として夫と交渉する、調停や裁判になった場合は、法的に有利になる主張や立証を行っていきます。 -
(2)別居する
夫が離婚に応じない場合には、別居することもひとつの対処法です。
別居してお互いに距離をおいた場合に、「夫源病」が解決して夫との関係が修復されることも考えられます。
また離婚の意思が変わらない場合でも、長期の別居は「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」という法定離婚事由に該当すると認められる可能性があります。 -
(3)調停・裁判を申し立てる
夫に離婚を切り出しても離婚を拒否された場合には、前述したように離婚調停を申し立てる方法があります。当事者のみの話し合いでは決着がつかなかった場合でも、第三者を交えることで冷静に話し合いがもてるようになり、解決することもあります。
調停が不調に終わった場合には、最終的には裁判の判決で離婚の可否を判断してもらうことになります。
6、弁護士に離婚を相談するメリットとは
弁護士に離婚を相談するメリットには、主に次のようなものがあります。
-
(1)離婚事由として認められるかの見通しが分かる
弁護士は今までの裁判例などから、離婚の原因が離婚事由として裁判所に認められる可能性がどれぐらいあるかを判断できます。
裁判になった場合の見通しをもとに、夫と話し合えば早期に離婚が成立する可能性も期待できるでしょう。 -
(2)離婚に関するお金や子どもの問題などを解決できる
離婚の際には離婚の成立の可否だけでなく、財産分与や年金分割のお金の問題、養育する子どもがいる場合には養育費や親権などさまざまな問題が生じます。
弁護士は、これらの問題に法的な観点から対応し解決につなげることができます。 -
(3)代理人として交渉できる
夫源病の場合、夫と話したくない、顔も見たくないといった状況が多いでしょう。弁護士は、代理人として夫と離婚に関する交渉を進めることができます。
また、当事者ではない弁護士が交渉を行うことで冷静に話し合いが進み、協議離婚の段階で離婚に合意できることも少なくありません。 -
(4)離婚調停や離婚裁判で有利になるようサポートする
調停や裁判になると、あなたにとって不利益になるような主張が出てくることが予想されます。そういった状況において、弁護士は心強いパートナーになるでしょう。また、法的に有利になる主張や証拠を提出するといった活動でもサポートを行います。
7、まとめ
本コラムでは、夫源病が理由で離婚ができるのかと、離婚したい場合の対処法について解説しました。
夫が離婚に同意してくれない場合、夫源病だけを理由に離婚をすることは難しいでしょう。しかし、夫源病の影に法定離婚事由に該当する状況が隠れていることも少なくありません。
離婚問題は、ひとりで悩み続けても答えがでないことが多いので、一度弁護士へ相談してみることをおすすめします。弁護士から、法的知見に基づく客観的な意見を聞くことで、状況が整理され離婚への道筋が見えてくることを期待できるでしょう。
ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士は、ご相談者の気持ちに寄り添い離婚問題を解決できるように尽力いたします。土曜日の来所相談も受け付けておりますので、まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています