配偶者のギャンブル依存症が治らないことを理由に離婚できる?
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水戸市周辺には、多数のパチンコ店があります。少し足を延ばせば、城里町には競輪の場外車券売場「サテライト水戸」がありますし、ひたちなか市には競馬の場外馬券売場「オフトひたちなか」など、ギャンブルができる遊興場には事欠きません。またスマホでのソーシャルネットワークゲーム、いわゆる「ソシャゲ」の課金が止まらないという悩みも増加傾向にあるようです。
ギャンブル依存症になると、借金を抱えてまでギャンブルを続け、それによって家族に多大な負担や心労をかけてしまうこともあります。茨城県精神福祉保健センターでは、毎月第4月曜に、ギャンブル問題の家族教室を開催しています。もし、配偶者にギャンブル依存症の疑いがあれば、家族として支援できることももちろんあります。しかしながら、改善が望めなければ離婚を視野に入れることもやむを得ないでしょう。
ここでは、ギャンブル依存症からの回復の可能性や、離婚について水戸オフィスの弁護士が解説します。
1、ギャンブル依存性とは
ギャンブルやゲーム等をやめたくてもやめられない方は、「依存症」という病気を発症している可能性があります。
依存症は、本人がやめたいと思ってもやめられない脳の病気です。ギャンブルにのめり込むあまり、失職、借金などの金銭トラブル、家庭内暴力、自殺未遂などの問題を起こしてしまうことも考えられます。本人のみならず、家族がまきこまれ、実質的な被害を受けることは少なくありません。
公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会が運営するギャンブルポータルサイトによると、過去1年間のギャンブル経験で、以下のチェック項目に2つ以上「はい」と答えた場合は、ギャンブル依存症の危険性があるとされます。
ギャンブルをするときには予算や時間の制限を決めない、決めても守れない。
■Once Again
ギャンブルに勝ったときに、「次のギャンブルに使おう」と考える。
■Secret
ギャンブルをしたことを誰かに隠す。
■Take Monay Back
ギャンブルに負けたときに、すぐに取り戻したいと思う。
(引用:「ギャンブル依存症セルフチェック 合言葉はLOST」 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会)
2、ギャンブルへの依存から離脱する方法
もしも、配偶者がギャンブル依存症の可能性がある場合、どのように対処すべきでしょうか。
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(1)こんな対応は依存症を悪化させる
依存症のおそれがあるからといって、以下のような対応をすると症状をかえって悪化させることがあるので注意が必要です。
- 叱責や注意を繰り返す。
- 依存症が病気であることを認めず、本人の人格や意思の問題にする。
- ギャンブルをしないように監視する。
- 本人の借金を肩代わりする。ギャンブルのためのお金を用立てる
特に、お金を渡してしまうことはさらなる事態の悪化につながりかねません。安易に渡さないようにしましょう。
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(2)家族が取るべき対応
できる限り、物理的にギャンブルとの接点を減らす対策をとり、金銭管理を徹底しましょう。
たとえばガンなどの内臓疾患であれば、すぐに病院を頼るのではないでしょうか。ギャンブル依存症も同様です。家族だけで何とかしようとせず、なるべく早い時期から、公的機関や医療機関など第三者を頼り、早急に以下のような対応を行うことをおすすめします。- 公的機関や心療内科などを受診させ、病気であることを認識させる
- クレジットカードやキャッシュカードなどを持たせない
- 安易にお金を引き出せないように、パスワードを設定する。パスワードは本人に知らせない。
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(3)入院による環境調整
医師から指導を受けたうえで取り組んだ家庭での試みでは効果がない場合があるかもしれません。その場合は、入院やサポート施設への入所などの措置が必要となることもあります。
場合によっては、家族も依存状態に陥っているケースがあるようです。その際には、家族との適切な距離を取り戻し、ギャンブルから強制的に離れるための環境を用意するのです。
3、配偶者がギャンブルで借金を作った場合
ギャンブル依存症の恐ろしい点は、負けが続いても歯止めがきかず、借金などの金銭トラブルが起きやすいことでしょう。配偶者がギャンブル依存症によって借金を作ってしまった場合は、どう対処すべきでしょうか。
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(1)配偶者の借金を返す義務はない
金融機関や消費者金融などからお金を借りる際には、「個人」として契約を交わすことになります。そのため、本人が配偶者に隠れてギャンブル資金のために借金を膨らませてしまったとしても、原則としては配偶者に返済義務はありません。
ただし、配偶者の借金がすべて「ギャンブル資金」であるか否かの証明は難しいものです。生活費のために借金をしてもギャンブルに流用されてしまえば、婚姻期間中の生活費とみなされて夫婦双方に責任が発生する場合もあります。
もちろん、連帯保証人になっていれば、借金の使途にかかわらず共同で返済義務が生じます。 -
(2)借金の総額と借入先を把握し、返済方法を検討する
配偶者に借金がある様子が見受けられたら、「金額」、「借入先」、「返済期限」を把握しましょう。クレジットカードのリボ払いにも注意が必要です。
借金が多額に及んでいる場合は弁護士に依頼し、「債務整理」を行いましょう。ギャンブルによる借金であっても、任意整理によって無理のない返済額にすることも可能です。
4、ギャンブル依存症は離婚の理由になる?
配偶者がギャンブルにのめり込み、ギャンブル依存症になってしまった場合、離婚は認められるのでしょうか?
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(1)法定離婚事由に該当すれば可能
離婚は、双方の合意があればいつでも可能です。しかしながら相手が離婚を拒否している場合は、調停や裁判による離婚を申し立てることとなります。
民法第770条第1項には、裁判上の離婚について以下のように記載されています。
(裁判上の離婚)
第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。- 1.配偶者に不貞な行為があったとき。
- 2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
- 4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- 5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
その中で、ギャンブル依存性は「悪意の遺棄」や「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が当てはまる可能性が考えられます。
ギャンブルに入れ込むあまり、家族に必要な生活費を渡さない場合、「悪意の遺棄」に該当する場合があります。「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、さまざまな事情を含みますので、ギャンブル依存症もこれに該当する可能性はあります。
そのためには、ギャンブル依存症によって夫婦関係が破綻したとする経緯や、因果関係を証明する必要があるでしょう。
5、弁護士に相談するメリット
ギャンブル依存症によって、家庭に借金や暴力があるならば、配偶者と落ち着いて対応すること自体非常に難しいのではないでしょうか。弁護士に依頼して、事態を早期解決するためのサポートを受けることをおすすめします。
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(1)金銭トラブルの整理
弁護士に依頼し、任意整理・個人再生・自己破産などの債務整理でまずは金銭トラブルを解消することで、家庭にこれ以上被害が及ばないようにしましょう。
また、本人が借金としっかり向き合うことで、ギャンブル依存症の恐ろしさを自覚し、離脱を目指すことができるでしょう。 -
(2)依存症治療のサポート
良かれと思っての意見であっても、配偶者に対しては反発心が強く出てしまうこともあります。治療についても、弁護士など第三者にすすめられる方が、病院に足を向きやすいケースも少なくありません。
弁護士に依頼することで、早期にギャンブル依存症の専門医を受診したり、離脱のための会合に参加したりすることも期待できます。 -
(3)離婚手続きのサポート
あらゆる手を尽くしても、婚姻生活を継続することが著しく困難になってしまった場合は、離婚に向けて手続きをすすめていくこととなるでしょう。
協議離婚が可能だとしても、弁護士に依頼することをおすすめします。- 慰謝料
- マイホームや預貯金などの財産分与
- 借金の責任についての取り決め
- 子どもの親権や養育費
- 別居期間の婚姻費用の支払い など
これらの重要事項について、離婚協議書を作成し、強制執行認諾付き公正証書として取り交わすことをおすすめします。
調停や裁判での離婚であれば、弁護士の知見がさらに必要となるでしょう。
6、まとめ
配偶者がギャンブル依存症であれば、パートナーとしてなすべきことを模索する必要があります。それでも、依存症のために自分自身や子どもの人生を犠牲にする必要はありません。治療を拒むようであれば、これまで夫婦で築いた財産や親権について話し合い、整理した上で離婚を決断することも必要でしょう。
配偶者のギャンブル依存症にお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスまでご相談ください。債務整理や離婚問題など、さまざまな法律的な問題に対応した経験が豊富な弁護士が、状況に応じた適切なアドバイスを行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています