債務整理をすると、信用情報にはどんな影響が出る? 変わらないことはある?
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東京商工リサーチの調査によると、2021年中に茨城県内で発生した企業倒産(負債総額1000万円以上)は104件で、負債総額は108億8600万円でした。関東全体では2300件で、前年比18.2%の減少となっています。
こうした倒産のあおりを受け、職を失ってローンの返済が滞ってしまい、債務整理を検討している方もいらっしゃるかもしれません。債務整理をすると、個人信用情報機関に事故情報が登録されます。いわゆる「ブラックリストに載る」という状態で「信用情報に傷がついた」と表現されることもあります。
信用情報に傷がついたとしても、それまでの生活が一変してしまうわけではありません。今回は、債務整理によって信用情報に傷がついた場合の影響につき、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説します。信用情報とは何か、メリット・デメリットの両面を正しく理解したうえで、債務整理をするかどうか適切にご判断ください。
出典:「2021年(令和3年)の全国企業倒産6030件」(東京商工リサーチ)
1、「信用情報」とは?
債務整理をすると、「信用情報」に傷がついてしまいます。
まずは「信用情報」とは何かについて、基本的なポイントを整理しましょう。
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(1)個人信用情報機関のデータベースに記録された取引情報
信用情報とは、個人信用情報機関のデータベースに記録された、個人を主体とする取引に関する情報のことです。
金融機関やクレジットカード会社は、以下の3つのいずれかの個人信用情報機関に加盟しています。- ① 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
- ② 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- ③ 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
各金融機関・クレジットカード会社は、顧客とローンやカードに関する取引を行った際、契約内容や支払い状況などの情報を、個人信用情報機関のデータベースに登録します。
また、個人信用情報機関も独自に情報収集を行い、各個人が関与した取引に関する情報を、順次データベースに登録します。 -
(2)債務不履行や債務整理をすると「事故情報」が登録される
個人信用情報機関のデータベースには、対象者が契約上の債務をきちんと履行したかどうかに関する情報が登録されています。
もし期限どおりにお金を支払わなかったり(債務不履行)、債務整理をしたりすると、個人信用情報機関のデータベースに「事故情報(異動情報)」が登録されます。
したがって、登録された事故情報は、過去に債務不履行や債務整理があったことの証左となるのです。
各金融機関・クレジットカード会社は、与信審査の際に個人信用情報機関のデータベースを参照します。その際、事故情報が登録されていると、与信審査が通らずカードが利用できない可能性が高いので要注意です。 -
(3)事故情報の登録期間
債務整理に関する事故情報の登録期間は、任意整理の場合で5年間、個人再生・自己破産の場合で5年間または10年間です。
個人再生・自己破産については、官報情報の収集を行っているKSCのみ、登録期間が10年間となっています。
これに対してJICCとCICでは、官報情報の収集を現在行っていないため、登録期間は債務不履行や任意整理などと同じ5年間です。
2、信用情報に傷がついても、以前と変わらずできること
個人信用情報機関のデータベースが参照される機会は、かなり限定されています。そのため、債務整理によって信用情報に傷がついても、ほとんどのことは以前と変わらずできます。
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(1)仕事は変わらず続けられる|解雇されることもない
勤務先の会社は、従業員の信用情報を閲覧することはありません。また、仮に債務整理の事実が会社に伝わったとしても、それを理由に会社が従業員を解雇することは違法です。
したがって、債務整理によって信用情報に傷がついたとしても、仕事は以前と変わらず続けることができます。 -
(2)事業は続けられる|取締役にも再び就任可能
個人事業主や経営者の方は、債務整理の終了後も、以前と変わらず事業を続けることができます。
なお自己破産に限っては、破産手続開始の決定を受けたことが委任契約の終了事由とされているため(民法第653条第2号)、会社の取締役をいったん退任することになります。
しかし、その後に再度会社と委任契約を締結し、取締役に再び就任することは問題ありません。 -
(3)金融機関等が関与しない契約は、問題なく締結できる
信用情報を閲覧するのは、与信を行う金融機関やクレジットカード会社などに限られます。それ以外の会社や個人との間では、信用情報に傷がついた状態でも、問題なく契約を締結できます。
たとえば、携帯電話を新たに契約したり(端末本体の分割払いを除く)、賃貸物件への入居に関する契約をしたりすることも可能です。
3、信用情報に傷がつくとできなくなること
これに対して、金融機関・クレジットカード会社・保証会社などが関与する与信取引については、事故情報の登録期間中は行うことができないので注意が必要です。
具体的には、信用情報に傷がついた状態では、以下の取引ができなくなります。
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(1)新たにローンを組めなくなる
銀行や貸金業者がローン審査を行う際には、個人信用情報機関のデータベースを参照しています。
そのため、債務整理の事故情報が登録されている期間中は、原則として新たにローンを組むことができません。住宅ローン・カードローンなど、種類を問わずあらゆるローンが利用できなくなる点に注意しましょう。 -
(2)クレジットカードが利用できなくなる
クレジットカード会社も、カード利用契約を締結する際に、個人信用情報機関のデータベースを参照して与信審査を行っています。商品の購入から実際の精算までの間、利用者に信用を供与することになるからです。
したがって、債務整理によって事故情報が登録されると、登録期間中はクレジットカードを新たに作ることができません。
またクレジットカード会社は、契約後にも「途上与信」という審査を行っており、債務整理をした事実が途上与信で判明すると、カードが強制解約となってしまいます。
よって、契約済みか否かにかかわらず、債務整理をした後しばらくの間は、クレジットカードを利用できないと覚悟する必要があります。 -
(3)入居審査の際、保証委託ができなくなる
賃貸物件を借りる際には、賃料の支払いにつき、保証会社による連帯保証を求められる場合があります。
しかし、保証会社は個人信用情報機関のデータベースを参照して審査を行うため、事故情報が登録されている方の保証人にはなってくれません。
そのため、債務整理後に賃貸物件を借りる場合、保証会社による保証が不要な物件を選ぶ必要があります。
4、債務整理を行う主なメリット
新規ローンやクレジットカードなどを利用できなくなるデメリットはあっても、借金の負担に苦しむ方にとって、債務整理は大きな助けとなる可能性が高いです。
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(1)債務の負担を軽減できる
債務整理をすると、手続きによって内容の差はあれども、債務の負担をかなり軽減できる可能性があります。
任意整理の場合、利息・遅延損害金のカットや、月々の返済額の圧縮が期待できます。また、比較的多額の債務を負担している方であれば、個人再生をして大幅に債務を減額することも有力な選択肢です。
処分すべき財産が少ない場合には、自己破産をして債務全額を免除してもらうことが解決策になり得るでしょう。
債務者の状況に応じた適切な手続きを選択すれば、債務の負担を大幅に軽減し、生活を立て直すことができるでしょう。 -
(2)債権者からの取り立てをストップできる
弁護士に債務整理を依頼すると、すぐに債権者に対して受任通知を発送します。
受任通知の到達をもって、債務の取り立てに関する窓口はすべて弁護士に一本化されます。
銀行や貸金業者については、受任通知の受領(ずりょう)後、債務者に対する個別の取り立てが禁止されます。
弁護士による対応によって、債権者からの取り立てが止まり、平穏な生活を取り戻せる点が、債務整理の大きなメリットのひとつです。 -
(3)精神的な負担が軽減される
債務整理をすることで、借金生活から脱却するための道筋が具体的に見えてきます。
債権者からの取り立ても止まるため、時間をかけて生活再建のための方策を考えることもできます。ご自身の生活や収支を見直すことは、精神的な落ち着きを徐々に取り戻すきっかけにもなり得ます。
弁護士は、借金問題を克服するためのパートナーとして、債務者に寄り添い、解決に向けて尽力します。弁護士のサポートを得ながら債務整理を行えば、心の平穏を取り戻し、ストレスを大きく軽減することができるでしょう。
5、まとめ
債務整理をすると、信用情報機関のデータベースに事故情報が登録されます。事故情報の登録期間中は、新規ローンやクレジットカードなどが利用できなくなる点に注意が必要です。
このようなデメリットはあっても、適切な手続きを選択して債務整理を行えば、借金問題の抜本的な解決につながります。
ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスでは、お客さまのご状況に合った債務整理手続きをご提案し、借金問題を解決できるまで、親身に寄り添ってサポートいたします。多額の借金や多重債務にお悩みの方は、お早めに当事務所へご相談ください。
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