自己破産で損害賠償金の支払いもゼロになる? 免責可能な債務とは
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最高裁判所が発表した、令和元年に裁判所が受理した個人の自己破産申立件数は、7万3095件でした。クレジットカードのリボ払いなどの返済に苦しむ方も少なくありません。
そのような中、あなた自身が何らかの不法行為によって損害賠償の支払い義務を負ってしまうと、借金の返済が滞り生活が立ち行かなくなってしまうこともあるでしょう。そこで、自己破産を検討する方もいるでしょう。
本コラムでは、水戸オフィスの弁護士が、自己破産の概要や、自己破産で免責が認められる債務と認められない債務などについて解説します。借金を背負っているうえに、損害賠償請求を受けた方は参考にしてください。
1、自己破産とは?自己破産の概要と手続き
まずは、自己破産の概要と手続きについて知っておきましょう。
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(1)自己破産とは
自己破産は、債務の返済ができなくなった人が、裁判所に申し立てることにより開始される破産の手続きをいいます。自己破産の手続きにおいて免責が認められると、借金を返済する必要がなくなりますが、そのかわり財産も処分しなければなりません。預貯金だけでなく家や車などの高額な資産価値がある財産も処分の対象となります。
破産手続きが終了した後、債務を返済する責任から免れることを「免責」と言い、免責許可決定が下りれば借金の返済をする必要はなくなります。
ただし、すべての債務に免責が認められる訳ではありません。免責が認められる債務と認められない債務については後ほど詳しく説明します。 -
(2)自己破産の手続き方法
自己破産は、裁判所に申し立て行うことで手続きを進めます。自己破産には、同時廃止と少額管財の2つの種類があります。手持ちの財産の額や借金の原因、債権者の意向などによって、裁判所がどちらの方法で手続きを進めるのかを決定します。
簡単にいうと同時廃止は手続きが早く、3か月から4か月で完了することもあります。それに対して少額管財は、6か月以上の時間を要することもあります。どちらの手続きも、弁護士等に依頼すれば手続きを依頼できるうえ、督促も止まります。
なお、自分の力だけで、すべての手続きを行うのは難易度が高いかもしれません。なぜなら、自己破産を認めてもらうためには、申立書類を作成するだけでなく、裁判官との面接などの手続きが必要になるためです。
2、免責される債務の種類
次に、免責される債務の種類を説明します。一般的には以下のケースに該当する場合は免責が認められ借金の返済義務がなくなります。
•カードローンやキャッシングなど
銀行や消費者金融から借りたカードローンやキャッシングなどは自己破産の際に、ほぼ免責されます。
•クレジットカードの支払い
クレジットカードで買い物した際の支払いも、自己破産すれば免責されます。一括払いや分割払い、リボ払いなどが対象になります。
•個人間の借金
消費者金融や銀行、クレジットカード会社などの金融機関だけでなく個人間の借金も、免責される債務になります。
•滞納した家賃等
滞納家賃も、債務ですので自己破産で支払う必要がなくなります。ただし、家賃を踏み倒す形となりますので、その住居に住み続けることは難しいでしょう。
3、免責不可能な債務の種類
次に、自己破産しても返済を免れない債務の例を説明します。
免責されない債務とは、お金を支払う義務が残る形になるため、自己破産後も支払い続けなければなりません。ただし、自己破産によってそのほかの借金がゼロになれば、それらの返済に充てていたお金を返済に回すことができるでしょう。自己破産が認められる前に比べれば、負担は大きく軽減されるはずです。
•税金や罰金
所得税や住民税、国民健康保険料などの税金は、借金ではありません。税金の納付は国民の義務であることから、自己破産をしても支払いを免れることはできません。
ただし、税金等の支払いは、きちんと相談していれば柔軟に対応してもらえるものです。まずは放置せず、自治体の担当部署に連絡を取って支払い計画を相談してください。
•損害賠償金
交通事故や傷害事件、離婚などで請求された損害賠償金、慰謝料等は自己破産でも免責されない場合があります。
放置しておくと、財産の差し押さえなどの措置が取られます。自己破産によって財産がない状態であれば、給与等の差し押さえも視野に入れた対応がなされる可能性があります。
•養育費
離婚していて、子どもへの養育費を支払っている場合、自己破産しても養育費は免責されません。なぜなら養育費は子どもの生活費に当たるもので、特別な保護を与える必要があるからです。あなたに生活費が必要なように、子どもも生活費がなければ健全に育つことはできません。したがって、取り決めた金額を取り決めた期間支払い続ける必要があります。
ただし、転職や病気、リストラなどで収入が大きく変わった場合は、養育費を減額できる可能性があります。弁護士に相談してみましょう。
4、弁護士に自己破産を相談するメリットとは
前述のとおり、自己破産手続きは弁護士でなくても可能です。
しかし、確実に手間をかけることなく自己破産を行うためには弁護士への相談が最適と考えます。ここでは、弁護士に自己破産を依頼するメリットを解説します。
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(1)弁護士だけが代理人になれる
自己破産の手続きは弁護士だけでなく司法書士も対応可能ですが、実は司法書士は代理人になることはできません。書類の作成の代行は可能ですが、裁判官と面接は不可能です。つまり、司法書士が対応できる業務の範囲は弁護士と比べ限られているのです。
それに対して弁護士は、自己破産のすべての手続きを委任できます。自己破産の煩雑な手続きをすべて依頼したい方は、弁護士に依頼するのが良いでしょう。 -
(2) 弁護士に依頼し、受任通知を送り、それが債権者に届いた時点で、取り立てが一時的に止まる
自己破産に限ったことではありませんが、債務整理を弁護士に依頼し、債権者に送った受任通知が届いた時点で、一時的に借金の取り立てが止まります。
借金の返済で悩んでいる方の多くは、返済日の資金繰りや金融機関等からの連絡におびえて暮らしています。それらから解放されることは、自己破産を弁護士に依頼する最大のメリットといってもよいでしょう。 -
(3)借金以外の問題についても相談できる
弁護士は、借金問題以外の法律相談に応じることができます。
たとえば、損害賠償請求を受けている場合は、示談前であればその金額が妥当かどうかなどの判断も仰げますし、事情によっては代理人として交渉可能です。すでに示談が成立している場合でも、支払いを分割にしてもらうなどの交渉もできるでしょう。損害賠償請求で悩んでいる方、損害賠償金の返済が厳しい方は、借金問題ともに弁護士に相談すべきと考えます。 -
(4)自己破産で免責が認められやすくなる
前述のとおり、自己破産の手続きを通じて免責を認められるのは、原則、借金等の債権に限られます。もちろん、あなた自身にある損害賠償の支払い義務を免れることはできませんが、書類作成時や尋問などを、適切かつ正確に行わなければ、免責可能なはずの借金が残ってしまう可能性があります。それでは、自己破産をしても、新たにやり直すことができません。
正しく免責を受けるためにも、弁護士に依頼することをおすすめします。たとえば、過去にギャンブルや過度の浪費をしてしまった借金が残っているものの、今はまじめに仕事をしているのであれば、諦める必要はありません。すでにギャンブルや浪費をやめたこと、同じような事態にならないことを立証する家計簿などの資料や反省文を提出することで、裁判所の裁量で認められる可能性もあります。
新たな人生に踏み出す際、抱える荷物が少しでも楽になるよう、弁護士が力を尽くします。
5、まとめ
損害賠償金など、一部の債務については、自己破産で免責されません。ただし、それ以外の借金は免責できるケースが多いでしょう。
免責されて借金の返済義務から免れれば、損害賠償金の支払いのめどがたつはずです。まずは自己破産の申し立てを検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、自己破産の申立ては難しく、自分で行うと失敗する危険性があります。弁護士に手続きを依頼することで、取り立ても止まり、仕事などに集中できる環境を取り戻せるはずです。ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスでは自己破産の手続きや、借金に悩む方の相談を広く受け付けています。ひとりで悩まずお電話ください。必要な対策をアドバイスします。
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