野生動物を勝手に駆除するのは違法! 鳥獣保護管理法の概要と罰則
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水戸市のある茨城県では、野生化したアライグマによる農作物被害などの増加を受け、令和3年に「茨城県アライグマ防除実施方針」を策定し、令和6年8月現在もアライグマの捕獲を推進しています。しかし、だれでも自由に駆除できるものではなく、捕獲に必要な手続きが必要です。
アライグマのような特定外来生物だけでなく、野生動物の駆除に関しては、鳥獣保護法(正式通称鳥獣保護管理法)による規制があります。そのため、必要な許可を得ることなく無断で駆除をしてしまうと、場合によっては罰金などのペナルティーを受ける可能性もあります。
本コラムでは、野生動物を駆除する際の手続きや知らずに駆除してしまった場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説します。
1、野生動物の捕獲に関する法律|鳥獣保護管理法(旧称:鳥獣保護法)
野生動物の捕獲や駆除は、平成27年5月29日に完全施行した鳥獣保護管理法によって規制されています。
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(1)鳥獣保護管理法の目的
鳥獣保護管理法とは、正式名称を「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」といいます。かつては「鳥獣保護法」と呼ばれていた法律(正式名称「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」)をもとに制定されたものです。
鳥獣保護管理法では、生物多様性の確保、生活環境の保全、農林水産業の健全な発展という目的のもと、鳥獣の保護・管理を図るための事業の実施や猟具の使用に関する危険の防止などが定められています。 -
(2)鳥獣保護管理法の対象
鳥獣保護管理法の対象となる「鳥獣」とは、鳥類または哺乳類に属する野生動物と定義されています。
なお、鳥獣保護管理法80条によって、以下の鳥獣に関しては、鳥獣保護法の対象外とされています。- ニホンアシカ、アザラシ5種、・ジュゴン以外の海棲哺乳類
- いえネズミ(ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミ)
(参考:鳥獣保護管理法の概要(環境省))
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(3)鳥獣保護管理法の規制内容
鳥獣保護管理法では、鳥獣を捕獲または殺傷することおよび鳥類の卵を採取または損傷することを原則として禁止しています(鳥獣保護管理法8条)。
ただし、例外的に鳥獣の捕獲・殺傷、鳥類の卵の採取・損傷ができる場合があります。それが、「狩猟による捕獲」または「許可による捕獲」を行う場合です。
① 狩猟による捕獲
狩猟による捕獲とは、狩猟期間中に狩猟免許を所持して狩猟者登録を受けた方が法で定められた方法によって狩猟鳥獣(鳥類28種、獣類20種)を捕獲することをいいます。茨城県では、11月15日から2月15日が狩猟期間と定められていますので、その間の狩猟であれば、例外的に鳥獣を捕獲することが認められています。
② 許可による捕獲
許可による捕獲とは、鳥獣の管理目的(生活環境や農林水産業への被害防止)、鳥獣の保護目的、学術研究の目的などで必要がある場合に、環境大臣または都道府県知事(一部は市町村長)の許可を受けて鳥獣の捕獲をすることをいいます。
野生動物などによって畑の作物などが被害を受けており、防鳥網・防護柵の設置、忌避剤の散布、追い払いなどの防除対策を行っても被害を防止することができないと認められる場合には、許可を受けて鳥獣を捕獲することができます。
2、違反した時の罰則
鳥獣保護管理法に違反した場合には、違反した内容に応じて以下のような罰則が適用されます。
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(1)1年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 許可を得ることなく狩猟鳥獣以外の鳥獣を捕獲した場合
- 狩猟可能区域以外の区域または狩猟期間外の期間に狩猟鳥獣の捕獲をした場合
- 狩猟者登録をすることなく狩猟をした場合
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(2)6月以下の懲役または50万円以下の罰金
- 鳥獣の捕獲の許可条件に違反した場合
- 鳥獣捕獲の許可証や狩猟者登録証を他人に使用させた場合
- 他人の鳥獣捕獲の許可証や狩猟者登録証を使用した場合
- 対象狩猟鳥獣の捕獲の禁止または制限に違反した場合
- 指定猟法禁止区域内において指定猟法により鳥獣の捕獲をした場合
- 登録を受けずに対象狩猟鳥獣以外の鳥獣の飼養をした場合
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(3)50万円以下の罰金
- 指定猟法禁止区域内における捕獲の許可条件に違反をした場合
- 占有者の承諾を得ないで鳥獣の捕獲をした場合
- 登録鳥獣の譲受・引き受けの届出をせずまたは虚偽の届出をした場合
- 狩猟免許の条件に違反して狩猟をした場合
- 指定猟法許可証、販売許可証または承認証を他人に使用させた場合
- 他人の指定猟法許可証、販売許可証または承認証を使用した場合
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(4)30万円以下の罰金
- 狩猟許可証の不携帯または提示を拒否した場合
- 狩猟許可に係る捕獲の結果の報告をせず、または虚偽の報告をした場合
- 定猟法禁止区域の区域内に設置された標識を移転、汚損、毀損、除去した場合
- 認定鳥獣捕獲等事業者が軽微な変更をしたにもかかわらず届出をせず、または虚偽の届出をした場合
- 実地調査の立ち入りを拒み、または妨げた場合
- 狩猟者記章を着用しないで狩猟をした場合
- 表示をしないで猟具を使用して狩猟をした場合
- 認可を受けずに猟区管理規程を変更し、または猟区を廃止した場合
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(5)10万円以下の罰金
- 認定鳥獣捕獲等事業を廃止したにもかかわらず届出をせず、または虚偽の届出をした場合
3、許可の流れ
鳥獣保護管理法の許可による捕獲を行う場合の許可の流れは、以下のとおりです。
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(1)許可の申請
鳥獣保護管理法に基づく許可の申請は、都道府県知事などに対して、鳥獣捕獲等許可申請書を提出する方法によって行います。
許可を受けることができるのは、野生鳥獣による被害者または被害者から依頼を受けた方であって、狩猟免許を所持している方が対象となります。
ただし、例外的に、以下の要件に該当する場合には、狩猟免許を受けていない方であっても許可を得ることができます。- ① 小型の箱わな、つき網、手捕りによってアライグマ、ハクビシンなどの鳥獣を捕獲する場合
- ② 被害防止の目的で、巣の撤去などに伴ってカラス、ドバトなどの雛を捕獲などする場合
- ③ 農林業被害防止の目的で、農林業者が自己の事業地内において囲いわなを用いて、ニホンジカ、イノシシその他の鳥獣を捕獲する場合
- ④ 法人に対する許可については、以下の条件を全て満たす場合
・従事者に猟法の種類に応じた狩猟免許を所持する者が含まれること
・当該法人が従事者に対し、講習会を実施することによって捕獲技術、安全性などが確保されていると認められること
・免許を受けている者の監督下で免許を受けていない者が捕獲を行うこと
・当該法人が地域の関係者との間で十分な調整が行われていると認められること
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(2)審査
鳥獣捕獲等許可申請書の提出があった場合には、都道府県知事などによって策定された許可対象者、対象種・捕獲数、猟法、場所といった許可基準を満たすかどうかが審査されます。
許可にあたっては、許可申請書のほかに、申請時に提出のあった鳥獣の種類、被害の写真、捕まえる方法などの資料を踏まえたうえで、審査が行われます。 -
(3)許可および許可証の発行
申請者からの申請が許可基準を満たしていると判断される場合には、鳥獣捕獲の許可が行われます。都道府県知事などから鳥獣捕獲の許可を受けると許可証が発行されます。
発行された許可証は、鳥獣の捕獲の際に携帯することが義務付けられていますので、忘れずに携帯するようにしましょう。
また、許可証に記載されている有効期間が満了した場合には、その日から起算して30日を経過する日までに捕獲の結果を報告しなければなりません。
4、知らずに駆除してしまったら
鳥獣保護管理法による規制を知らずに、野生動物を駆除してしまった場合には、早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)鳥獣保護管理法違反により罰則を受ける可能性がある
鳥獣の駆除をするためには、狩猟による捕獲または許可による捕獲のいずれかによらなければ、鳥獣保護管理法違反に該当する可能性があります。
鳥獣保護管理法違反の疑いがあるとして、捜査機関による捜査が開始された場合には、警察から事情聴取のために出頭を求められることがあり、悪質なケースでは、逮捕・勾留によって身柄拘束を受ける可能性もあります。
軽微な事案に関しては、不起訴となれば特に罰則が適用されることはありませんが、悪質なケースでは、起訴されて1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。 -
(2)不安がある場合には弁護士に相談を
鳥獣の駆除をしたことによって、何らかの処罰をされるのではないかと不安を抱えている方は、早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。
弁護士に相談をすることによって、鳥獣保護管理法違反として立件される可能性や立件された場合の処罰の可能性などを知ることができます。実際に捜査の対象となっている方は、今後の具体的な流れや取り調べにあたっての注意点などをアドバイスしてもらうことによって、取り調べに対しても大きな不安なく臨むことができます。
鳥獣保護管理法違反によって起訴されるケースは、そこまで多くはありませんので、弁護士に相談をしながらしっかりと対策を検討するようにしましょう。
お問い合わせください。
5、まとめ
有害鳥獣が生活環境や農業に被害を引き起こしている場合であったとしても、捕獲許可を得ることなく野生動物を捕獲したり、駆除したりすることは鳥獣保管理法に違反する可能性があります。
また、鳥獣保護管理法に違反して野生動物を駆除してしまうと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という罰則の適用を受ける可能性がありますので、知らずに野生動物の駆除をしてしまったという場合には、早めに弁護士に相談をすることが大切です。
野生動物を勝手に駆除してしまい、警察などによる取り調べの対象になってしまったときは、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスまでお気軽にご相談ください。刑事事件についての知見が豊富な弁護士が、過剰に重すぎる罪が問われないよう力を尽くします。
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