独身の兄弟が亡くなった場合、相続順位はどうなるのか
- 遺産を受け取る方
- 相続順位
- 独身
茨城県が公表している人口に関する統計資料によると、世帯員が1人だけの単独世帯の数は、38万5760世帯にも及びます。平成22年には27万9780世帯、平成27年には31万8357世帯であったことからすると、年々単独世帯の方が増加傾向にあるのが伺えます。
単独世帯となる理由としては、配偶者と死別した、家族と別々に暮らしているなどさまざまな理由がありますが、独身もその理由の1つです。晩婚化が進んでおり、生涯未婚のままでいる方も増えていますので、独身のまま亡くなって相続が発生することも少なくありません。このように独身の方が亡くなった場合、誰が遺産を相続するのでしょうか。
今回は、独身の兄弟姉妹が亡くなった場合の相続順位と注意点について、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説します。
1、相続順位の決定方法の基本
相続順位をどのように決めるのかは、被相続人が遺言書を残していたかどうかによって異なってきます。以下では、遺言書の有無に応じた相続順位の決定方法を説明します。
-
(1)遺言書がある場合
被相続人が遺言書を残して亡くなった場合には、基本的には遺言書の内容に従って被相続人の遺産を分けることになります。
そのため、誰がどのような遺産を相続するかは、遺言書に従って決定することになります。
ただし、遺言書があったとしても、遺言書ですべての遺産の相続方法が記載されておらず、遺産の一部に漏れがある場合には、以下の「遺言書がない場合」の方法に従って、相続順位を決定していきます。 -
(2)遺言書がない場合
被相続人が遺言書を残さずに亡くなった場合には、被相続人の遺産は、相続人による遺産分割協議によって分けることになります。それにはまず、誰が相続人になるかを決めなければなりません。
相続人には順位があり、民法で以下のように規定されています。第1順位 被相続人の子どもなどの直系卑属 第2順位 被相続人の両親などの直系尊属 第3順位 被相続人の兄弟姉妹
相続順位には優劣が定められており、たとえば、第1順位の相続人がいる場合には、第2順位と第3順位の相続人は遺産を相続することができません。
同様に、第1順位の相続人がいないが第2順位の相続人がいる場合には、第3順位の相続人は遺産を相続することはできません。このように先順位の相続人が遺産相続では優先されることになります。
なお、被相続人に配偶者がいる場合には、その配偶者は常に相続人になります。
2、被相続人が独身の場合の法定相続人とは
では、被相続人が独身だった場合には、誰が法定相続人になるのでしょうか。
-
(1)被相続人が生涯独身であった場合
被相続人が生涯独身であった場合には、子どもがいませんので、被相続人の遺産は、第2順位の相続人または第3順位の相続人が相続します。
① 第2順位の相続人
第2順位の相続人は、被相続人の両親などの直系尊属です。被相続人の両親が健在である場合には、被相続人の両親がともに法定相続人になります。被相続人の父または母のどちらか一方がすでに亡くなっているという場合には、生存している父または母が単独で法定相続人になります。
被相続人の両親がともに亡くなっている場合でも、被相続人の祖父母が健在である場合には、被相続人の祖父母が法定相続人になります。
② 第3順位の相続人
第2順位の相続人がいない場合には、第3順位の相続人である被相続人の兄弟姉妹が法定相続人になります。兄弟姉妹が複数人いる場合には、兄弟姉妹の人数で按分した割合で遺産を分けることになります。
被相続人よりも先に兄弟姉妹が亡くなっており、子ども(甥・姪)がいる場合には、甥・姪が代襲相続によって法定相続人になります。なお、被相続人の甥・姪も亡くなっている場合、甥・姪に子どもがいるとしてもその子どもには相続権はありません。 -
(2)被相続人に離婚歴があり子どもがいる場合
被相続人が亡くなった当時独身であったとしても、過去に離婚歴があり、元配偶者との間に子どもがいる場合があります。
離婚した元配偶者は、法定相続人にはあたりませんが、被相続人の子どもは第1順位の相続人になりますので、被相続人の遺産を相続することができます。
被相続人よりも先に子どもが亡くなっており、子ども(孫)がいる場合には、孫が代襲相続によって法定相続人になります。
兄弟姉妹の相続とは異なり、第1順位の相続人の相続では再代襲相続も認められていますので、孫が亡くなり、ひ孫がいる場合にはひ孫が法定相続人になります。
3、相続手続きの流れ
独身者の遺産を相続する場合には、以下のような流れで進めていきます。
-
(1)遺言書の有無を調べる
被相続人が遺言書を残していたかどうかによって、相続順位や相続方法が異なってきます。そのため、まずは、被相続人が遺言書を残していたかどうかを調査します。
自筆証書遺言であれば自宅に保管していることもありますが、令和2年7月10日以降であれば法務局に保管していることもあります。また、公正証書遺言であれば公証役場で保管していますので、公証役場で検索をしてもらうとよいでしょう。
なお、独身者の場合には、自宅のどこに保管しているかわからずに見逃してしまうおそれもありますので、遺品整理をする際には注意して探すようにしましょう。 -
(2)相続人を調べる
遺言書がない場合には、被相続人の相続人が遺産を相続することになります。そこで、遺産分割の前提として誰が相続人にあたるかを調査する必要があります。相続人の調査は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得する方法で行うのが一般的です。
遺産分割協議では、相続人の1人でも欠いていた場合には、それ以外の相続人の同意があったとしても遺産分割協議は無効になってしまいますので、しっかりと調査することが大切です。 -
(3)相続財産を調べる
遺産分割協議の前提として、被相続人がどのような財産を持っていたのかを調査する必要があります。一緒に生活していた家族がいる場合には、どのような財産を持っていたのかについておおよその見当が付きますが、独身者の場合には手探りの状態で財産を探していかなければなりません。
自宅を整理して通帳やキャッシュカードが見つかった場合には、当該金融機関に口座の有無を照会することになりますが、そのような手掛かりがない場合には、被相続人の生活圏の金融機関にしらみつぶしに照会していくしかありません。
独身者の相続財産調査には、知識と経験が必要になりますので、相続問題の実績がある弁護士のサポートを受けながら進めていくのがよいでしょう。 -
(4)遺産分割協議をする
相続人調査と相続財産調査が完了した段階で、相続人による遺産分割協議を行います。遺産分割協議では、基本的には法定相続分に応じて被相続人の遺産を分けていくことになりますが、相続人全員の合意がある場合には、法定相続分とは異なる遺産の分け方も可能です。
遺産分割協議がまとまった場合には、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、各相続人が実印で押印するとともに、印鑑証明書を添付する必要があります。 -
(5)預貯金の払い戻し、相続登記などの相続手続き
遺産分割協議が成立した後は、遺産分割協議の内容に従って遺産を分けていくことになります。被相続人が預貯金を有していた場合には、金融機関で預貯金の払い戻し手続きを行うことになりますし、不動産を有していた場合には相続登記が必要になります。
4、独身の人が亡くなった場合の相続の注意点
独身の方が亡くなった場合の相続では、以下の点に注意が必要です。
-
(1)相続人がいない場合には特別縁故者が遺産を取得できる可能性がある
被相続人に相続人がいない場合や相続人がいたとしても全員が相続放棄をした場合には、被相続人の遺産は最終的には国庫に帰属することになります。
しかし、被相続人が独身であった場合には、身の回りの世話をしてくれた方がいることがあります。このような被相続人の療養看護に努めるなどの特別の縁故があった方については、家庭裁判所に申立てをすることによって被相続人の遺産を取得できる可能性があります。
ただし、特別縁故者に該当する可能性がある方は、当然に遺産を取得することができるというわけではありません。自ら相続財産管理人の選任申立や特別縁故者への財産分与の申立てなどの手続きを行っていく必要があります。 -
(2)兄弟姉妹が相続する場合には相続税が2割増し
被相続人の遺産が相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合には、相続税の申告が必要になります。
また、各相続人は、相続した遺産に応じた相続税を納める必要がありますが、被相続人の兄弟姉妹が相続することになった場合には、相続税が2割加算されることになる点に注意が必要です。
5、まとめ
独身の方が亡くなった場合には、相続財産調査などが困難なケースも多くあります。遺産に漏れがあった場合には、再度遺産分割協議を行わなければならないなどの負担が生じますので、確実に遺産分割の手続きを進めるためにも弁護士に相談をすることをおすすめします。
独身者の遺産相続でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています