残業代請求で有効な証拠とは? サービス業(美容・アパレル・スーパー)編

2018年12月13日
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残業代請求で有効な証拠とは? サービス業(美容・アパレル・スーパー)編

美容業界やアパレル業界、スーパーなどの小売業界では、慢性的な人手不足により働く方々が長時間残業を強いられていることがマスコミやメディアで報じられ、問題となっています。中には、残業代が支給されず、サービス残業をさせられているケースも珍しくありません。そのような場合には、残業代が発生していることの証拠を会社側に提示して、残業代請求を行うことが必要です。

この記事ではし、残業代請求に必要な書類や残業を立証するための証拠収集についてくわしくご紹介します。

1、残業代請求に利用する証拠を集めるための心構え

残業代を請求するときには、残業が発生した事実について証明するための証拠が必要です。近年はタイムカードで労務管理を行っていない企業も増加しているので、タイムカードに代わる証拠資料を数多く集めることが大切です。

  1. (1))証拠収集を上司や周りに気づかれないこと

    残業代請求を使用としていることが会社にバレた場合、上司などから嫌がらせを受けたり、社内で不利な立場に立たされるおそれもあります。そのため、残業に関する証拠を集めるときには、できるだけバレないように行動することが良いでしょう。

    たとえば、タイムカードが回収される前に人が少ない時間帯を見計らってスマートフォンで写真を撮影しておく打刻した時間が正しいものでなければ自分で出退勤の時間を手帳などに正確にメモしておくことなどが効果的です。

  2. (2)証拠は質のみならず量を重視する

    残業代請求を行う際は、提示する証拠の数が多ければ多いほど、残業をしたことを立証しやすくなります。

    タイムカードだけでなく、残業時間に上司や取引先とやり取りしたメールや上司による残業指示を受けた時の音声記録、終業後に行う社内研修や講習会に参加を強制する文書など、証拠となりそうなものは何でも記録・保管することをおすすめします。

  3. (3)証拠をどうしても集められなかった場合の対処法

    未払い残業代を請求したいと思っても、タイムカードなど証拠となるものがまったくない場合があります。

    そのような場合でも、会社には労務時間の管理が義務付けられているため、労働時間や賃金に関する書類は会社側が保管しているはずです。そのため、会社側に対して弁護士を通して証拠開示請求をすることができます。会社側が証拠資料を破棄したり改ざんしてしまうおそれがある場合は、裁判所を通して証拠保全の手続きをすることも視野に入れたほうがよいでしょう。いずれにせよ、証拠がどうしても見つからない場合は弁護士にお早めに相談されることをおすすめします。

2、残業代が発生している証拠になるもの、ならないもの

未払い残業代を請求する際には、できるだけ多くの証拠をそろえることで残業代を取り戻せる可能性は高くなります。ただ、その中では残業をしていた事実を示す証拠になるものとならないものがあるため。注意が必要です。

  1. (1)残業時間を示す証拠

    ・タイムカード
    タイムカードは、労働時間を客観的に証明できる有力な証拠のひとつです。タイムカードの原本が手に入ればベストですが、原本が入手できなければこっそりコピーを取ったりスマートフォンで写真を撮ったりしておくとよいでしょう。

    ・勤務時間を専用ソフトに打ち込んだときの画面
    近年は専用ソフトで社員の労働時間を管理する企業が増加していますが、その記録データも客観的な証拠になります。勤務時間を打ち込んだ画面のスクリーンショットを撮っておいたり、もしくはプリントアウトをしておいたりするとよいでしょう。

    ・メール
    上司からの残業を指示する旨のメールや、残業時間中に取引先などやりとりしていたメールの履歴があれば、証拠となり得ます。ただし、会社のアカウントから送信したメールでなければ残業とみなされない可能性がありますので注意が必要です。

  2. (2)労働条件が記載されている書類

    ・雇用契約書
    企業が労働者を雇用する際、労働時間や賃金などに関する条件を書面で明示したものが雇用契約書です。雇用契約書があれば、労働条件が一目瞭然でわかるので、何時から残業になるのか、また残業代はいくらになるのかがわかります。その他、労働条件通知書なども同様の効力を持つでしょう。

    ・給与明細
    給与明細は、給料の支給実態を明確に示す書類です。給与明細を見れば、いつから残業代が支払われていないかがわかりますし、残業代が支払われていない実態も把握できます。

    ・就業規則
    常時10人以上従業員を雇用している会社では、就業規則を作成して労働基準監督署長に届け出ることが義務づけられています。就業規則には絶対的明示事項として始業時間や終業時間、賃金の計算方法などを記載しなければなりません。そのため、就業規則を見れば労働条件がわかるのです。

  3. (3)これは残業代の発生を示す証拠になる?

    残業したことを示す資料の中には、証拠になるかどうか判断の分かれるものもあります。

    ・出退勤時間を記したメモ
    出退勤時間を書いた手帳やメモも、タイムカードと同様に働いた時間を示す立派な証拠になります。ただし、証拠としての信頼性を持たせるためには、出退勤時間を毎日正確にメモすることが大切です。一度にまとめて書いたメモは信頼性が低下するため、注意しましょう。

    ・SNSの投稿
    多くの人がSNSを活用するようになった昨今、その投稿内容も残業の証拠になる可能性があります。たとえば、残業が終わった後に「仕事がようやく終わった」「これから帰宅する」などの投稿をすると、その時間まで残業をしていたことがわかります。

    ・家族へのメール
    家族に「今から帰る」と知らせたメールやLINEも、残業していた時間や事実を示す証拠になり得ます。しかし、これだけだと証拠としては弱い可能性があるため、他の証拠資料で補強することも考えたほうがよいでしょう。

3、サービス業界と他の業界で残業代請求に違いはある?

理美容室やスーパーなどのサービス業界では、この業界ならではの未払い残業代の問題があります。ここでは、サービス業界での残業代請求に関する事情について見ていきましょう。

  1. (1)サービス業界で残業代請求を行う方法

    サービス業界では、長時間労働やサービス残業が深刻な問題となっています。
    大手の飲食チェーン店では、タイムカードを定時に打刻させて残業させる、固定残業代制を導入しそれを理由に残業代を支払わないなどの事例もあります。

    固定残業代制でも、あらかじめ定められた残業時間を超えれば、残業代の支給対象になります。そのため、日頃からタイムカードのコピーなどを取っておくようにしましょう。

  2. (2)美容業界でのカットや施術の練習時間も残業代請求の対象に

    美容業界では、技術を身につけるべく、勤務時間外にカットや施術の練習を行うことが当たり前になっています。

    「練習は業務ではない」との考え方もありますが、実際には練習をしなければ業務に就くことは難しいでしょう。そのため、勤務時間外に練習を行った時間も、残業代請求を行うことができると考えられているのです。

  3. (3)「店長」の肩書があっても残業代は請求できる

    近年、ファストフード店やコンビニエンスストアなどで、「名ばかり店長」をめぐる問題がクローズアップされています。
    「店長」「支店長」「マネージャー」などの肩書を持つ従業員は、管理職にあたるので残業代を支払う必要がないと考える会社もあります。
    しかし、そのような肩書を持っていても、実質的に会社経営に携わっている場合でなければ、他の従業員と同じように残業代の支払い対象となりますので、覚えておきましょう。

4、まとめ

未払い残業代を請求するには、残業していた事実を示す証拠の収集が不可欠です。タイムカードや入退室に使用するIDカードの記録などがあれば望ましいですが、残業時間を示すものであればひとまず確保しておくことをおすすめします。

「どうしても証拠が見つからず、残業代請求ができない」とお悩みの方がいらっしゃいましたら、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスまでご相談ください。当事務所の弁護士がお話を伺ったうえで証拠収集の方法についてアドバイスをいたします。また必要に応じて会社側に証拠開示請求をしたり、裁判所へ証拠保全の申し立ても行います。

残業代請求は、時効との関係上、早め早めに動くことが大切です。一人で思い悩んでしまう前に、まずはベリーベスト法律事務所 水戸オフィスまでご来所ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています