サービス業(アパレル)で残業代請求するときの計算方法を解説

2018年09月26日
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サービス業(アパレル)で残業代請求するときの計算方法を解説

納豆で有名な茨城県水戸市は一大都市圏を形成しており、サービス業に従事する方々は日々忙しくされていることでしょう。

ただ、サービス業では、残業代の未払い問題が毎日のように生じています。タイムカードは定時に打刻するものの、その後も仕事を続けているといった方も多いかもれません。そこで、実際に未払い残業代を請求するにあたり、未払いになっている金額について計算することが必要です。その計算の仕方についてみていきましょう。

1、一般的な残業代の計算方法

各会社では、就業規則で「所定労働時間」が定められています。所定労働時間を超えて働くと、残業したことになり残業代が支払われます。まずはその計算方法について見ていきましょう。

  1. (1)残業代の計算式

    一般的な時給制の勤務体系の場合、残業代は以下の数式を使って計算することができます。

    • 残業代=1時間あたりの基礎賃金(時間単価)×残業時間×割増率


    労働時間が労働基準法で定められている1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えた場合、残業代は25%上乗せして計算されます。これを「割増賃金」と言います。

    残業した時間が22時~翌5時の場合、割増率はさらに25%を上乗せした50%となります。

    また、法定労働時間を超えて働いた時間が月60時間を超えた場合も、割増率を50%とすることも労働基準法で各会社に義務付けられています。ただし、中小事業主(資本金の額又は出資総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする場合は5000万円、卸売業を主たる事業とする場合は1億円)以下である事業主及び常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主)に関しては、今のところそのルールが免除されていることも知っておいた方がよいでしょう。

  2. (2)残業時間を算出する

    残業代を正しく計算するには、まずは正確な残業時間を算出することが大切です。残業時間とは、所定労働時間を超えて働いた時間のことを指しますが、働いた時間が法定労働時間を超えるか否かによって、残業代にかかる割増率が異なります。

    残業には2種類あり、法定労働時間内に収まるものは法内残業、法定労働時間を超える部分は法外残業(時間外労働)と区別されます。

    そのほか、労働基準法では企業が社員へ与えるべき法定休日が規定されており、週に1日、あるいは4週のうちに4日の休日がなければなりません。この法定休日に出勤した場合は「休日労働」となり、時間の長短を問わずすべての労働時間が割増賃金の対象になります。

    残業時間が法内残業におさまっている場合、原則として割増率は適用されません。一方、法外残業(時間外労働)の割増率は25%(深夜残業の場合は50%)、休日労働の割増率は35%となるので、覚えておきましょう。

  3. (3)基礎賃金を計算する

    残業代の計算には、1時間あたりの基礎賃金が用いられます。アルバイト・パートなど時給制で働いている方であれば時給金額がそのまま計算に使えますが、正社員として働いている方は月給制で働いている方の方が多いと思いますので、基礎賃金の考え方を知っておきましょう。

    基礎賃金は、普段支給されている給与から労働基準法で定められている一部の手当や賃金を差し引いたものです。ここでいう「一部の手当や賃金」とは、以下のものを指します。

    • 通勤手当
    • 家族手当
    • 住宅手当
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 臨時に支払われた賃金(結婚手当等)
    • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナスなど)


    ただし、上記の手当等にあたらない地域手当・役職手当・資格手当などは、基礎賃金に含まれますので注意が必要です。

2、変形労働時間制の残業代の計算方法

サービス業では、お盆休みや年末年始など、会社勤めの方が休暇になるときは忙しい一方、普段の平日はあまり忙しくないことがあります。また、月末月初が繁忙期になり、月の半ばには業務が落ち着くという会社も多いでしょう。そのような場合に、労働時間を調節できるのが「変形労働時間制」です。

  1. (1)変形労働時間制とは

    変形労働時間制とは、あらかじめ就業規則等で定めた期間内に限り、1週間の平均労働時間を40時間以内におさめることで、「1日8時間・週40時間」という労働時間の規制が免除される制度です。

    しかし、だからといって変形労働時間制は残業代を支払わなくても良い制度ではありません。1日・1週間・変形期間それぞれの期間で労働時間が一定の時間を超えた場合には、残業代が支払われることになります。

  2. (2)残業時間の考え方

    変形労働時間制では、勤務時間が1日8時間を超えたからと言って8時間を超えた部分が残業時間になるとは限りません。変形労働時間制での残業時間の考え方は、おおむね以下のようになります。

    ①1日についての残業時間

    • 所定労働時間が8時間を超える日の場合は、その『所定労働時間を超えて』労働した場合
    • それ以外の日は、8時間を超えた時間


    ②1週間についての残業時間

    • 所定労働時間が40時間を超える週は、所定労働時間を超えた時間
    • それ以外の週は、40時間を超えた時間


    ③変形期間の全期間についての残業時間

    • 変形期間における法定労働時間の総枠を超えた時間
  3. (3)変形労働時間制を採用している会社で残業代を請求する方法

    変形労働時間制の会社で働いている場合でも、労働時間が一定の時間を超えたら残業となり、残業代が支払われる対象となります。しかし、「うちは変形労働時間制を採用しているから、従業員に残業代は出さなくてよい」と考えている経営者もまだまだ多いのが実情です。

    変形労働時間制を実施するには、使用者が労働組合もしくは労働者の過半数を代表する者と労使協定を締結し、労働基準監督署に提出するなどの厳格な要件が必要となりますが、所定の要件を満たさないまま実施している会社も少なくありません。

    変形労働時間制を採用している会社で未払い残業代を請求するためには、残業時間を正確に算出したうえで残業代を計算することが必要です。しかし、変形労働時間制ではどの時間が残業時間にあたるかを把握することは、法律に明るくない方にはかなり難しい作業になります。そのため、未払い残業代の請求を行うときには、法律の専門家である弁護士などに相談されることをおすすめします。

3、こんな時間も残業時間になる

所定労働時間外に職場で過ごしていても、原則として仕事(労働)をしていなければ残業時間にはなりません。しかし、実務上は労働にはあたらないと考えられていても、実は労働にあたり残業代の支払い対象になるケースがあるのです。

  1. (1)「端数」として残業時間とみなされなかった時間

    残業時間を計算するときに、15分単位、30分単位などのキリの良い単位で時間を区切っている企業は少なくありません。しかし、残業時間は原則として1分毎に計算することが必要です。
    ただし、残業時間を1分毎に計算したうえで1ヶ月の残業時間に30分間未満の端数が出るときは、30分間未満の部分を切り捨てて計算することが行政解釈上認められています。

  2. (2)電話番や留守番をしている時間

    休憩中誰もいないときにちょうど電話がかかってきた場合、来客があったときにはやむを得ず対応しなければならないこともあるでしょう。このように、電話番や留守番をしている時間は労働から解放されているわけではないので、労働時間にあたるとされています。

  3. (3)終業後の接待や懇親会

    仕事が終わってから、取引先の関係者を接待したり、懇親会に出席したりしなければならないこともあります。このようなケースでは、会社や上司から参加を強制されていれば、残業時間として認められます。

4、まとめ

「未払い残業代がある」と考えられる場合には、まずは残業時間を正確に把握したうえで残業代を計算する必要があります。しかし、法律をよく知らない方が残業時間や残業代を正確に算出することは大変難しいと言えるでしょう。

そのため、「未払い残業代を会社に請求したい」とお考えの場合は、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスへご相談ください。弁護士がお話を伺ったうえで、証拠資料から残業時間を把握し、お客様に合った最適な解決プランをご提案いたします。

一人で悩まずに、まずはお気軽にご相談ください。弁護士がお話を伺ったうえで、証拠資料から残業時間を把握し、お客様に合った最適な解決プランをご提案いたします。残業代請求に関する手続きや交渉も弁護士にお任せいただければ、相手方からより満額に近い金額を獲得できる可能性も高まります。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています