会社が退職させてくれない! 在職強要にあったときの相談先

2023年09月21日
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会社が退職させてくれない! 在職強要にあったときの相談先

茨城労働局が公表する「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、自己都合退職についての相談は1018件もあったとのことです。昨今から叫ばれている人材不足の影響か、退職の意向を伝えても退職させてくれないケースがあるのかもしれません。なかには、損害賠償請求をほめのかしてまで退職を阻もうとする企業もあるようですが、果たしてそれらは適法な行為なのでしょうか。

本コラムでは、会社が退職させてくれないという悩みを抱えている方に向けて、どのように対処するべきか、どうすれば法的に問題なく退職ができるかなども含め、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説します。

1、退職は労働者の自由

大原則として、労働者には憲法第22条1項で保障された職業選択の自由があります。したがって、基本的には労働者は退職が自由にできますが、労働契約の内容によっては退職に条件がある場合もあります。順に見ていきましょう。

  1. (1)契約期間の定めがない場合

    一般的な正社員は、「契約期間の定めがない労働契約」を結んでいることになります。この場合、労働者は民法第627条1項により退職の2週間前に会社に辞職を申し出ればよいことになっています。

    会社側は労働者からの退職の申し出を拒否できません。また、使用者の承諾を得る必要もありません。

    なお、年俸制や月給制であることを理由に「3か月前からの申請でなければ退職は認めない」と告げられてしまうことがあるかもしれません。確かに、民法第627条3項では、「6か月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、3か月前にしなければならない。」と規定されています。しかしこの規定は、使用者(会社)側が労働者へ労働契約の解除をしたいと考えたときに、守らなければならない期限です。したがって、年俸制や月給制であっても、辞めたい日の2週間前までに退職を申し出れば、法律上問題なく退職できるということになります。

  2. (2)契約期間の定めがある場合

    3か月間や、1年間などの契約期間が定められている雇用契約の場合は、雇用期間が終了するまでは原則として退職することはできません。

    ただし、ケガをして入院し働くことができないなどのやむをえない事情がある場合は、民法第628条にもとづき、契約期間中の退職が認められることもあります。
    契約期間が終了した後に更新しないことも可能ですので、就業規則などをよく確認し、円満な退職を目指しましょう。

2、悪質な退職引き留めのケース

労働基準法により、労働者の意思に反して労働を強制することは禁止されていますが、会社はあの手この手で労働者を引き留めようとする場合もあるでしょう。ここでは、代表的な引き留めのパターンをご紹介します。

●損害賠償を請求すると脅す
会社から「辞めるなら損害賠償請求する」と脅されるケースがあります。
会社が損害賠償請求をすることは違法ではないですが、かといって、それが裁判所から認められるケースは、多くはありません。しかし、会社に訴えられたと脅された場合、ひとりで冷静に対処することは難しいと思いますので、弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

●退職の書類を作成しない
退職したのち失業保険をもらう場合には、離職票が必要です。また、保険の切り替えなどで会社側が作成する書類が必要となることがあります。

これらを作成せず、退職を阻止しようとするケースがありますが、その場合はハローワークに相談して、離職票を交付してもらう手続きを取りましょう。

●退職届を受理しない
労働者が会社に退職届を提出しても、会社が「退職届は受け取れない」「退職届は保留にする」などと受理してくれない場合があります。
そのようなときは、内容証明郵便で退職通知を送り、意思表示をはっきりとしましょう。

●勤務最終月の給料を払わない
会社に退職の旨を伝えると「今月の給料は支払わない」といわれるケースもあります。しかし、会社には労働者の労務に対して給料を支払う義務があるため、勤務最終月の給与を払わないことは認められません。

未払い給与が発生した場合のためにも、タイムカードなど、働いた証拠となる書類を保存しておくようにしましょう。

3、在職強要にあった場合の相談先

前述したように、会社はさまざまな方法で退職を阻もうとしてきます。労働者ひとりでは弱い立場ですので、問題解決のためには早めに専門の機関に相談することが重要です。ここでは、退職問題が起こった際に頼れる代表的な相談先をご紹介しましょう。

  1. (1)労働基準監督署

    労働基準監督署は、企業が労働基準法を守っているか監督する役割を担う行政機関です。労働基準監督署の調査の結果、会社が違法な在職強要をしていると判断された場合は、企業に指導勧告を行ってもらえるケースもあります。

    この他、労働基準監督署の管轄ではない問題の場合は、状況改善のためのアドバイスや、適切な相談窓口の案内をしてもらえます。相談をする場合には、まず勤務地の所在地を管轄する労働基準監督署がどこかを調べましょう。そして、直接訪問をする、署の直通電話・総合労働相談コーナーへ電話するといった方法で相談します。

  2. (2)都道府県の労働局

    労働局は各都道府県に設置されている国の機関で、労働基準監督署の上に立っています。各労働局では、「都道府県労働局長による助言・指導」や「紛争調整委員会によるあっせん」など、会社と従業員の間で起こった労働問題の、解決のための制度を設けています。

    どちらの場合も、まずはお住まいの地域の総合労働相談コーナーで相談することが必要になります。

4、退職トラブルを弁護士に依頼するメリット

前述した機関に相談することも有用ですが、退職に関するトラブルは弁護士に相談することで、早期解決の可能性が高くなります。ここでは、弁護士に依頼するメリットとデメリットをお伝えします。

●交渉のストレスを軽減できる
退職を決意した会社と交渉することは、精神的に大きな負担となるでしょう。弁護士に依頼すれば、代理人として会社と退職について交渉してもらえるため、ストレスの大きな軽減になります。

●会社側の違法性を指摘できる
会社側が労働者に在職強要をする場合、一見それらしく法律論を労働者に押し付けるかもしれません。しかし、その主張は違法であったり、会社に有利に解釈した内容であったりします。

労働者の法律知識が乏しい場合は、会社側の主張が正当なものかどうかを判断することができずに、説き伏せられてしまうことがあるかもしれません。しかし、弁護士ならば、会社の主張の間違いを、法的な根拠にもとづいて指摘することができます。

●他の労働問題も解決できる可能性がある
在職強要を行うような会社の場合、在職強要以外にもパワハラやセクハラ・残業代の未払いなど多くの労働問題を抱えている場合もあります。退職トラブルの相談を機に、他の違法な労働問題についても交渉をすすめられるでしょう。

5、まとめ

ここでは、在職強要を受けた場合の違法性や、相談先について解説してきました。

労働者には退職の自由が認められており、会社側からの一方的な在職強要は違法になります。しかし、会社と労働者にはもともと大きな力の差があり、ひとりで会社に抵抗することは困難です。そのため、労働者を守るために多くの制度が用意されていますが、労働者が自力でそれらの情報を集めて使いこなすことは難しいでしょう。

ひとりで思い悩むより、できるだけ早い段階で専門機関や弁護士に相談することをおすすめします。

退職トラブルでお悩みの方はベリーベスト法律事務所 水戸オフィスにぜひお気軽にご相談ください。労働問題の解決経験豊富な弁護士が全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています