不当解雇されそう! 少しでも多く解決金を受け取るためにすべきこと
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日本労働組合総連合会茨城県連合会(連合茨城)は、7月9日から8月末までの緊急労働相談の中間報告で、解雇・退職強要などに関する相談が最も多いと発表しました。
企業が従業員を解雇する場合、労働契約法に従い、合理的な理由が伴っていなければいけません。
そのため、もし納得できない理由で解雇された場合、不当解雇として無効を求めれば、撤回してもらえる可能性があるでしょう。場合によっては、慰謝料を含めた解決金を手に入れることもできます。
本記事では、不当解雇における解決金を、少しでも多く受け取るためにすべきことを、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説しています。泣き寝入りしない術を身につける参考としてください。
1、会社から辞めてほしいと言われたらすべきこと
会社から辞めてほしいと言われてしまった……。このとき、従業員として行っておきたいことは、次のふたつです。
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(1)解雇が正当かどうか確認する
解雇は、労働契約法第16条によって、合理的な理由がなく、かつ社会通念上相当であると認められないときは無効、と規定されています。そのため、まずは客観的に見て、その解雇が正当かどうか確認することが大切です。
解雇の正当性は、その解雇が普通解雇、懲戒解雇、整理解雇のいずれに当てはまるのか確かめると判断しやすくなります。
普通解雇は、遅刻や成績不足など労働者に要因があるときに行われることが多い解雇です。懲戒解雇は、犯罪やそれに近い悪質な行為で会社に損害をもたらしたときに行われる解雇を言います。一方で、整理解雇は、営業不振など会社の事情で人員整理が必要になったときに行われる解雇のことです。
普通解雇や懲戒解雇の正当性は、その理由が事実に基づいているかどうかや、本当に労働者側に原因があるのかが焦点となります。たとえば、成績が芳しくないことを理由に解雇が言い渡されたとしましょう。このとき、成績が客観的に見て悪いかどうかだけでなく、会社が教育やサポートを十分に行ったかなども重要な判断材料となります。
整理解雇は、その理由が本当かどうかはもちろん、会社としてしかるべき努力をしたのかが焦点となります。
企業は、整理解雇を実行する前に、たとえば人事異動やボーナスカットをするなど解雇を回避するように努めることが求められます。また、解雇をする労働者を客観的な理由をもって選定すること、労働者や労働組合に前もって整理解雇の必要性を説明することなどが求められます。これらをしていない場合、整理解雇が無効となる可能性が高まります。 -
(2)退職届にサインをしない
退職届にサインをしてしまうと、その時点で解雇ではなくなり、自己都合による退職と捉えられてしまう可能性が高くなります。解雇の不当性を問うことが難しくなるので、サインを強要されたとしても毅然(きぜん)とした態度で断るようにしましょう。
また、雇用保険による失業給付の内容も、解雇(会社都合による退職)より不利になっています。たとえば、お金がもらえるタイミングが待機期間7日に、給付制限期間3か月に加えた期間以後となります。令和2年10月1日以降で、かつ5年間で2回以内の自己都合退職なら、7日+2か月で受け取れますが、会社都合による退職よりは時間がかかります。
ほかにも、解雇なら失業給付の支給日数が最大330日間のところ、自己都合による退職だと最大で150日間です。
2、不当解雇の可能性が高いときとるべき対応
会社からの解雇が、法律に違反している可能性が高いと思ったら、以下の行動を取るようにしましょう。
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(1)解雇理由証明書を請求する
解雇理由証明書は、どんな理由で解雇されたのかを示した書類です。解雇の正当性を検証する上で最も重要な書類となるので、速やかに請求するようにしましょう。
なお、解雇理由証明書の発行は、労働基準法第22条第1項で義務づけられています。労働者の申し出に対して断る、無視するといったことは違法です。 -
(2)証拠を集める
解雇の不当性を認めてもらうためには、解雇理由がおかしいことを示す証拠も必要です。
たとえば、勤務態度の悪さが原因とされているなら、業務中に送受信したメールのやり取り、業務日報、人事評価表など、自分の仕事ぶりがわかる証拠を中心に集めます。会社の業績が落ちていることが原因なら、会社の業績が示されたものや、会社が解雇をしない努力義務をしているかどうかがわかる資料を集めるといいでしょう。
これ以外に、経営者や上司による退職勧奨を記録したボイスメモ、解雇通知書なども有効です。
また、不当解雇案件では、残業代請求を一緒に行うケースがよく見られます。未払いの残業代が発生しているなら、タイムカードやパソコンのログイン時間がわかるもの、給与明細、雇用契約書、就業規則などもそろえるといいでしょう。
3、不当解雇の際に支払われる解決金とは
解決金は、トラブルが起こったときに、一方が早期解決のためにもう一方に支払うお金です。和解金、示談金とも言います。
解決金の金額は個別事情によりさまざまですが、基本的に解雇の不当性が証明されればされるほど高額になり、正当な理由がまったくない場合は1年分以上支払われることもあるでしょう。
4、交渉は弁護士に委任したほうがよい理由
不当解雇における交渉は、個人で行うことも可能です。しかし、特別な事情がないかぎり、弁護士に委任したほうがいいでしょう。最後に、その理由をご紹介しますので、弁護士に依頼するメリットを知る参考としてください。
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(1)個人だと証拠が集めにくいから
解雇の場合、不当性を示す証拠の多くが会社にあります。そのため、会社に提示を求める必要が出てきますが、会社によっては請求に応じてくれない可能性があります。しかし、弁護士が交渉すれば、トラブルが大きくなることを恐れて、すんなり証拠を提示してくれる会社も珍しくありません。
また、会社が応じなかった場合の手だてには、直接交渉する以外に証拠保全手続き(裁判所を通して証拠を開示してもらう手続き)などがあります。手続きには事前に申立書の作成や、なぜ手続きが必要なのかの説明が必要ですが、弁護士ならその代行も可能です。 -
(2)使用者と適宜交渉する必要があるから
弁護士に委任すれば、会社との交渉をすべて弁護士に任せることが可能です。
弁護士ならどんな証拠が必要なのか、どのように交渉を進めればいいのか熟知しています。解決金はどの程度不当性を証明できるかによって金額が変わるものです。弁護士にお願いすれば、自分で交渉したときよりも高い解決金が期待できるでしょう。 -
(3)法律に関する専門的な知識が必要になるから
解決金を得るには、裁判所に、解雇の不当性を認めてもらわなければいけません。そのための方法には労働審判手続や訴訟手続があります。
●労働審判手続とは
労働審判手続とは、個別の労働紛争を、裁判官や専門家の力を借りながら解決に持っていく手続です。具体的には、当事者と、労働審判官(裁判官)1名および労働審判員2名が同じ場に集まり、交渉(審理)を進めます。審理は原則3回以内と決まっていて、その間に労働審判官や労働審判員は話し合いによる解決(調停)を持ちかけます。
3回の審理で調停に至らなかった場合、労働審判官や労働審判員によって解決策が提示されます。これが労働審判です。労働審判に対して双方が異議を唱えなかった場合、審判内容は確定し、法的な効力(応じなかった場合は差し押さえができるなど)を持ちます。一方、どちらかが異議を申し立てた場合、労働審判は失効して訴訟手続へと移ります。
●訴訟手続とは
訴訟手続は、法廷の中で、より厳格な決まりに従いながら事実関係や法律についての主張を行い、権利の有無などを明らかにする手続です。自分の主張を裁判官に理解してもらうために、的確な証拠の提示と説明を繰り返さなければいけません。労働審判手続が数か月で終わるのに対し、訴訟手続は1~2年以上時間がかかることも少なくありません。
労働審判手続にしても訴訟手続にしても、解雇の不当性を認めてもらうには、自分の主張に客観性が伴っていること、かつそれを正確に伝えることが要求されます。個人で行うのは精神的にも時間的にも負担が大きいため、解決金を強く望むなら弁護士に依頼したほうがいいでしょう。
5、まとめ
不当解雇での解決金獲得を目指す場合、会社の違法性を証明するために、相応の準備をしなければいけません。加えて、会社や裁判官に理解してもらえるように主張する交渉力も必要です。
ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士なら、これから何をしたらいいのか労働者にアドバイスしたり、専門的な知識が必要になる部分を代行したりできます。お困りでしたら、お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています