子どもが学校で怪我をしたら賠償責任を負うのは誰? 弁護士が解説
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水戸市にある茨城県教育委員会はホームページ上で、学校管理下で起きた災害の給付金情報を公開しています。
ちょっとしたいたずらのつもりが、事故につながってしまうことや、遊びがエスカレートして怪我をしてしまうことも少なくありません。しかし親としては、学校で怪我をしたなどの問題があれば、治療費や慰謝料を含めて損害賠償を請求したいと考えるでしょう。
本コラムでは、学校において子どもが受傷した場合に、どのような対応ができるのかをベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説します。
1、子どもの怪我、加害者に損害賠償はできるか?
わが子が学校で、友だちなどが原因で怪我をしたといわれれば、親としては憤りを感じるのも当然です。
子どもが受傷した原因が相手の子どもの不法行為であれば,原則として損害賠償を請求することが可能です。たとえば、顔をたたく、棒で突くなどの故意を持った暴力が原因の場合、不意にぶつかって階段から転落した、振り回していたホウキがあたったなどの過失行為が原因の場合などです。
責任を負うのは、怪我をさせた本人であることが基本ですが、相手が小学生の場合は賠償責任ができないと考えられます。
これは、民法の第712条で、下記のように定められていることに起因します。
民法において、責任能力がないとされる年齢は11~12歳程度までと考えられています。
12歳以上の場合は、「自己の行為や責任を理解できる能力」の有無を判断し、子ども自身が責任を理解できれば子どもが、子どもが理解できなければ法定監督義務者が責任を負う可能性が高くなります。なお、一般的には、親が法定監督義務者に該当します。
損害賠償請求の内容としては、治療費はもちろんのこと、通院にかかった費用、付き添い費用、慰謝料などが考えられます。
治療費や交通費などの明細や領収書は、残しておくことが大切です。
2、学校側に責任はないのか?
学校における受傷問題については、メディアで「学校側の責任についても追及する方針」などと報じられることが多いため、気になる方も多いでしょう。
学校や教師は、教育活動において生じる危険から子どもを守る「安全配慮義務」を負っています。つまり、体育の授業や部活動、学校行事など、学校生活の広範囲にわたって責任が生じると考えられていますので、損害賠償を請求できる可能性が高いでしょう。
公立学校の場合、国家賠償法の規定に従って教員個人ではなく地方公共団体が責任を負います。
私立学校の場合は、教師個人または法人が責任を負うことになります。
ただし、学校の責任を追及できるのは、学校の管理下で発生した事故に限られます。たとえば、帰宅途中などは教師が監督できないため、原則として学校の責任を追及することはできません。その他、放課後や休憩時間に起きた事故も、状況によっては学校に責任を問えないことがあります。
3、学校における子どもの怪我、実際の判例や賠償の事例
実際に学校で発生した子どもの受傷問題について、過去の判例をもとに責任の所在を確認していきましょう。
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(1)授業中に起きた事故
●振り向いたはずみで手に持っていた鉛筆が目に刺さった
公立小学校の授業中に、男子児童に名前を呼ばれて女子児童が振り向いたところ、男子児童が手に持っていた鉛筆が女子児童の目に刺さり、極度の視力低下を伴う後遺症が生じた事故です。
この事故では、男子児童が日頃から粗暴な言動があったにもかかわらず、教師と両親が監督を怠ったとして、市と男子児童の両親にそれぞれ約380万円の支払い命令が下されました。(神戸地方裁判所判決/昭和48年(ワ)第534号) -
(2)清掃時間中に起きた事故
●遊んでいたホウキが顔にあたり眼球を負傷した事故
中学校の男子生徒が、清掃時間中にホウキをつかったホッケー遊びをしたところ、ホウキの先端が飛び、別の生徒にあたって右眼球破損等の負傷を負わせた事故です。
担当教諭は注意をあたえていたこと、またこれまでも同様の遊びが行われていたものの、負傷した者や室内の破損もなかったことから、事故を予測することは困難だったとして、担当教諭と加害生徒双方の責任を否定。損害賠償請求は認められませんでした。(横浜地方裁判所/平成元年(ワ)第1765号) -
(3)休憩時間中に起きた事故
●遊んでいた鉄パイプが顔にあたり歯牙破損等の傷害を負った事故
中学校の男子生徒が、休み時間中にバットの代わりに破損した机の鉄パイプをつかって野球ゲームをしていたところ、鉄パイプが手元から抜けてしまい、近くにいた女子生徒の顔にあたり、8歯を失う大けがを負いました。
この事故では、破損した机の鉄パイプを片付けなかった点と、遊んでいることを放置したという点、また適切な注意・指導を怠ったとして、生徒とその両親、市に対して、それぞれ約670万円の支払い命令が下されました。(千葉地方裁判所判決/昭和59年(ワ)第1051号)
4、単独で怪我をした場合はJAPAN SPORT COUNCIL(日本スポーツ振興センター)へ
ここまでは「別の子どもが原因となった場合」を中心に解説しましたが、子どもが単独で受傷事故を起こしてしまった場合は、加害者が存在しないため、補償の範囲は狭まってしまいます。
また、学校や教師、県や市などを相手取っての損害賠償請求するのも、怪我との関連性が明確でない限り難しいでしょう。
そういった場合は、まずはJAPAN SPORT COUNCIL(日本スポーツ振興センター)による給付を受けることを検討しましょう。
同センターでは、災害共済給付制度によって、授業中や休憩時間中などのように学校側の責任が生じるときだけでなく、登下校の時間中も幅広く給付金が支払われます。
学校で子どもが受傷した場合は、学校から制度の説明があるはずですが、積極的に説明しないことも想定されるため、念頭に置いておくとよいでしょう。
5、まとめ
子どもが学校において、別の子どもが原因で受傷した場合の賠償責任などについて解説しました。
もし、子どもが学校で受傷してしまった場合、相手の子どもの責任能力や学校の責任など、複雑な問題と直面することになります。JAPAN SPORT COUNCIL(日本スポーツ振興センター)による給付金などの制度も活用しつつ、受傷してしまった子どもの治療や補償のためにも早急に弁護士に相談して対策を講じましょう。
ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスでは、学校での受傷事故に関するトラブルなど、民事事件の対応実績が豊富な弁護士が、強力にサポートします。学校における子どもの事故などトラブルでお悩みの方は、ぜひご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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