中小企業が顧問弁護士を選ぶメリットと有効な活用方法とは?
- 顧問弁護士
- 顧問弁護士
- メリット
水戸商工会議所では、地域の企業に対して各種相談窓口を設けるなどして経営支援を行っています。しかし、もっと身近に、いつでもすぐに相談できる顧問弁護士がいればと感じることはないでしょうか。顧問弁護士を選任することで、ビジネスにおける法律面の不安を取り除き、経営者や労働者が経営のために最大限の力を注ぐことができます。
しかし、顧問弁護士を付けることに対する具体的なメリットをあまり想定できないという方も少なくないでしょう。中小規模だから顧問契約までは不要ではないのかという疑問を抱く方もいるはずです。
本コラムでは、中小企業の経営者や担当者に向けて、顧問弁護士を選任するメリットや有効な活用方法、選ぶ際のポイントを、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説します。
1、顧問弁護士を選任する4つのメリット
まずは、企業経営において避けて通れない4つの場面と照らしながら、どのようなメリットがあるのかを見てみましょう。
-
(1)契約関係
ビジネスでは、取引先との契約、労働者との雇用契約、業務委託の契約、金融機関から借り入れするときの契約、事務所を借りるときの契約など、実に多くの契約が発生します。法律行為である契約は、内容や書面をよく精査し、あとに予想されるトラブルを回避できるものとする必要があります。
万が一トラブルが生じ、裁判などに発展した場合でも、契約書は証拠となります。万が一不備があれば、最悪の事態となりうる可能性があるでしょう。しかし、顧問弁護士に契約内容などについてリーガルチェックを依頼することで、多様なアドバイスを受けられるとともに、契約書の精査、契約交渉まで対応してもらえます。 -
(2)債権回収
取引先や顧客が商品やサービスの代金を支払ってくれず、何度督促しても応じないとき、弁護士からの督促には高い効果が期待できます。弁護士の介入で債権回収への強い意志が伝わり、相手方は裁判を起こされることを嫌がるからです。
そもそも、相手方が督促に応じなかった場合でも、裁判手続きの代理人となり、最終的に支払いがなされるまで対応できるのは弁護士に限られます。回収できた債権のみならず、債権回収に費やす人件費をカットし、通常業務に割くことができるため、コストの面でも大きなメリットがあるでしょう。 -
(3)顧客トラブルへの対応
中小企業経営において顧客トラブルがもたらす影響は甚大です。昨今では企業がSNS上で誹謗中傷を書き込まれ、虚偽の情報であっても拡散され、大打撃を受けることも少なくありません。
顧問弁護士は顧客からのクレームを法的な視点でひもとき、どのように対処するべきかをアドバイスしてくれます。書き込みについても、削除要請や書き込み者の特定、損害賠償請求まで、法律の手続きに従い対処できます。
悪質なクレーマーへは顧問弁護士の名前をだすだけで牽制力があり、現場担当者の負担も軽減されるでしょう。 -
(4)労使トラブルへの対応
人を雇うにあたり把握すべき法律は多数あり、個別の事案によっても留意すべき項目が変わってきます。昨今では、労働者が一定の法律知識を有していますので、たとえ中小企業でも法を守ることが求められます。
労使のトラブルで裁判などになると、労働者が勝訴する可能性は高い傾向にあり、そこにいたるまでのコストや企業イメージの低下を考えても、ダメージは大きいものです。この点、顧問弁護士がいると、就業規則や雇用契約書、社内ルールの運用を整備してトラブルを防ぐほか、トラブルが生じそうな場面において適宜アドバイスしてもらうことができます。
実際にトラブルが起きたときも、労働者や労働組合との交渉、労働審判や裁判への対応を行い、解決までをサポートしてもらえます。
2、顧問弁護士にはこんな活用方法もある
顧問弁護士はここまで紹介した特定の場面で相談できるだけでなく、次のような活用方法もあります。
-
(1)企業の信頼度があがる
取引先や求人の応募者が企業の信頼性を判断するにあたり、顧問弁護士の存在がひとつの安心材料となります。ホームページに顧問弁護士がいる点を載せておくことや、契約時に「リーガルチェックを行う」という事実を周知することは、安定した取引や優秀な人材確保につながります。
-
(2)福利厚生の一環とする
顧問契約の内容にもよりますが、福利厚生の一環として、交通事故や離婚など個人の法律相談ができるようにしておくと、役員や労働者が業務に集中し、安心して働くことができます。従業員にとっても自分で弁護士を探す手間がなく、信頼できる弁護士へ相談できるのは大きなメリットとなるはずです。
-
(3)新規ビジネスの相談
新しい事業を軌道に乗せるには、法律の知識が必要不可欠です。顧問弁護士がいれば構想の段階から相談に乗ってもらい、法律に抵触することなく事業展開に着手できます。また弁護士には士業のネットワークがあります。状況に応じて税理士や司法書士、社会保険労務士など専門分野に特化した士業と連携し、新規ビジネスをサポートが可能です。
-
(4)リスクマネジメント
顧問弁護士がいない場合、弁護士を依頼するのは実際にトラブルが生じたあとになります。
場合によっては事態が悪化しており、弁護士であっても対応が難しくなってしまうケースが少なくありません。顧問弁護士がいれば、法律上のちょっとした疑問をすぐに相談できます。「弁護士に相談するまでもない」と思うことでも、早期に対処することでトラブルを回避できることは多いのです。
また、事前に内容を法的に確認しておくことで想定できるトラブルを回避することや、リスクを負わないような対策をあらかじめ行っておくことが可能となるでしょう。
3、顧問弁護士を選ぶときの注意点とポイント
ここからは、顧問弁護士の選び方に着目して解説します。失敗しがちな選び方や選ぶときに重視するべき点を確認しましょう。
-
(1)顧問弁護士の選び方でやってしまいがちなこと
顧問弁護士を選ぶ際、まず気になるのは顧問料です。ただひたすら安く相談できる弁護士を選びたくなる気持ちは十分に理解できます。逆に、無駄に大金を支払っても対応してもらえない、そこまでの対応はいらなかったというケースもあるでしょう。
いずれにしても顧問弁護士はトラブルを回避し、解決できる人を選ばなければ、結局は無駄になってしまいます。顧問料は注視すべき点ではありますが、それだけで選ぶことは避けなくてはなりません。 -
(2)中小企業の問題に対応できる弁護士
知人の紹介で顧問弁護士を選ぶことにも注意が必要です。知人にとっては優良な弁護士であっても、ご自身の企業にフィットするとは限らないからです。紹介が悪いわけではありませんが、弁護士の取り扱い分野や実績などをよく確認したうえで、契約するかを決めるようにしましょう。
たとえば、大企業の顧問弁護士は、海外戦略や企業の合併・買収(M&A)など、中小企業とは異なる分野を専門としていることもありますので、中小企業に向いているとは限りません。中小企業で起こりやすい、クレームや債権回収、事業承継、労使トラブルや労働災害などに詳しいのかを確認しましょう。 -
(3)相談しやすい弁護士
弁護士との相性も大切です。これは話をしてみないと分かりませんので、ホームページ上の情報だけでなく、実際に話を聞き、頼れる弁護士かどうかを見極めましょう。
このとき、親身になって話を聞いてくれるのか、質問に分かりやすく答えてくれるのか、自社の業務内容を理解してくれるのか、といった点が重要です。横柄な態度をしたり、人の話をさえぎったりするような弁護士では信頼関係の構築が難しくなりますので、長い付き合いになることを想定して選びましょう。
また、いざというときにすぐに対応してもらえるように、連絡がとりやすいかどうかも確認しておきたいところです。 -
(4)交渉力のある弁護士
弁護士と聞くと即裁判とのイメージを持たれる方が多いかもしれません。しかし、実際は裁判の前段階で交渉を行い、問題を解決するケースがほとんどです。交渉で解決できない問題は裁判で決着させますが、実際に裁判となるとコストや時間がかかり、対外的にトラブルを露見することにもなってしまいます。そのため、裁判前に解決できるような交渉力に長けた弁護士が望ましいのです。
顧問契約を行った弁護士は、会社の代理人としてトラブルの相手方と交渉します。過去のトラブルをどう解決したのか、裁判前の交渉も代理してもらえるのかも含めて、話を聞いてみると良いでしょう。
4、まとめ
今回は、中小企業が顧問弁護士を選任するメリットや選び方について解説しました。
顧問弁護士を付けておくことによって、法律上のトラブルを回避し、問題が起きても迅速な対応が期待できるでしょう。リスクマネジメント面のみならず、経営者や労働者が本来の業務に専念できる点を考慮しても、顧問弁護士を選任するメリットは非常に大きいはずです。
ベリーベスト法律事務所では、中小企業で起こりやすい問題に対応した実績とノウハウが豊富にあります。水戸近郊で事業を展開されている経営者の方は、ぜひ水戸オフィスまでご相談ください。状況に適したプランを選択できる、顧問弁護士サービスをご用意しています。弁護士のみならず、税理士、弁理士、社会保険労務士などの専門士業が連携し、ワンストップで対応します。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています