酒税法とはどんな法律? 自家製のお酒は法律違反?
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コロナ禍の新しい生活様式としてオンライン飲み会などが行われるようになったこともあり、自宅でお酒を飲む機会が増えてきています。お店でお酒を購入してきて飲む方もいれば、自宅で自家製の梅酒などをつくって飲んでいるという方もいるかもしれません。
しかし、自宅で果実酒などを作る場合には、作り方を間違えると酒税法という法律に違反してしまう可能性があります。酒税法に違反した場合には、最悪のケースでは、10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性がありますので十分に注意が必要です。
今回は、自家製のお酒が法律違反になるかどうかについて酒税法との関係をベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説します。
1、酒税法ってどんな法律?
お酒についての製造・販売に関して規制をしている法律として「酒税法」が存在します。以下では、酒税法に関する基本的事項について説明します。
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(1)酒税法とは
酒税法は、酒税の賦課徴収、酒類の製造・販売の免許などを定めた法律です。
酒類に対しては、酒税法によって酒税が課されています。しかし、自分で飲むために酒をつくることが、何の規制もなく自由に行われてしまうと、酒税の徴収確保に支障が生じ、国の酒税収入が減少する可能性があります。
そこで、国の重要な財政収入である、酒税の徴収確保を目的として制定された法律が酒税法です。酒税法では、製造目的を問わずに、酒類製造を一律に免許(製造免許、販売業免許)の対象としており、免許を受けることなく酒類を製造・販売する行為を禁止しています。 -
(2)酒税法の規制対象である酒類とは
酒税法が規制対象とする「酒類」とは、アルコール分1度以上の飲料であると定義されています(酒税法2条1項)。そして、酒類は、発泡性酒類や醸造酒類、蒸留酒類、混成酒類の4種類に分類されます(酒税法2条2項)。酒税の税率は、これらの4種類の分類に従って細かく決められており、日本ではビールの税率が最も高くなっています。
そして、酒税法の規制対象となる酒類の製造者は、税務署長の免許を受ける必要があり、免許を受けた場所でのみ製造することが可能です。
2、果実酒作成時に気を付けるべきこと
自家製梅酒など自宅で果実酒を作っている方も多いと思います。自宅で果実酒を作る場合には、酒税法違反にならないよう、以下の点に気を付けるようにしましょう。
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(1)使用するお酒のアルコール度数が20度以上で、すでに課税されているお酒を使うこと
自宅で果実酒を作る際には、使用するお酒は、アルコール度数が20度以上のものであり、課税が済んでいるものを使わなければなりません。
アルコール度数が20度以上の環境だと、発酵の原因である酵母菌が活動をすることができなくなります。酵母菌が活動できる環境だと、お酒の発酵が進行してしまい、新たなお酒を醸造する行為にあたってしまいますので、酒税法で許容されている自家醸造の範囲を超えてしまうのです。
アルコール度数が高いイメージのある日本酒ですが、アルコール度数が20度未満のものがほとんどですので、果実酒を作る際には、使用するお酒の度数をよく確認してから行うようにしましょう。 -
(2)お酒と混ぜてはいけないものがある
酒税法施行規則13条3項では、自家醸造をする場合でも以下のものを混和することを禁止しています。
- ① 米、麦、あわ、とうもろこし、こうりやん、きび、ひえ若しくはでん粉又はこれらのこうじ
- ② ぶどう(やまぶどうを含む)
- ③ アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす
これらのものを混和するとビール、日本酒、ワインなどの製造につながるおそれがあるため、禁止されています。しかし、これら以外のものであればどのようなものでも混ぜることができるともいえます。
3、果実酒を楽しむときに気を付けるべきこと
自宅で果実酒を作って楽しもうと考えている方は、以下の点に気を付けるようにしましょう。
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(1)自家製の果実酒を販売することは違法
自宅で果実酒を作る行為については、消費者が自分で飲むために作る場合に例外的に許可されているに過ぎません。自分で作った果実酒がとてもおいしくできたからといって、他人に販売をしたり、提供したりする行為は酒税法違反となりますので注意しましょう。
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(2)同居の親族に提供することはOK
上記のとおり、自家製の果実酒を他人に提供することは酒税法違反となりますが、国税庁の通達では、同居の親族に自家製の果実酒を提供することは問題ないとされています。親族とは、配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族をいうとされていますので(民法752条)、かなり広い範囲の方が含まれますが、「同居」が条件とされていますので注意が必要です。
親族に含まれる親戚が訪ねてきたときに、良かれと思って自家製の果実酒を提供する行為は、酒税法違反になります。 -
(3)自家製サングリアについては違法の可能性が高い
サングリアは、ワインにフルーツ、スパイスなどを漬け込んだワインカクテルです。近年、お酒が苦手な女性でも飲みやすく、インスタ映えがすることもあり、人気が出ている飲み物です。そのため、果実酒と同様、自家製サングリアを作ろうと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、サングリアのベースとなるワインは、アルコール度数が10度から15度程度のものであり、アルコール度数が20度を超えるワインはほとんど存在しません。すでに説明したとおり、自家醸造が例外的に許可される条件としては、アルコール度数が20度以上のお酒を使うことが条件となります。そのため、ワインをベースにするサングリアは、アルコール度数の条件をクリアすることができないため、違法となる可能性が高いといえます。
バーのカクテルなどのようにお酒を飲む直前に酒類を混ぜる場合には、醸造にあたらないというルールもありますが、一般的にサングリアはワインにフルーツなどを「漬け込む」飲み物ですので、醸造にあたってしまうでしょう。飲む直前にワインを注ぎ入れるようなスタイルでもなければ、自宅で自家製サングリアを合法的に作成することは難しいといえます。
4、気になることがあれば、お気軽に弁護士に相談を
自家製の果実酒を作る際には、上記のように酒税法、酒税法施行令、酒税法施行規則、国税庁の通達などさまざまな法令を参照して、要件該当性を判断していかなければなりません。
自家製の果実酒は、材料さえあれば誰でも簡単に作ることができてしまいます。その反面、きちんと自家醸造が許される条件を満たした方法で自家製の果実酒を作らなければ、誰でも酒税法違反を犯してしまう危険があるということです。「法律を知らなかった」という理由では、酒税法違反を免れることはできません。法律の解釈は、非常に専門的な作業ですので、少しでも不安なことがある場合には、専門家である弁護士に相談をするようにしましょう。
酒税法に限らず、日常的に行っていることでも意外と法律に触れる危険のある行為も存在します。何気ないことであっても疑問に感じたときには、弁護士に相談をすることをおすすめします。弁護士には守秘義務がありますので、相談をした内容が外部に漏れるということはありませんのでご安心ください。酒税法に限らず気になることがある方は、お気軽に弁護士に相談をしてください。
5、まとめ
自家製の果実酒は、誰でも気軽に作ることができるお酒ですが、酒税法による規制があることを忘れてはいけません。酒類については、原則として、酒税法による規制対象となっており、要件を守った自己消費の場合に限って自家製の果実酒が認められているに過ぎません。
自家製の果実酒が例外的に許容される要件は、細かく規定されていますので、果実酒を作る際には、よく理解した上で行うことが重要です。
法律の理解や解釈に不安があるという方は、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています