呼気検査の拒否は犯罪になる? 逮捕されたらどうなるの?
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平成29年12月、水戸市は酒気帯び運転の容疑で摘発された職員に対して、停職6か月の懲戒処分を決定しました。職員は同年10月、水戸市内で飲酒した後、車を運転し、警察官の呼気検査によって基準値を超えるアルコールが検知されていました。
この事例の場合、実際に飲酒をしていたのですから呼気検査を受けて当然とも言える状況です。一方で、飲酒をしていないにもかかわらず運転中に警察官から呼び止められ、呼気検査を求められることもあります。この場合、飲酒をしていないと言う理由で検査を拒否しても問題ないのでしょうか。ここでは、呼気検査を拒否した場合にどうなるのかを知りたい方に向けて、逮捕の有無や罰則について解説します。
1、呼気検査が行われる法的根拠
呼気検査とは、管轄区域の警察や交通機動隊などによっておこなわれるアルコール検査のことで、飲酒検問、飲酒探知とも呼ばれています。アルコールを探知する機器に呼気を吹き込ませ、呼気中のアルコール濃度を確認します。呼気検査は国道やバイパスなどの交通量が多い場所のほか、住宅街などの閑静な場所でおこなわれるケースもあります。
この検査はどのような法律に基づいて行われているのでしょうか。
道路交通法第65条では酒気帯び運転を禁止する規定があり、これを検知するために、飲酒運転による事故の防止を目的とした呼気検査がおこなわれています。また、道路交通法第67条では、第65条の規定に違反して車両などを運転するおそれがあるとき、警察官がその者の呼気の検査をすることができる旨を定めています。
2、呼気検査の拒否と逮捕について解説
「呼気検査を拒否しても、任意なのだから逮捕されることはない」と認識されている方がいますが、実はそうではありません。ここからは、呼気検査の拒否と逮捕について解説していきます。
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(1)呼気検査を拒否すると逮捕される?
呼気検査の実施が法律において規定されている以上、呼気検査を拒否すると逮捕されることがあります。呼気検査を受けることに納得がいかない方がいるかもしれませんが、拒否することが良い選択肢とは言えません。
実際に、全国の警察署では呼気検査拒否の疑いによる逮捕者がでています。また、警察官の要求に対して無理やり車を発進させたり、暴れたりした場合は公務執行妨害罪や傷害罪など別の罪に問われるおそれもあります。 -
(2)飲酒をしていなかったら違法捜査になるのか?
全国一斉検問のように、飲酒とは全く無関係の状態であっても呼気検査を受けることがあるでしょう。「飲酒していないのに、なぜ呼気検査を求められるのか」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、前述したようにこれは、飲酒運転による事故を防止するための措置です。力ずくで呼気検査をさせるなど特別な事情が発生しない限り、警察側に違法性が認められる可能性は低いでしょう。
また、酒気帯び運転の「おそれ」があったか否かの判断は警察官がおこなうため、「酒気帯び運転のおそれがないのに、呼気検査をされたから違法捜査だ」と主張することも難しいといえるでしょう。
3、呼気検査を拒否し逮捕された後の流れ
ここからは、仮に呼気検査を拒否し逮捕された場合の流れや、呼気検査拒否の刑罰について解説します。あわせて、飲酒運転をした場合の罰則も確認していきましょう。
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(1)逮捕された場合の流れ
呼気検査拒否で逮捕された場合、最大で48時間、身柄の拘束を受けます。その間、取り調べや再度の呼気検査、呼気検査を拒否した場合は採血による血中アルコール度の検査をすることになります。警察からの取り調べを受けた後は、検察官へ送致されます。
送致を受けた検察官の元で、24時間以内に、裁判所に勾留を求めるかどうかが判断されます。勾留とは逃亡や証拠隠滅の恐れがあるときに最大20日間身柄拘束を受けるという処分です。
勾留がなされなかった場合には、身柄が解放されます。
しかし、身柄が解放されたとしても不起訴になるとは限りません。起訴するかどうかの権限は検察官が持っているため、在宅のまま捜査が続き起訴されることもあり得ます。 -
(2)呼気検査拒否で罪に問われる基準とは
呼気検査を拒否して罪に問われるのは、
- 警察官が呼気検査を要求していることが運転者に伝わっている
- 運転者が明確に拒否している
という2つの要件を満たした場合です。
呼気検査拒否罪で逮捕された男性に対して、警察官による呼気検査の要求が曖昧であったことを理由に無罪が言い渡されたという事例もあります。 -
(3)呼気検査拒否罪の刑罰
呼気検査を拒否した際の法定刑は「3ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」です。以前の罰則は「30万円以下の罰金」でしたが、平成19年施行の道路交通法改正によって大幅に引き上げられました。罰金刑の引き上げのみならず懲役刑が加わっていることから、呼気検査を拒否することの重大性が分かります。
行政処分はないため、拒否をしたことをもって違反点数が累積されるわけではありません。ただし、呼気検査を拒否すると、裁判所の許可を受けて医師による血液採取がおこなわれることがあります。血中のアルコール濃度が測定され、規定値以上のアルコールが検知された場合は、飲酒運転と呼気検査拒否罪の両方が適用されます。また、飲酒運転であれば、次に述べるように刑罰・行政処分ともに受けることになります。 -
(4)酒酔い運転の刑罰
飲酒運転には「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」があります。ここでいう「酒酔い」は、アルコールを摂取したことにより正常な運転ができない状態のことで、血中のアルコール濃度などに明確な決まりはありませんが、蛇行運転をしていたり歩行がおぼつかなかったりと、明らかに酒に酔った状態で運転することを指します。
酒酔い運転の行政処分は、基礎点数が35点と免許取り消し処分で、欠格期間(免許取得ができない期間)は3年です。また、罰則は「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」と非常に重い罪であることがわかります。 -
(5)酒気帯び運転の罰則
酒気帯び運転の行政処分は以下の2段階に分かれています。
- 呼気中アルコール濃度0.25mg/l以上……基礎点数25点、免許取り消し処分、欠格期間2年。
- 呼気中アルコール濃度0.15mg/l 以上 0.25mg/l 未満……基礎点数13点、90日の免許停止処分。
酒気帯び運転の罰則はいずれも「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
なお、酒酔い運転、酒気帯び運転ともに、行政処分は前歴やそのほかの累積点数がないケースを想定しています。すでに別の道路交通法違反によって点数が減算されている場合は、さらに重い処分となり得ることも押さえておきましょう。
4、まとめ
今回は呼気検査拒否と逮捕の関係を中心に解説しました。呼気検査は法律を根拠にした検査であり、拒否すると逮捕されることもあります。飲酒の事実がないことを証明するためにも従う方がよいでしょう。実際に飲酒をしていることを知られたくないという理由で拒否する人もいますが、その場合はいずれ飲酒が発覚しますので、どちらにしても拒むメリットはありません。
万が一、呼気検査拒否や飲酒運転で逮捕されてしまった場合は、早めに弁護士へ相談をしましょう。弁護士であれば、逮捕された場合の早期釈放に向けての活動や取り調べに対するアドバイスなどが可能です。
ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスでは、交通事故や刑事事件のご相談を承っています。お困りの方はぜひお早めにご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています