家族が痴漢で再び逮捕! 再犯時の量刑や逮捕後の流れは!?

2018年09月13日
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家族が痴漢で再び逮捕! 再犯時の量刑や逮捕後の流れは!?

痴漢の前歴がある家族が、また痴漢してしまった……。
そのような事実を突きつけられると思わずぼうぜんとして、どうしたらいいかわからなくなってしまうものです。しかし、痴漢は再犯率が高く、性犯罪のなかでも突出している犯罪と言われています。
今回は、再び痴漢をしてしまった場合、どのような処分が下されるのか、量刑や逮捕後の流れはどのようになるかなど、未成年のケースも例に挙げながら解説していきます。

※なお、この記事では、「再犯」を、法律上の「再犯」(刑法56条)ではなく、一般的な用語としての再犯、すなわち「再び罪を犯すこと」として解説します。

1、迷惑防止条例違反?それとも強制わいせつ罪?

そもそも痴漢は何罪として法律で処罰されるのでしょうか。法律上は『痴漢罪』というものは存在しません。
痴漢行為で逮捕されるパターンは、以下の二つに分けられます。

  • 各都道府県が定める迷惑行為防止条例違反
  • 刑法における強制わいせつ罪


そこで、痴漢を処罰する法律についてそれぞれ紹介します。

  1. (1)迷惑行為防止条例違反となる場合

    迷惑行為防止条例違反となる痴漢は、各都道府県で定められた条例に抵触した場合に成立します。

    例えば茨城県の条例の場合、何人も、公共の場所や乗り物において衣服や身に着ける物上からまたは直接相手の体に触れたり、撮影をして相手に恥ずかしい思いや嫌悪な思いにさせる行為が迷惑行為の構成要件とされています。(茨城県 迷惑行為防止条例第2条1項)
    これらの行為は電車内での痴漢だけでなく、バスやエレベーター内なども同様です。

    • 衣服の上からお尻に触れた
    • 背後から股間などを押し付ける
    • スカートの中を盗撮していた


    このような行為の場合は、迷惑行為防止条例違反に当たる可能性があります。
    迷惑防止条例の法定刑は条例によってさまざまですが、多くの条例で6ヶ月以下の懲役または50万以下の罰金と定められており、常習性がある場合はさらに重くなります。

  2. (2)強制わいせつ罪となる場合

    強制わいせつ罪となる痴漢は、公共の場所や乗り物に限らず、脅迫または暴力を用いて13歳以上の者に対するわいせつ行為、または脅迫などを用いずに13歳未満の者に対して行ったわいせつ行為に対して成立します。(刑法176条)

    例えば、以下のように性的自由の侵害の程度が高い場合は、上記の条例違反ではなく強制わいせつ罪が当てはまる可能性が高くなります。

    • 下着の中に指をいれて直接触った
    • 衣服の上から執拗に弄び続けた


    強制わいせつ罪は迷惑行為防止条例違反よりも刑罰は重く、6ヶ月以上10年以下の懲役が科されます。ただ、初犯であれば執行猶予がつく可能性も考えられます。

2、前歴ありの再逮捕。量刑とその後の流れはどうなるの?

夫または未成年の息子が痴漢で逮捕された場合は、できるだけ迅速に対処することがなによりも重要です。特に処罰が重くなる再犯はなおさらです。
痴漢の前科がある場合、起訴されると懲役刑となる場合があります。下される処分は成人と未成年者では異なります。そこで、成人の場合と未成年者の場合とに分けて説明します。

  1. (1)成人による痴漢の再犯の場合

    再犯で逮捕された場合も、1回目の逮捕と同じ流れですすんでいきます。つまり、逮捕されてから最大23日以内に起訴・不起訴が決まります。

    量刑に関しては、一般的に再犯の場合は前回よりも重い処分が下される可能性があります。 特に同種の前科または前歴がある場合は悪質だと考えられ、起訴処分が下される可能性が高くなるでしょう。

    しかし、被害者の方と示談が成立すれば不起訴処分になる可能性も十分にあります。示談の成立は、検察官が起訴、不起訴を判断するときに大きく影響します。
    そのため、身柄拘束事件の場合は、再逮捕されて起訴処分が下るまでの最大23日の間に示談を成立させる必要があります。

    痴漢事件の場合、示談交渉のために被害者が被疑者に連絡先を伝えることや、直接面会することは、被害者の心情的に難しいという現実があります。
    そのため、示談交渉は弁護士に依頼することをおすすめします。不起訴処分を獲得するためにも、示談交渉を弁護士に依頼し、弁護士を通じて被害者に謝罪し、示談を成立させ、その事実を捜査機関へ主張することがよいでしょう。

  2. (2)未成年による痴漢の再犯の場合

    14歳以上20歳未満の未成年者の場合、逮捕後は拘置所などではなく、多くの場合は少年鑑別所に移送されます。成人の刑事事件の場合、最大20日間の拘留期間内に起訴・不起訴処分が下されますが、未成年者が被疑者である場合はすべての事件が家庭裁判所に送られ、最終処分が決定されます。

    再犯であることは当然処分に影響しますが、未成年者の処分は刑事裁判ではなく少年審判で決まるため、痴漢の処分は通常の成人の場合と異なります。少年法は、『刑罰』目的ではなく『教育』が目的であり、殺人など重大な犯罪でない限り、刑事裁判のような『懲役・罰金』になることはありません。

    少年審判によって下される処分は、四つに大きくわけることができます。

    • 保護処分(保護観察・児童自立支援施設、児童養護施設等送致・少年院送致)
    • 検察官送致(刑事裁判となる)
    • 不処分
    • 都道府県知事または児童相談所所長送致


    また、特に大学生の場合、捜査をするうえで必要がない限り、基本的には学校に連絡されることは少なく、また痴漢逮捕だけで即退学処分になるとも限りません。
    ただし、有罪判決を受けると、各学校の規則によりますが退学処分になる可能性が高くなります。そこで、退学処分を阻止するためにも、未成年者が逮捕された場合はとにかくスピード対応が求められます。

    少年事件の場合は、大人よりも未成熟な部分が多く、混乱状態のまま受け答えしてしまい、自身にとって不利益な行動をとってしまうこともあります。さらに、少年事件への対応は、未成年者のその後の人生を大きく左右します。
    家族が痴漢行為で再逮捕された場合は、早期釈放を目指して味方になってくれる弁護士に相談することをおすすめします。

3、痴漢の常習化が疑われる場合

痴漢がやめられないなどの痴漢の常習化が疑われる場合、『依存性』や『発達障害』の可能性が考えられます。

例えば、痴漢行為が『ストレス対処法』となって精神安定剤の役割となっている場合、加害者としての処罰だけでなく、治療が必要となります。
再犯を繰り返せば実刑が下る可能性が高まるばかりです。専門医による適切な治療を受けることも考えましょう。

現在、公共機関や私設団体などによる依存者へのサポートが行われています。以下のような専門機関に相談してみるのもおすすめです。

  • 精神保健福祉センター
  • 専門病院
  • 心理カウンセリング


専門的な医療機関やサポート機関の受診証明書・カルテ・ご本人作成の通院報告書などの提出は、検察官の処分の判断材料につながることもあります。

4、まとめ

今回は、痴漢に適用する法律の内容や再犯の場合の量刑の重さや逮捕されたときの対応などについて説明しました。
痴漢の再犯で逮捕された場合は、実刑判決を受けてしまうことも考えられます。
もしも、家族が条例違反や強制わいせつ罪などの容疑で逮捕された場合は、速やかに適切な対策をとる必要があります。
「夫や息子が痴漢で再び逮捕されてしまってどうしたらいいかわからない」という場合、弁護士にいち早く相談するようにしましょう。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています