未成年の息子が痴漢容疑で逮捕! 少年事件で家族が知っておきたい逮捕後の流れ
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ある日、高校生の息子の帰りを待っていると電話が鳴り「息子さんがJR常磐線の車内で痴漢をしたので逮捕した」と警察から連絡が……。誰しも突然のことに頭の中が真っ白になってしまうことでしょう。
本コラムでは、そのような事態を想定して未成年の息子が痴漢容疑で逮捕されてしまった場合に、どのような対応を取るべきか、また逮捕後の処遇などについて水戸オフィスの弁護士が解説します。
1、痴漢は未成年でも逮捕される? どのような処罰が科せられる?
刑法第41条には「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と定められています。刑法上責任能力がないとされているのです。なお、14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年は、児童相談所で身柄を保護するなどの措置が取られることもあります。
ただし、14歳以上であれば痴漢容疑がかけられた場合は「犯罪少年」として逮捕や捜査の対象となります。
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(1)迷惑防止条例違反の場合
公共交通機関での痴漢は、迷惑防止条例違反に問われるケースが多いでしょう。
茨城県での迷惑防止条例の正式名称は「茨城県公衆に著しく迷惑をかける行為の防止に関する条例」です。
痴漢行為は、同条例第2条において禁じられている「卑わいな行為」に該当します。
条文では、「公共の場所や公共の乗物において、人を著しく羞恥させ、または人に著しく嫌悪の情を催させるような方法で、衣服の上から、または直接他人の身体に接触すること」を禁じています。
成人がこれに違反した場合は、「6ヶ月以下の懲役」または「50万円以下の罰金」が科せられます。また、常習の場合は「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」が科されることとなります。 -
(2)強制わいせつ罪の場合
スカートや下着の中に手を入れる、陰部に手を押し当てる、無理やりキスをするなど、より悪質な痴漢行為の場合、強制わいせつ罪に該当する可能性が高くなります。
刑法第176条において「13歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者」は「6ヶ月以上10年以下の懲役」が科されます。また13歳未満の者に対して暴行または脅迫がなくわいせつな行為をした者も、同様の処罰を受けます。成人の場合であれば、執行猶予が付かない実刑が下された場合、即収監される重い処罰です。
どのような状況が「暴行または脅迫」にあたるかは、最高裁判所の判例があります(最高裁判所第二小法廷 昭和33年6月6日 事件番号昭和33年(あ)第32号)。たとえば体格の差、満員電車で逃げ場がないなど、電車内やエレベーターの中などで行った痴漢も、態様によっては「強制わいせつ罪」に該当する可能性があると考えておいた方がよいでしょう。
2、未成年者が逮捕されたあとの流れ
ここでは、14歳以上の未成年者が痴漢容疑で逮捕された場合、どのような処遇を受けるのか順を追って解説します。
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(1)警察での取り調べと検察への送致
取り押さえられた場所から、近隣の警察署に移動し、まずは警察で取り調べを受けます。この時点では、事実関係を認めるかどうかの確認が中心となります。警察は、逮捕から48時間以内に少年の身柄や事件の調査書類を検察庁に引き継ぎます。この手続きを「送致」といいます。この段階で「嫌疑なし」となれば釈放され、事件は終結します。
非常に軽微な事件の場合、成人の事件の場合は「微罪処分」として警察から注意を受けて釈放されることがありますが、少年事件の場合は基本的に微罪処分がありません。成人事件における微罪処分に該当するケースは、家庭裁判所へ送致されることになります。ただし、保護者が少年の身柄を引き取らせ、警察署限りで処理(不送致)されることもあるでしょう。 -
(2)検察官が勾留の必要性を判断する
送致を受けた検察官は、少年の身柄拘束を続ける必要があると判断した場合は、裁判所に対して「勾留(こうりゅう)請求」を行います。裁判所が勾留請求を認めると、最初は10日間、延長されれば最長20日間の身柄拘束を受けることになります。
ただし、少年事件において勾留が認められるケースは「やむをえないとき」のみに限られています(少年法第48条第1項ほか)。状況によっては、拘置所ではなく少年鑑別所などに身柄を送致する「勾留に代わる観護措置」を行われることもあるでしょう。 -
(3)家庭裁判所に送致する
14歳以上の少年犯罪は、少年の健全育成を目的に、検察から全件を家庭裁判所に送致することになっています。
警察や検察から送致を受けた家庭裁判所では、「観護措置(収容監護)」または「在宅監護」の判断をします。観護措置となれば、原則2週間、最長で8週間、少年鑑別所に収容され、取り調べなどの捜査が行われます。在宅監護では身柄は釈放され、自宅に帰ることができますが、引き続き調査は行います。 -
(4)家庭裁判所が審判の必要性を判断する
家庭裁判所は、少年の処分を決定するための「審判」を行う必要があるかを判断します。
審判とは成人事件でいう刑事裁判と同じ位置付けと考えてよいでしょう。ただし、刑罰を科すことを目的とした裁判とは異なり、審判では、少年の更生のために最適な方法を判断するという目的があります。よって、懲役や罰金などの刑罰が下されることはありません。
調査の結果、審判を行う必要はないと判断されれば「審判不開始」となり、事件は終結します。(殺人など重大な犯罪の場合は、刑事事件相当の処分が必要となり、検察に逆送致するケースもあります) -
(5)家庭裁判所で審判が開かれる
審判は原則非公開で行われ、次のような決定が行われます。
- 不処分(処分がなく釈放されること)
- 保護観察処分(日常生活を送りながら家庭内での更生を目指す)
- 少年院など更生施設への送致 など
3、未成年が起こした事件で弁護士を依頼するメリット
長期の身柄拘束となれば、学業や仕事に影響が出ることは避けられないでしょう。逮捕が学校や職場に知られたら、場合によっては退学・解雇のリスクも高まります。
弁護士であれば、状況に応じて将来への影響を最小限にとどめるための、さまざまな弁護活動を行うことができます。
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(1)逮捕直後の少年と直接話してサポートできる
少年が逮捕され、警察に身柄を拘束されている間は、証拠隠滅などを防ぐために家族であっても面会することはできません。ただし、弁護士であればこの期間にも少年と自由に接見することが許されています。
弁護士は、事件直後から直接少年の弁明を聞き、逮捕され心理的に不安定な状態の少年をサポートすることができる唯一の存在といえるでしょう。
冤罪であると主張する場合は、本人に代わって目撃者や証拠を探す、被害者の供述の妥当性を確認するなど、捜査機関に働きかけることができます。弁護士のサポートがあれば、弁護活動によって早期釈放を目指すことも可能となるでしょう。 -
(2)勾留を回避する・準抗告を行う
弁護士は、捜査機関に対して身柄を拘束する必要がないことを主張します。
また、勾留請求を受けて裁判所がこれを認めた場合でも、勾留理由開示請求や準抗告などの手続きを行い、勾留が妥当ではないことを主張し、釈放へと働きかけます。特に未成年が学生の場合は、勾留によって学校の欠席が続けば少年の健全育成に悪影響を及ぼすおそれが高いため、成人事件と比べると勾留が妥当ではないことを主張しやすくなります。 -
(3)被害者との示談交渉
被害者に謝罪し、示談金を支払うことも重要です。
ただし、痴漢は性犯罪である以上、被害者側の嫌悪感情や処罰感情が強いケースが多く、少年の家族が直接連絡を取ることは逆効果となりかねません。被害者には第三者である弁護士を通じて働きかけることが大切です。
なお、少年犯罪では、示談が成立しても成年犯罪のように不起訴などの措置はありません。また、成年犯罪と比べて示談の成立が処分に影響を与える可能性は低いと考えられます。しかし、謝罪の意を示し、示談金を支払うことなどによって本人に反省を促すことは、今後の更生を目指すためにも重要といえますし、審判の際に考慮されるでしょう。 -
(4)審判での付添人を依頼できる
成人事件の弁護人のように、審判でも弁護士が少年側をサポートすることができます。
この場合の弁護士は「付添人」と呼ばれ、加害者となった少年の処分が軽くなるように裁判官に働きかけるだけでなく、法律の知識がない少年の意見や心情を代弁してくれます。また再犯を防ぐための環境調整を準備することも弁護士の仕事のひとつです。少年や家族にとっては心強いサポートとなるでしょう。
4、まとめ
未成年の痴漢逮捕では、弁護士による逮捕直後からのサポートが非常に重要です。身柄拘束が長期に及んだり、重すぎる処罰で将来に影響を残したりしないためには、早期の釈放を目指し、状況に応じて捜査機関に適切な働きかけをする必要があります。
また、逮捕後であっても自由に面会ができる弁護士は、家族の橋渡し役になります。弁護士の知見によって、本人の取り調べや、諸手続きのサポートが得られることは非常に心強く感じるでしょう。冤罪を晴らすための弁護活動も行います。
逮捕の連絡を受けたら、なるべく早くベリーベスト法律事務所 水戸オフィスまでご連絡ください。子ども自身の未来のために力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています