わいせつ物頒布等罪とは? インターネット上での軽率な行動に注意!

2019年07月11日
  • 性・風俗事件
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わいせつ物頒布等罪とは? インターネット上での軽率な行動に注意!

「わいせつ物頒布等罪」とは、わいせつな文書や図画などを不特定又は多数の人に配布したり、不特定又は多数の人の目に触れる状態にすることで成立する罪です。

ネット上で軽率に写真をアップロードすることなどが、わいせつ物頒布等罪に該当する可能性があります。わいせつ物頒布等罪について、またわいせつ物頒布等罪で逮捕された場合の対処について水戸オフィスの弁護士が解説します。

1、わいせつ物頒布等罪とは

  1. (1)わいせつ物頒布等罪の概要

    わいせつな画像や文書を不特定又は多数の第三者に提供すると問われる可能性がある、刑法第175条に定められている犯罪です。

    有罪となれば、2年以下の懲役または250万円以下の罰金もしくは科料(かりょう)が科されます。科料とは、1000円以上1万円未満の金銭を強制徴収する罰です。

    刑法の条文も確認しておきましょう。

    刑法第175条(わいせつ物頒布等)

    • 第1項 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
    • 第2項 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。


    条文にある「電磁的記録に係る記憶媒体」とは、簡単にいえば、PCやスマートフォンなどを用いて記録・再生するものと考えてよいでしょう。DVDやCD-ROM、メモリスティック、ストリーミング配信などを指します。有償か無償かどうかは関係ありません。不特定多数の方が、あなたが作成したわいせつ物を見たり確認できたりする状態にすることによって罪に問われることになる可能性があります。もちろん、インターネット上でのわいせつなデータのやりとりも検挙対象となりうると考えられます。

    また、第2項にあるとおり、金銭的利益を得るためにわいせつ物を所持したり、電磁的記録を保管していたりする場合も罪に問われます。

  2. (2)「わいせつ」とは何か

    なにをもって「わいせつ」とするかの定義は、極めてあいまいなものです。時代や社会情勢によっても変化することから、常に議論の的となっています。

    実際には、過去の判例から、おおよそ以下の3つを満たすものが「わいせつ物」にあたるとされています。

    • いたずらに性欲を刺激・興奮させること
    • 普通人の正常な性的羞恥心を害すること
    • 善良な性的道義観念に反すること


    警察など捜査機関は、対象物がこれらに該当しているかどうかで、立件するか判断しているといえるでしょう。

  3. (3)「公然と陳列」とは何か

    「公然と陳列」とは、不特定又は多数の人がその内容を認識できる状態に置くことをいいます。ビデオや映画の上映、録音テープの再生、インターネット上で不特定多数の人が容易に見られる形で画像データを公開することなどがこれに該当します。

    軽い気持ちでインターネット上に性器を露出した画像などをアップロードすることによって検挙につながる可能性があるということです。

2、わいせつ物頒布等罪で逮捕された場合

万が一、わいせつ物頒布等罪で逮捕されてしまった場合はどのような対策を取るべきでしょうか。

  1. (1)弁護士に依頼し、72時間以内の釈放を目指す

    早期に解決し、日常を取り戻したいのであれば、まずは、できるだけ早く弁護士に依頼することをおすすめします。

    前述の通り、わいせつかどうかの判断基準は明確ではありません。問題とされた対象が、わいせつ物ではなく芸術作品であるという認識であるならば、弁護士の働きかけによって、捜査機関を説得する余地があるともいえます。

    逮捕後は、48時間以内は警察で取り調べを受けます。この期間中に逃亡や証拠隠滅のおそれがないとされれば、たとえ嫌疑が晴れなくても身柄は釈放となる在宅事件扱い(報道では書類送検と報じられる措置です)となる可能性が高まります。自宅に帰ることができ、以降は検察の呼び出しに応じつつ捜査に協力します。

    身柄ごと検察に送致された場合は、検察官は逮捕後72時間を期限に、裁判所に対して「勾留(こうりゅう)請求」を行うかどうか判断します。裁判所が勾留を認めると、10日間ないし20日間ものあいだ身柄を拘束されて取り調べを受けることとなります。勾留となれば、仕事や学業に影響が及ぶことは避けられません。

    なお、逮捕後は、勾留の要否の判断がされるまでは家族であっても原則的に面会は許可されません。ただし、弁護士であれば、逮捕後も自由に接見が可能なため、取り調べにどのように対応すべきかアドバイスをしたり、本人に代わって証拠を集めたりすることができるようになるのです。

    外部との連絡も取れず、ひとりで取り調べを受けていると、精神的に追い詰められ、不利な供述をしてしまう可能性もあります。可能な限り早く弁護士に依頼をし、サポートを受けることをおすすめします。

  2. (2)示談

    何らかの形で特定の被害者が存在する場合、示談交渉を行うことは可能です。
    示談とは、当事者同士で事件の解決を目指すことを指します。具体的には、加害者が謝罪と賠償を約束し、被害者がこれを受け入れて被害届を取り下げるなどして、「処罰を望まない」とする宥恕(ゆうじょ)文言を示談書で示すことを目標とします。被害者との示談が成立すれば、刑事事件としては不起訴となる可能性が高まります。

    短時間で示談交渉をまとめるには、賠償金の相場観や示談経験の豊富な弁護士の知見に頼ったほうがよいでしょう。

3、わいせつ物頒布等罪で罪を認める場合の弁護活動とは

認識不足や悪ふざけ、または営利目的でわいせつ物を頒布してしまった場合もあるでしょう。逮捕の根拠となった犯罪事実を認める場合には、弁護士はどのような弁護活動を行うのでしょうか。

  1. (1)反省文を提出し、微罪処分や不起訴処分を目指す

    弁護士は被疑者との話し合いを通じて罪を犯した理由を引き出し、反省させ、二度と起こさないためにできることを共に検討します。

    弁護士は、反省内容を踏まえた反省文作成についてアドバイスします。反省文で真摯な態度が捜査機関に伝われば、微罪処分や不起訴処分を相当とする判断の材料となる可能性があるためです。

    なお、「微罪処分」とは、検察に送られる前の段階で罪の被害が軽微で反省をしている場合、検察に送致せず厳重注意のみで釈放する処分のことを指します。微罪処分や不起訴処分の場合は、逮捕の前歴は残りますが、前科はつきません。

  2. (2)再犯防止のための環境調整を行う

    弁護士は、再犯を防ぐために、環境調整と呼ばれる取り組みも行うこともあります。

    罪を犯してしまった人物の環境が原因で再犯の可能性が感じられる場合、家族等に協力を求め、それを改善するよう調整を行います。過剰な性的欲求や自己顕示欲などが見受けられる場合、医療機関や専門機関のカウンセリングを受けさせるよう働きかけます。

    このような対策を行うことで、十分な更生支援体制があるとして、起訴猶予や不起訴となる可能性が高まります。

  3. (3)不当に得た利益があれば贖罪(しょくざい)寄付をする

    贖罪寄付は、犯罪によって得た利益を、犯罪被害者支援団体などに寄付し、反省の意思を示すことです。検事や裁判官の判断や判決内容について、一定の考慮材料となる可能性があります。

    わいせつ物頒布等罪は、特定の被害者がいないケースも多いものです。被害者との示談が見込めない場合の次善の手段という意味合いが強いともいえます。

4、まとめ

わいせつ物頒布等罪は、時にはSNSへの写真投稿など、簡単な操作で犯す可能性のある罪です。多くの人にとって無関係とはいえない犯罪ですが、初犯であれば、真摯な反省を示すことで早期解決が望める可能性があります。

また、芸術表現としての作品がわいせつ物として摘発されたのであれば、弁護士の知見を借り、わいせつ物ではない旨を申し立てる道もあるでしょう。自分の行動に不安がある場合は、ベリーベスト法律事務所水戸オフィスへご相談ください。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が、状況に応じた適切な弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています