息子がストーカーで水戸署から禁止命令!? 逮捕との違いは?
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水戸署の警察官が平成27年3月に、ストーカー規制法違反と脅迫罪の疑いで逮捕される衝撃の事件がありました。平成27年6月には、懲役1年6ヶ月、保護観察付き執行猶予5年の判決が下っています。この警察官がストーカーで逮捕されたケース以外にも、近年ストーカー規制法に関するニュースを見聞きする機会が増えました。
ストーカーという言葉自体は世に広まったものの、ストーカー規制法で取り締まりの対象となっている具体的な行為や警告や禁止命令、逮捕との違いについて、詳しく説明できる方はあまり多くないようです。
もし、家族がストーカーの禁止命令を受けたらどうすればいいのでしょうか。ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が、ストーカー規制法と、家族が知っておくべきことについて解説します。
1、ストーカー規制法とはどのような法律?
ストーカー規制法は、刑法の特別法としてストーカー行為などを禁止している法律です。平成12年に制定され、平成28年に改訂されています。正式名称は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」といいます。
本来、恋愛関係など人間関係から発展したトラブルについて、警察は介入しない姿勢を取っていました。しかし、凶悪な犯罪などが発生したことから、大きな社会問題となりました。これらの行為をきちんと規制すべきとの社会の要請により、この法律が定められたという経緯があります。
ストーカー規制法で取り締まりの対象となる行為は、一方的な恋愛感情や好意が受け入れられなかった恨みを発端に、恋愛感情がある相手かその家族、あるいは身近な人に対して行われる「つきまとい等」と「ストーカー行為」です。恋愛感情や好意が根本にない行為については、迷惑規制条例などで取り締まりを受けることになります。
平成12年までは取り締まりの対象ではなかった行為が含まれていることから、当事者の考えが食い違うケースは少なくありません。「つきまとい等」や「ストーカー行為」の詳細については、ストーカー規制法で詳細に記載されています。
具体的に「つきまとい等」とは、以下8つの行為を指します。
- つきまとい、待ち伏せ、立ちふさがり、見張り、押しかけ、うろつきなどの行為
- 監視していることを匂わせる言動をすること
- 交際や面会、プレゼントの受け取りなどを強要すること
- 乱暴な言動をすること
- 無言電話をかける、もしくは拒まれているのに何度も電話やメール、SNSで接触しようとすること
- 汚物や動物の死体などを送りつけること
- 相手の名誉を毀損(きそん)するような言動をすること
- 性的羞恥心を害する文書や画像などを送りつけること
「ストーカー行為」は、「つきまとい等」で明記されている行為を用いて、相手に不安を覚えさせる行動を繰り返しすることを指します。
2、ストーカー規制法の警告や禁止命令とは?
通常は、被害者から訴えがあった後、警察による「警告」や「禁止命令」などの対応を経て、それでもやめない場合に逮捕されるという手順が踏まれることになります。
「警告」は、「つきまとい等」の行為をしているような場合に、文字通り警告を行うことです。警告は、被害者の要望があったとき、一定の条件のもと、書面や電話などで行われます。警告のみの場合は、法的な強制力はありません。
「禁止命令」は、都道府県公安委員会が「その行為をやめなさい」と命令することができる制度です。被害者が要望した場合のほかに、警告が聞き入れられなかったときや、警察が職権で必要だと判断したときに発令されます。具体的には、被害者に接触しないこと、連絡を取らないこと、近づかないことなどが内容に含まれます。また、なにか一定の行為をやめるようにするだけでなく、被害者の写真などの個人情報を捨てるよう命じられる場合もあるでしょう。禁止命令には法的な強制力があり、これに違反すると、ストーカー規制法違反で有罪になったとき、処せられる刑罰が重くなります。
以前は、警告を経てから禁止命令へと段階が踏まれていましたが、法改正により、警告を出さなくても、禁止命令がされるようになりました。いずれにしても、警告や禁止命令に反して、それでもなお連絡を取ろうとしたり接近したりするときは、逮捕されてしまうことがあります。
3、ストーカー規制法の量刑は?
ストーカー規制法に違反した場合の量刑は以下のとおりです。
●「つきまとい等」、もしくは「ストーカー行為」を行った場合
1年以下の懲役または100万円以下の罰金
●禁止命令が出ているにもかかわらず違反した場合
2年以下の懲役または200万円以下の罰金
●ストーカー行為の手助けをするなど、その他の禁止命令に違反した場合
6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
もし実際に相手に危害を加えてしまったときは、脅迫罪や暴行罪、傷害罪や殺人未遂、殺人罪など、それぞれで規定されている刑罰に処されることになるでしょう。
4、禁止命令と逮捕との違いは?
禁止命令と逮捕の違いのポイントは、行為と段階にあります。「ストーカー行為」の場合、一般的に被害者が提出する被害届を元に警察による捜査などが行われます。
捜査の上で、逮捕されることが妥当だとされた場合、警察官によって、ストーカー行為をしている人が逮捕されます。なお、逮捕は「身柄を拘束する」行為に該当するため、犯罪の嫌疑に加えて、逃亡や証拠隠滅の危険性があるなど逮捕の必要性が求められます。つまり、逮捕が必要な理由を裁判所に申請し、これが認められて逮捕状が発行されなければ、警察は逮捕することができないということです。ただし、現行犯逮捕の場合は犯行が明らかであることから、逮捕が特別に認められています。
他方、「ストーカー行為」には至らず、「つきまとい等」の行為にあたる場合は、被害者の要望によって対応が分かれます。被害者が「警告」を要望したときは、警察から行為者へ「警告」が実施されます。前述のとおり、警告の段階で行為をやめていれば、逮捕されることはないでしょう。
禁止命令を要望した場合、緊急性があると判断されれば、直ちに「禁止命令」がなされます。しかし、緊急性がないと判断された場合は、警察から行為者に対して、聴聞という意見や考えを聞く機会が与えられます。行為者は、聴聞で自分の意見を述べることができますが、それでも必要だと判断されたときは、禁止命令がされます。
なお、「禁止命令」は、有効期間が1年間に設定されています。有効期間には延長制度があり、被害者の申し出または職権によって、聴聞などを実施した上で、有効期間の延長処分などがなされることもあります。
「禁止命令」をもってしてもなお、つきまとい等の行為をやめない場合は、禁止命令などに違反するとして、逮捕される流れになります。前述のとおり、ストーカー行為が悪質な場合はすぐに逮捕されるようなときもありますが、禁止命令は、逮捕の前段階にあたる手続きだといえます。
5、家族が逮捕されたらどうする?
もし、あなたの家族がストーカー規制法違反に基づいた警察から警告や禁止命令を出されていることが発覚したのであれば、すぐにでもその行為をやめさせるようにすべきでしょう。段階で禁止されている行為をしないようにすれば、逮捕そのものを回避できる可能性が高まります。
家族としては落ち着かない日々が続くかもしれません。しかし、逮捕されてしまうと、前科がついてしまう可能性もあり、あなたの家族の社会復帰が困難になる場合もあります。大変な負担となると考えられますが、本人の話を聞く、禁止命令に違反しないよう見守る必要があるでしょう。
なお、やめない場合や、逮捕されるのではないかと不安な場合は、弁護士に相談して、アドバイスを受ける方法もあります。
万が一、あなたの家族がストーカー規制法違反で逮捕されてしまったら、身柄釈放や不起訴処分の獲得を目指すことが、早く日常生活に戻るための方法といえます。これらを実現させるためには、被害者側と示談を成立させることや、逮捕された本人が反省の意思表示をすることなどが求められます。
まず、逮捕から最大72時間、家族は本人と面会することができません。しかし、弁護士は面会し、詳しい状況を聞くことができます。もし家族が逮捕されてしまったら、できるだけ早期に弁護士を依頼して、家族の思いを伝えてもらったり、本人に向けて法的なアドバイスをしてもらったりすることをおすすめします。
早期に弁護活動をはじめられることによって、さまざまな対応も可能となります。たとえば、被害者側との示談交渉を行うよう、依頼することもできるでしょう。
6、まとめ
警察からストーカー規制法に基づく警告や禁止命令などを受けた場合、警告や命令に違反して行為を続けてしまうと、逮捕されることもあります。
万が一家族が逮捕されてしまった場合は、早期の釈放と社会復帰を目指すためにも、被害者側との示談を検討する必要があります。しかし、ストーカー事件における示談交渉は困難になることが予想されるため、弁護士に依頼することをおすすめします。
ストーカー規制法の禁止命令などでお困りなら、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスまでご連絡ください。水戸オフィスの弁護士が力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています