横領罪に問われたら! 懲役期間はどのくらい? 示談は可能なのか
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平成30年、茨城県内の自治体で勤務する女性が業務上横領を行ったとして懲戒免職処分になったことが報道されました。自治体は警察に被害届を提出したものの、女性は全額弁済し、不起訴となっています。
横領を行うと重い刑罰を受けたり、着服したぶんの弁済を求められたり、社会的地位を失う可能性があります。ここでは、横領罪の種類や刑罰、仮に横領してしまったり横領を疑われたりした場合の対処法について、水戸オフィスの弁護士が解説します。
1、横領罪の概要と種類
横領罪には複数の種類があり、どれに該当するかによって量刑が異なります。
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(1)横領罪とは
横領罪とは、刑法第252条から255条において「自己の占有する他人のものを横領すること」と規定されている犯罪です。
「自己の占有する他人のもの」とは、管理や保管を任された財物です。当事者間の信頼関係に基づき預かったり管理を依頼されたりしている物を勝手に使う、売却するなどした場合に横領罪に問われます。
なお、管理をする依頼を受けていない他人の物を盗む行為は「窃盗罪」に該当します。たとえば、図書館の本を返さずに自分のものにする行為は「横領」にあたり、他人のカバンの中に入っていた本を勝手に持ち帰り自分のものにすると窃盗になると考えられるでしょう。
窃盗罪として有罪になれば、「10年以下の懲役もしくは、50万円以下の罰金」が科されます。横領罪は該当する犯行内容によって量刑が異なります。 -
(2)横領罪の種類と懲役
横領罪の種類は、大きく分けて3種類です。
① 単純横領罪
単純横領罪は刑法252条で「自己の占有する他人の物を横領した者」と規定されています。自分が管理をしている他人の財産金品を横領したときに成立する罪です。
以下のような行為は単純横領罪に該当し、有罪になった場合は「5年以下の懲役」になります。- 他人から借りた服を無断で売却する
- 他人から預かったお金を自分のために使う
② 業務上横領罪
業務上横領罪は刑法253条で「業務上自己の占有する他人の物を横領した者」と規定されています。単純横領とは異なり、業務上管理していた物を横領した場合に成立する罪です。単純横領罪は、預かっているだけでしたが、業務上横領は「業務で」管理しているものを横領した場合に問われる可能性があります。
たとえば、以下のようなケースが業務上横領に該当する可能性があり、有罪になれば単純横領より量刑が重い「10年以下の懲役」に処されることになります。- クリーニング店の従業員が顧客の服を自分のものにする
- 町内会長が町内会費を使い込んだ
なお、従業員が会社のお金を勝手に使った場合、当然に業務上横領罪になるというわけではありません。たとえば、会社の預貯金を管理する部署で金庫管理を担当している者が横領すれば業務上横領となりえますが、他部署で勤務している方が金庫から会社のお金を盗んだ場合は窃盗になります。
業務上横領が成立するポイントは、「業務で委託されて管理や保管していたかどうか」です。
③ 遺失物等横領罪
刑法第254条によると遺失物等横領とは、「遺失物、放流物その他占有を離れた他人の物を横領した者」と規定されています。簡単にいえば、「他人が落とした物、紛失した物」「他人の管理を離れた物」を横領する行為です。
たとえば、海に漂着したボート等を勝手に自分のものにするようなケースが該当します。ただし、ベンチや路上に落ちている物を自分のものにした場合、落ちている物の性質、落としてから取るまでの時間、持ち主との距離等によって「窃盗罪」に問われる可能性もあります。
遺失物横領罪で有罪になれば、「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは過料」に処されます。
2、横領罪は示談が有効
横領をしてしまった場合、どの横領にせよ被害者や被害を受けた会社に対して、被害額を弁済して示談する必要があります。示談をすることで、その後の人生に大きな不利益を与える事態を回避できる可能性があるためです。ここでは、横領罪においての示談の有効性について説明します。
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(1)横領罪で示談が有効な理由
横領罪が会社側に発覚すれば、警察に被害届を提出されたり、告訴されたりすることがあります。逮捕されてしまえば、場合によっては長期間の勾留などの身柄拘束を受けることもあるでしょう。起訴されて有罪になる可能性も高く、本人だけでなく家族への社会的影響も大きくなってしまう可能性は否定できません。
それらの事態を回避できる可能性を高めることができる手段が「示談」です。示談とは、事件の当事者同士による話し合いによって事件を解決しようとするものです。刑事事件における示談では、被害者に謝罪するとともに賠償を行い、被害者の許しを得ることを目指します。
警察に事件を知られる前に示談が成立すれば、被害者が被害届や告訴状を提出しないよう依頼することができます。もし、横領したことがまだ職場に発覚していないのであれば、早急に弁済資金を用意して示談を進めたほうがよい可能性が高いでしょう。
すでに、警察に事件を知られていて逮捕されたり在宅事件扱いとなっていたりする場合でも、示談には意味があります。起訴前であれば、示談が成立することで被害届等が取り下げてもらうこともできるでしょう。被害届を取り下げてもらえれば、身柄が釈放される公算が高くなると考えられます。また、示談が成立していて、被害者側から「加害者を許す」「処罰を望まない」などの言葉をもらえていれば、不起訴処分になる可能性を高めることができます。
起訴されたあとに示談が成立した場合でも、無意味ではありません。示談が成立していることによって情状が酌量され、執行猶予付き判決が下るなどの、比較的軽い処分で済むケースもあります。
刑事事件においては、警察や検察、裁判所は被害者の処罰感情を非常に重視します。できるだけ早い段階で示談することで、横領によって起こる可能性がある社会的影響を最小限に抑えることができるでしょう。 -
(2)示談が成立しない場合
示談が成立しない場合は、どうなるのでしょうか。
横領が被害者サイドに発覚すると、まずは被害額の弁済を求めます。その時点で弁済ができなければ交渉は決裂し、警察に被害届等が出される可能性が高いでしょう。警察は所定の捜査を行った上で、逮捕状を請求し、発行されれば逮捕します。
そうなると、身柄が長期間拘束される可能性もありますし、起訴されれば刑事裁判が開かれ高確率で有罪になってしまいます。
それを避けるためには、弁護士等に相談して早急に示談を成立させることが重要です。横領してしまった方は弁済するための資金がなく、示談が進められないことが少なくありません。早期に弁護士等に相談した上で分割返済などの措置を検討しましょう。
3、横領事件の逮捕後の流れと弁護士の役割
次に逮捕された場合の流れと、各段階における弁護士の役割について解説します。横領罪で逮捕されたら、なるべく早期に弁護士へ相談してください。
まず、横領罪で逮捕された場合、次のような流れで罪を裁かれます。
- ①逮捕後、警察官による取り調べ(最長48時間)から検察への送致
- ②検察における取り調べ、および最長24時間以内に「勾留(こうりゅう)」の必要性判断
- ③勾留がある場合、原則10日、延長の場合最長20日
- ④勾留がない場合は「在宅事件扱い」へ。呼び出しに応じて取り調べを受ける
- ⑤検察による起訴・不起訴の判断⑥刑事裁判
逮捕後48時間は警察で、その後24時間は検察官による取り調べが行われます。この合計72時間は原則として家族や知人などの面会は不可能で弁護士しか接見できません。弁護士を依頼することで、閉鎖的な空間での取り調べで、不利な自白をしないように適切なアドバイスを受けることができます。
また、逮捕後72時間は勾留を回避するためにも重要な時間です。検察に送致されると、検察官は24時間以内に「勾留」が必要かどうかを判断します。
「勾留」とは最大20日続く身柄拘束です。主に、逃亡や証拠隠滅の危険性があると判断されたときに、検察官が裁判所に対して勾留請求を行います。勾留が認められたら身柄の拘束期間が長引きます。社会的影響を考慮するのであれば、勾留を回避するための弁護活動が重要です。
逮捕後早い段階で弁護士に依頼することで、勾留が不要であると主張してもらうことができます。勾留されなければ帰宅可能です。
また、弁護士は、身柄の拘束を避けるための弁護活動と行うととともに示談の成立を目指します。
勾留されてもされなくても、検察官は「起訴・不起訴」を判断します。起訴と判断されれば、刑事裁判が開かれ、有罪を免れることは困難です。しかし、不起訴と判断されれば刑事裁判は開かれず前科もつきません。
弁護士に依頼することで、身柄の拘束を回避、また不起訴処分の獲得、など、多くの不利益を回避できます。
4、まとめ
横領をしてしまった場合は、被害者側との示談が非常に重要です。いち早く被害額を弁済し、示談を成立させることで逮捕を回避しましょう。
逮捕された場合は72時間以内に弁護士に依頼して、勾留を阻止する必要があります。勾留された場合は不起訴や早期の釈放を目指して示談の成立を急がなければなりません。そのためには、弁護士に早期に依頼して、弁護活動および示談交渉を進めてもらうことが重要です。
ベリーベスト法律事務所水戸オフィスでは横領してしまった方の相談を受け付けています。ひとりで悩まずなるべく早くご相談ください。被害者側との示談を見据えて適切なアドバイスを行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています