車上荒らしはどのような罪になる? 量刑や逮捕後の流れを弁護士が解説

2021年07月13日
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車上荒らしはどのような罪になる? 量刑や逮捕後の流れを弁護士が解説

警察庁の「令和元年の刑法犯に関する統計資料」を見ると、令和元年における全国の車上荒らしの認知件数は37425件でした。平成22年からの統計を見ると減少傾向ですが、いまだに多くの被害が発生している犯罪です。車上荒らしは身近な犯罪で、出来心で手を染めてしまう方もいるかもしれません。一度、車上荒らしに成功すると、次々と車を狙うケースも少なくないようです。実際に車上荒らしの容疑で逮捕されると、余罪が数十件あるというケースもあります。

それではもしも車上荒らしで捕まったらどのような罪に問われるのでしょうか? 量刑や逮捕されてからの流れを、水戸オフィスの弁護士が解説します。

1、車上荒らしはどのような罪になる?

車上荒らしの罪状は内容によって異なり、車内にある物を盗めば窃盗罪、車を傷つけるなど破損させれば器物損壊罪に該当します。ここでは、それぞれの概要を解説します。

  1. (1)窃盗罪

    車内にある物を盗んだ場合は刑法第235条で規定された窃盗罪が成立する可能性があります。

    窃盗罪とは他人の財物を奪った場合に成立する罪です。また、窃盗が成功せず未遂で終わった場合も、窃盗未遂の罪に問われる可能性があります。

  2. (2)器物損壊罪

    他人の物を傷つけたり壊したりした場合は、刑法第261条の「器物損壊罪」が成立します。

    車上荒らしのために、車の窓ガラスやドアの鍵を壊した場合は、窃盗罪のほかに器物損壊罪に問われる可能性があるでしょう。器物損壊罪はガラスを割る、鍵を壊すなどの大きな損傷ではなくても、「ドアに傷をつけた」など、小さな損害を与えた場合も成立する可能性があります。車上荒らしの際に乱暴な動作を行った場合は、窃盗罪に器物損壊罪が加わってしまう可能性があるでしょう。

2、車上荒らしで有罪になったときの量刑

車上荒らしは、窃盗罪と器物損壊罪の両方の罪に問われる可能性があります。場合によってはどちらか一方だけになる可能性もあります。

どの罪状が適用される場合でも、初犯あるいは被害が少なければ、不起訴、もしくは執行猶予付き判決となる可能性があります。ただし、必ずしも執行猶予が付くとは限らず、実刑判決が下されるケースも少なくありません。

  1. (1)窃盗罪の刑罰

    窃盗罪は刑法第235条によって「10年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処す」と規定されています。窃盗未遂罪であっても窃盗罪と同様の処罰の対処となり、刑罰が科される可能性があるでしょう。ただし、一定の条件を満たせば減刑や免除が認められる可能性も考えられます。

  2. (2)器物損壊罪の刑罰

    器物損壊罪は刑法第261条で「3年以下の懲役または30万円以下の罰金、もしくは科料に処する」と定められています。器物破損罪についても未遂となるケースがありますが、実際に壊したり傷つけたりしていなければ罪に問われることはありません。

3、犯行後日、逮捕される可能性は?

車上荒らしの容疑で逮捕されるときは、一般的に犯行時に逮捕される「現行犯逮捕」、そして車上荒らしのときではなく,その後に逮捕される「通常逮捕」が行われます。

それぞれの違いを解説します。

  1. (1)現行犯逮捕と通常逮捕

    「現行犯逮捕」は、事件当日に車上荒らしを行った現場で身柄の拘束を受けることを指します。たとえば、車上荒らしの現場に被害者や目撃者がおり、そのまま身柄を取り押さえられて警察署に連行される、あるいは通報により警察官が駆けつけ、その場で逮捕されるケースが想定されます。現行犯逮捕には逮捕状は必要ありません。犯行を目撃した一般人も犯人を取り押さえることが許されています。

    通常逮捕は、逮捕状を用意した警察官によって身柄の拘束を受ける逮捕方法です。警察がしかるべき捜査を行い、罪を犯している可能性が高いと判断した場合に、裁判所に逮捕状を請求します。裁判所が逮捕状を発効したのち、それを用いて逮捕に踏み切ります。

    ただし、通常逮捕を行う前に警察から連絡が入り、事情聴取を求められることがあります。拒否することもできますが、素直に応じたほうがよいでしょう。ひとりで向かうことに不安があるときは、弁護士を相談することをおすすめします。

  2. (2)犯行から後日逮捕されるまでの期間

    車上荒らしを行ってから逮捕されるまでの期間に、法律上決まりはありません。いつ逮捕されるかは捜査の進み具合次第となります。

    スムーズに捜査が進めば犯行日から1ヶ月以内に逮捕されるケースが多い傾向があります。関係者が複数いる、捜査が難航するなどすると逮捕状を請求できないので、後日逮捕に至る際は、事件発生から半年や1年後になっているケースもありえます。車上荒らしを行ってから、すぐに連絡が来なくても安心はできないということです。

4、逮捕された後の流れ

現行犯逮捕であればそのまま警察署に連行されますが、後日逮捕は自宅などに逮捕状を持った警察官が訪れて、身柄を拘束されます。

  1. (1)逮捕から起訴まで

    警察署に連行された後は被疑者として留置場で身柄を拘束されます。警察での身柄の拘束時間は逮捕状を示して逮捕してから、または現行犯逮捕から48時間です。48時間で警察官は証拠をそろえ、検察官に事件を送致します。送致を受けた検察は、送致から24時間以内に「勾留(こうりゅう)」するかどうかを判断します。

    勾留とは、引き続き身柄を拘束する処分のひとつです。勾留が認められるケースは、証拠隠滅の恐れがある場合や逃亡する危険性がある場合と定められています。検察官が「勾留が必要」と判断すると、裁判所に勾留請求を行い、認められれば10日間、拘置所などで身柄を拘束されてしまいます。場合によってさらに10日間勾留が延長されることもあります。

    検察は、勾留期間中に起訴するかどうかを判断します。起訴と判断した場合は、刑事裁判が開かれます。不起訴になれば身柄は解放され、前科がつくこともありません。起訴が決定すると、場合によっては保釈が認められ、裁判までは自由の身となります。

    刑事裁判が開かれると約99%が有罪になるため、執行猶予付き判決を目指す傾向にあります。少しでも重すぎる刑罰に処されないようにするためにも、早期に弁護士を依頼し、被害者との示談を成立させる必要があります。

  2. (2)早く釈放されるケース

    以上が、一般的な逮捕後の流れです。

    車上荒らしの被害が非常に軽微で本人が犯行を認め反省している場合は、「略式起訴」という簡単な手続きが取られる可能性もあります。「略式起訴」は被疑者が罪を全面的に認めていて、求刑が罰金刑となった際に適用される簡易的な裁判です。ただし、罰金刑であっても前科がつくことに変わりありません。

    また、早期に弁護士に弁護を依頼することで、起訴や勾留を回避できる可能性があります。勾留されてしまうと最大20日間も身柄を拘束されてしまい、社会生活に大きな影響を受ける可能性があります。弁護士に依頼することで検察官や裁判官に勾留回避を働きかけることが可能です。

    また、勾留されたのち、公判請求された場合も、弁護士のサポートによる保釈が許されれば、身柄は解放されます。

5、示談の重要性

逮捕される前はもちろん、逮捕後であっても、被害者と加害者が被害額や慰謝料などを話し合い、示談が成立すれば、起訴されない可能性が高くなります。示談が成立すると、加害者は被害者に対し示談金を支払い、示談の条件を履行する義務を負います。弁護士に依頼し、被害者と示談することによって起訴を回避できるケースもあります。

示談が成立しても起訴されてしまうケースもありますが、その際も示談が成立していれば、情状酌量されるでしょう。

なお、示談金の内訳には、被害者から盗んだ物の賠償とともに、車の修理費用、慰謝料などを含みます。犯行内容によって大きく異なるため、相場はなく、個別で判断しなければなりません。

示談交渉は当事者同士で行うこともできますが、警察が被害者の連絡先を加害者に伝えることはありません。初期に示談交渉を行う場合は弁護士への依頼が必要不可欠です。

早期に示談して、罪を軽減、もしくは被害届を取り下げてもらうためには、なるべく早く弁護士に交渉を一任することをおすすめします。また、逮捕直後や勾留前に弁護士へ連絡することで、減刑や勾留期間の短縮、また、不起訴になるよう働きかけることもできます。万が一の際は、まず弁護士に相談しましょう。

6、まとめ

車上荒らしは窃盗罪に該当する犯罪です。万が一、車上荒らしで逮捕された場合は、できるだけ早く弁護士に依頼して示談交渉を行い、被害者と示談を完了させることによって、将来に至るまで受ける影響を最小限に抑えることができます。

ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスでは刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士が、あなたの状況に応じて適切なアドバイスを行います。すでに逮捕されている場合は一刻を争いますので、まずはご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています