自首のメリット│詐欺(特殊詐欺)罪で逮捕・起訴される前にすべきこと

2022年05月11日
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自首のメリット│詐欺(特殊詐欺)罪で逮捕・起訴される前にすべきこと

茨城県警察では、平成26年7月1日から振り込め詐欺などの特殊詐欺の名称を「ニセ電話詐欺」に統一しています。令和2年の茨城県内におけるニセ電話詐欺の認知件数は、合計で306件あり、被害額は5億5022万4000円でした。前年度と比較すると認知件数および被害額はともに減少傾向にありますが、それでも依然としてこれだけ多くの被害が生じています。

振り込め詐欺などの特殊詐欺では、SNS等で仲間を募集しているケースもあり、バイト感覚で犯罪に加担してしまうことも少なくありません。しかし、特殊詐欺は近年厳罰化の傾向にありますので、バイト感覚であろうとも初犯であろうとも、実刑になり得ます。

そのため、家族が詐欺の加害者になってしまったことを知った場合には、早期に自首などの対応を検討しなければなりません。今回は、家族が詐欺の加害者になってしまった場合における自首について、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が解説します。

1、自首のメリットと成立要件

詐欺などの罪を犯してしまった場合には、早期に自首することをおすすめします。まずは、自首することによるメリット、自首が成立する条件(要件)について解説します。

  1. (1)そもそも自首とは

    自首とは、罪を犯した人が捜査機関に発覚する前に、自発的に自己の犯罪事実を申告し、その処分を求める意思表示をいいます。自首をすることによって、その刑は任意的に減軽されることになります(刑法42条1項)。

  2. (2)自首のメリット│刑の減軽

    任意的な減軽とは、刑を軽くすることが法的に定められているというわけではなく、あくまで情状面等で考慮された結果、量刑が軽くなる可能性が高まる、ということにとどまります。

    もっとも、自首に意味がないわけではありません。自首をすると罪が減軽される可能性は確実に上がります。また、自首をすることによって、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないことを示すことができるため、逮捕や勾留といった身柄拘束を回避できる可能性が高まります。これは自首の大きなメリットといえるでしょう

  3. (3)自首の成立要件

    自首が成立するためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

    ① 捜査機関に発覚する前であること
    捜査機関に発覚する前とは、犯罪事実が捜査機関にまったく認知されていない場合および犯罪事実は認知されていたとしても犯人が誰であるかが認知されていない場合をいいます。
    犯人が誰であるかわかっているものの、その所在が明らかになっていないという場合には、自首は成立しません。

    ② 捜査機関に対して罪を申告すること
    自首は、捜査機関に対して自ら進んで罪の申告をすることが必要になります。捜査機関とは、検察官または司法警察員のことをいい、警察の階級では「巡査部長」以上の警察官がこれに該当します。また、犯人が自発的に申告することが必要となりますので、捜査官の取り調べに対して受動的に応答をして犯罪事実を供述したとしても自首は成立しません。

2、詐欺罪で問われる罪

つぎに、詐欺罪を犯してしまった場合にどのような刑罰が科されるか、詐欺罪が成立するために必要な条件(要件)、そして特殊詐欺(オレオレ詐欺)における罪の重さについて見ていきましょう。

  1. (1)詐欺罪の刑罰

    詐欺罪とは、刑法246条で規定されている犯罪であり、人を欺いて財物をだまし取る犯罪行為のことをいいます。詐欺の罪を犯した場合には、10年以下の懲役に処せられる可能性があります。

  2. (2)詐欺罪が成立する要件

    詐欺罪が成立するためには、以下の構成要件を満たす必要があります。

    ① 欺罔(ぎもう)行為
    まず、欺罔行為が必要となります。欺罔行為とは、人を欺きだます行為のことをいいます。たとえば、オレオレ詐欺を例に挙げると、被害者にお金を振り込ませるために、被害者の身内を装う行為のことをいいます。また、持続化給付金詐欺のように、会社員なのに事業者であると偽り、虚偽の申請書を提出する行為も詐欺罪の欺罔行為にあたります。
    欺罔行為は、詐欺罪の実行行為にあたりますので、欺罔行為をしたものの金銭を得ることができなかったという場合でも、詐欺未遂罪は成立します。

    ② 錯誤
    次に、加害者の欺罔行為によって、被害者が錯誤に陥ったことが必要になります。錯誤とは、簡単にいえば、加害者の嘘によって被害者がだまされたという状態のことです。
    被害者が加害者の嘘を見破り、だまされなかった場合には、錯誤の要件を満たしませんので、詐欺既遂罪ではなく、詐欺未遂罪が成立するにとどまります。

    ③ 財物の処分行為
    さらに、錯誤に陥った被害者が加害者に対して自主的に財物を交付することが必要になります。加害者が、被害者の意思に基づかずに財物を奪った場合には、詐欺罪ではなく窃盗罪が成立します。

    ④ 財物の移転
    そして、欺罔行為、被害者の錯誤、被害者による処分行為という一連の流れによって、加害者に財産上の利益が移転した段階で詐欺罪が成立します。

  3. (3)特殊詐欺(オレオレ詐欺)の「かけ子」「受け子」の刑罰

    ① かけ子とは
    かけ子とは、被害者に直接電話をするなどして、被害者をだます役割を担う人のことをいいます。かけ子は、被害者に対して欺罔行為をするという詐欺罪の実行行為をする人物ですので、被害者がだまされて、お金の振り込みなどをしてしまうと詐欺罪が成立することになります。

    実際に被害者をだましているという点で、特殊詐欺の役割の中でも中心的な役割を担っていますので、重く処罰される傾向にあります。

    ② 受け子とは
    受け子とは、だまされた被害者からお金やキャッシュカードなどを受け取る役割を担う人のことをいいます。受け子も詐欺罪に関与していますので、被害者からお金やキャッシュカードを受け取った時点で詐欺罪が成立します。

    受け子は、被害者と対面して自分の顔をさらすことになりますので、特殊詐欺グループの中でも末端の立場の人が多く、アルバイト感覚で犯行に関与していたという人も多くいます。

3、自首後の刑事手続き

詐欺罪に加担してしまい、捜査機関に自首をした場合には、その後どのような流れで刑事手続きが進んでいくのでしょうか。

  1. (1)捜査機関による任意の取り調べ

    自首をしたとしても、すぐに逮捕されるということはほとんどありません。捜査機関が被疑者を逮捕するためには、裁判所に逮捕状を請求する必要があるからです。

    自首の場合、そもそも捜査機関が、まだ犯罪事実や犯人を認知していない状況ですので、事実確認をすることなくただちに逮捕することはしません。そのため、まずは、捜査機関による任意の取り調べが行われます。

  2. (2)逮捕・勾留または在宅捜査

    任意の取り調べの結果、捜査機関が被疑者に逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあると判断した場合には、逮捕状の請求が行われ、被疑者は裁判所から交付された逮捕状に基づいて逮捕される可能性があります。

    逮捕後は、警察で取り調べを受けてから48時間以内に検察への身柄の送致が決定されます。検察に送致されれば、さらに取り調べや捜査が必要かどうか、24時間以内に勾留請求の判断がなされます。検察官が勾留請求を行わない場合には、釈放されますが、勾留決定がなされた場合には、原則10日間、最長20日間の身柄拘束となります

    受け子やかけ子など、特殊詐欺に関わっている場合、組織的な犯罪とみられ、勾留期間が長引く可能性は否めません。また、万が一、特殊詐欺グループから弁護士をつけるといわれても、必ず断り、刑事事件の実績が豊富な信頼できる弁護士に依頼するようにしましょう。

  3. (3)起訴または不起訴

    捜査機関は、必要な捜査を行い、最終的に被疑者を起訴するか不起訴にするかを判断します。起訴された場合には、犯した罪についての裁判へと進みますが、不起訴になった場合には、身柄も解放され、前科が付くこともありません。

4、家族が詐欺罪で逮捕されたら

家族が詐欺事件に関与していることがわかった場合には、以下のような対応をする必要があります。

  1. (1)弁護士への依頼

    家族が詐欺事件に関与していることがわかった場合には、その後の対応を検討するためにも早期に弁護士に相談することをおすすめします。

    特殊詐欺は、近年、厳罰化の傾向にありますので、特殊詐欺の嫌疑がかけられてしまった場合には、初犯であったとしても実刑になる可能性があります。捜査機関がまだ犯罪事実や犯人を認知していない段階であれば、自首をすることによって、逮捕・勾留といった身柄拘束を回避できる可能性もありますし、被害者と早期に示談をまとめることによって、不起訴処分を獲得できる可能性もあります。

    弁護活動が早いほど、より有利な処分を獲得できる可能性が高まりますので、まずはできるだけ早く、刑事事件の実績がある弁護士に相談をするようにしましょう。

  2. (2)勾留時の差し入れ

    逮捕されると、たとえ家族でも、本人と面会できるのは、通常、身柄拘束が逮捕から勾留へと切り替わる4日目以降です(接見禁止で面会できない場合もあります)。逮捕直後から面会できるのは弁護士だけです

    弁護士はただちに面会し、取り調べの対応などについてアドバイスできます。もっとも、本人を精神的に支えるには、ご家族の協力も重要です。家族が面会をすることによって本人も精神的に安定しますし、衣類・洗面用具などの生活必需品や現金を差し入れることによって、身柄拘束中の生活をサポートすることも可能です。

  3. (3)裁判時に更生をサポート

    起訴されて刑事裁判となった場合には、家族が情状証人として証言台に立ち、本人の将来のサポートを誓うことによって、有利な情状として考慮してもらうことができます

    判決を言い渡す裁判官としても、きちんと家族のサポートが見込める被告人であれば、社会内での更生改善が期待できるとして、執行猶予付きの判決を言い渡してくれる可能性も高まります。

5、まとめ

詐欺罪を犯してしまった場合には、自首をすることによってその罪を軽くできる可能性があります。しかし、自首が成立するためには、法律上の要件を満たす必要があり、どのタイミングで自首をするのが最善かについては、慎重に判断しなければなりません。

大切なご家族が犯罪に関与していることがわかった場合、迅速に適切な対応をするためにも、まずはベリーベスト法律事務所 水戸オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています