遺言書は勝手に開封せず検認を! 申し立て手続きや注意点は?
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相続問題のトラブルを回避するためにも、遺言書を残しておこうとする方は多くいらっしゃいます。日本公証人連合会の発表によると、平成29年度に全国で作成された遺言公正証書は11万0191件となっており、過去10年の間に増加していることがわかります。
しかし、ご家族が亡くなった後に遺言書を発見してしまったら、どのように扱えばいいか分からないという方がほとんどではないでしょうか。実は、遺言書のなかには勝手に開封してはならない種類のものが存在します。そうした遺言書は、「検認」という手続きを行わなければいけないのです。
本コラムでは、遺言書の検認について、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士が詳しく解説していきます。
1、遺言書には3つの種類がある
遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言といった種類があります。まずはこの3種類の遺言書について、詳しく解説していきます。
●自筆証書遺言
自筆証書遺言は、被相続人が自分で書いた遺言書のことです。自筆証書遺言は民法にて「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と定められています。自筆証書遺言は、他の遺言書と比べて特別な手続きを必要としないため、もっとも利用されています。しかし、自筆証書遺言は変造や紛失の可能性があるため注意しなければなりません。
●公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人が作成する遺言書です。公正証書遺言の原本は公証役所に、謄本を遺言者の手元で保管します。公正証書遺言の原本を役所で保管するため、自宅に保管されている謄本が盗難や変造の被害にあっても、原本には影響ありません。
公正証書遺言は作成に手間と費用がかかりますが、保管者の負担は少ないでしょう。
●秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、公証人と証人2人以上に遺言書の存在の証明をしてもらう遺言書を指します。証人であっても内容は確認できず、本人以外に内容を知られずに済むことが大きな特徴です。保管も遺言者本人が行います。
ただし、自筆証書遺言や公正証書遺言と比べて手間がかかり、記載に不備があると無効になる可能性もあります。
2、遺言書を見つけたときの対処法
では、実際に遺言書が見つかった場合、どのような手続きを行えばよいのでしょうか。検認を受ける場所や手続きについても詳しく解説していきます。
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(1)自筆証書遺言は検認が必要
自筆証書遺言は検認が必要となるため、発見しても勝手に開封してはいけません。
遺言書を保管している人、または遺言書を発見した人が申立人となり、検認申し立てに必要な書類を家庭裁判所に提出します。遺言書の検認を受ける場所は、遺言者の最後の居住地の家庭裁判所です。
検認の申し立てに必要な書類は下記の通りです。- 家事審判申立書
- 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
家庭裁判所へ検認申し立て後、1週間から1か月以内に検認期日通知書が送付されます。検認手続きが終了すると、検認済み証明書がついた遺言書が返却されます。検認済証明書には「この遺言書は令和○年○月○日に検認されたことを証明する」などの文が記載されています。
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(2)公正証書遺言は検認の必要なし
公正証書遺言の場合は、検認を行う必要がありません。というのも、原本は公証役所に保管されており、自宅などで発見されるのは、その謄本だからです。そのため相続開始とともに、相続税や相続登記の手続きを速やかにすすめることができるというメリットもあります。
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(3)秘密証書遺言は検認が必要
秘密証書遺言書も、検認が必要となります。
自筆証書遺言と同様、検認申し立てに必要な書類を用意し、家庭裁判所に検認申し立てを行いましょう。
3、遺言書を検認せずに開封してしまったら?
被相続人の死後、遺言書を発見してどうすればよいのか分からず、すぐに開封してしまったという方もいるでしょう。もし、検認が必要な遺言書を勝手に開封してしまったら、どうなるのでしょうか。
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(1)法律違反となる可能性と罰則
法定相続人であっても、遺言書を勝手に開封してしまうと法律違反となります。民法では遺言書の検認について「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない」と定められているからです。
さらに「遺言書を発見し、相続が開始する場合は、裁判所に遺言書を提出し検認の請求をしなくてはならない」とも定められており、開封した場合は5万円以下の過料が科されることもあります。
さらに、遺言書を勝手に開封して内容を変えてしまった場合は、相続人の資格をはく奪されてしまう可能性もあるので注意しましょう。 -
(2)開封した遺言書の効力は?
ただし、勝手に開封されてしまったからといって遺言書の効力がなくなるわけではありません。もし知らずに開封してしまったとしても、内容を変えたりせず、速やかに検認を受けましょう。
4、遺言書の扱いに困ったら、弁護士へご相談を
「自筆証書遺言書」や「秘密証書遺言書」は、家庭裁判所での検認を受けなければなりません。検認には約1か月程度かかり、申立人が各種書類の作成や手続きを行うのは手間がかかるでしょう。弁護士に依頼すれば、遺言書の検認手続きまで安心して任せられます。
また、手続きが終わった後、財産の処理や遺言書にまつわる相続トラブルが発生した際に、継続してアドバイスをもらえるので安心です。
その他、前述の通り、「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」は遺言者自身が保管します。他人に盗まれたり、破棄されたりしない所に保管しなければいけません。しかし、分かりにくいところに保管してしまうと、遺言書が発見されない可能性もあります。
遺言書の保管場所に困った場合は、管理を弁護士に依頼することをおすすめします。
5、まとめ
遺言書には、自筆証書遺言書・公正証書遺言書・秘密証書遺言書の3種類があります。自筆証書遺言書と秘密証書遺言書は検認の手続きが必要であるため、相続人は勝手に開封してはいけません。遺言書の検認には、書類の作成や各種手続きを行う必要もあります。保管や検認手続きが不安という方は、弁護士へ依頼することで負担を減らせるでしょう。
遺言書の取り扱いにお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 水戸オフィスの弁護士へお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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